筋層非浸潤性膀胱がん(NMIBC)の病期進展は、再発回数が強く関与していることがわかった。

慶應義塾大学 田中 伸之氏、菊地 栄次氏らは、同大学病院の患者484例の追跡調査を実施し、初めて筋層非浸潤性膀胱がん(NMIBC)と診断されてから2年の間に年間1回以上再発した患者には慎重な経過観察と早期の積極的な膀胱全摘除術が必要であると結論した。2011年2月のJournal of Urology誌185巻450から455ページに論文を発表した。

1985年から2006年、慶應義塾大学病院でNMIBCと初めて診断され、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)を受けた484例(男性396例、女性88例、年齢中央値64.8歳)を対象とし、中央値で7.2年間(2.0年から24.7年)にわたり追跡調査した。

初回に膀胱がんと診断されてから2年の間に再発頻度が年間1回以上の場合、病期進展の可能性は約27%

調査期間中に再発したのは計239例(49.4%)、病期進展をきたしたのは40例(8.3%)であった。327例(67.6%)はBCG膀胱内注入療法を、62例(12.8%)は抗癌剤膀胱内注入療法を受けていた。初回に膀胱がんと診断されてから2年の間に年間1回以上の再発を経験したのは44例、年間1回未満は429例で、それぞれ12例(27.3%)、17例(4.0%)にその後病期進展が認められた。病期進展のカプラン-マイヤー曲線に基づくと、初回に膀胱がんと診断されてから2年の間に年間1回以上の再発を経験することは、後に有意に病期進展を起こす率が高いことが確認された。

初回に膀胱がんと診断されてから2年の間に年間1回以上再発を経験した患者の10年無病期進展率は58.0%

10年無病期進展率は、初回に膀胱がんと診断されてから1年の間に1回以上再発した患者群(84例)で77.9%、1回未満の患者群(396例)で92.3%、初回に膀胱がんと診断されてから2年の間に年間1回以上再発した患者群(44例)では58.0%、年間1回未満の患者群(429例)では93.3%、初回に膀胱がんと診断されてから3年の間に年間1回以上再発した患者群(17例)では64.9%、年間1回未満の患者群(380例)では93.2%であった。

初回に膀胱がんと診断されてから2年以降に12例が死亡した。初回に膀胱がんと診断されてから2年の間に年間1回以上再発した患者群(44例)の15年癌特異的生存率は62.7%と年間1回未満の患者群(429例)の96.7%と比べ有意に低かった。

初回に膀胱がんと診断されてから2年の間に年間1回以上再発を経験することは、以降の病期進展発症を十分に予測しうる重要な条件

コックス比例ハザード解析を用いた多変量分析により、病期進展の有意な独立予測因子とされたのは、初回に膀胱がんと診断されてから2年の間に年間1回以上再発を経験すること(p<0.001、ハザード比(HR)=7.40)のほか、診断時の腫瘍グレードがグレード3(p=0.027、HR=2.36)、および上皮内がんの併発(p=0.045、HR=2.44)であった。

治療介入の組立てに必須の正確な予測因子は?

NMIBCは、すべての膀胱がん患者の約70%から80%を占める。標準的な初期治療はTURBTであるが、TURBT単独治療だけでは術後膀胱内再発の危険率は高い。術後再発予防の目的でBCGの膀胱内注入、または抗癌剤膀胱内注入療法が行われている。治療と経過観察における重要な課題は、TURBT後の膀胱内再発を減らし、再発腫瘍の筋層浸潤性膀胱がんへの病期進展の発症を如何に食い止めるか、ということになる。その上で、臨床的因子や病理学的因子に基づく膀胱内再発と病期進展の危険率から治療戦略を組み立てる必要があり、予測に寄与するリスク因子を明確にすることが極めて重要である。

例えば、欧州泌尿器科学会(EAU)のガイドラインでは、病理学的な深達度と異型度、上皮内がん併発の有無、再発頻度、腫瘍の数とサイズの因子別に、再発や病期進展発症のスコアが定められ、そのスコアの合計によりリスクを決定している。しかし、EAUのガイドラインでも病期進展リスクが高い患者、低い患者に対する明確なフォローアップのプロトコールを定めていないのが現状である。

Frequency of Tumor Recurrence: A Strong Predictor of Stage Progression in Initially Diagnosed Nonmuscle Invasive Bladder Cancer(J Urol. 2011 Feb;185(2):450-5)

医学監修:菊地 栄次(慶應義塾大学医学部 泌尿器科学教室 専任講師)

記事:可知 健太
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