4月6日、順天堂大学は、同大学院医学研究科・免疫病・がん先端治療学講座の森本幾夫教授らの研究グループによる「ヒト化CD26抗体(YS110)によるフランスでのFirst in Man 第1相臨床試験」の臨床研究の成果が、Lancet誌の腫瘍学専門誌「Lancet Oncology」の2017年3月23日号にてNews Articleとして紹介されたと発表した。

本研究は免疫病・がん先端治療学講座が取り組んできた順天堂主導の臨床研究成果で、オリジナリティが高く、有効な治療法がなく予後が極めて悪い悪性胸膜中皮腫に対して安全で革新的な治療結果を示したものとなる。ヒト化CD26抗体開発は、森本教授が20年以上にわたり研究を続けてきたCD26分子に関する基礎研究の成果を臨床現場に応用したトランスレーショナルリサーチとなる。

「難治性固形腫瘍に対するモノクローナル抗体YS110」と題されたLancet Oncology News Article

CD26タンパクは悪性胸膜中皮腫を含むいくつかの悪性腫瘍においてその発現が注目されているタンパクである。YS110は、CD26を標的とするヒト化抗CD26モノクローナル抗体医薬となり、「CD26発現が認められる固形がん」を対象に本薬剤を使用した時の耐用量と安全性を確認する第1相試験結果がフランスのUniversité Paris-Saclay,VillejuifのEric Angevin氏らを中心としたグループにより発表された。

治験に参加したCD26発現固形がん患者33人(中皮腫患者23名、腎細胞がん腫患者9名および尿路上皮がん1名)であり、YS110の忍容性、抗腫瘍活性、薬物動態および薬力学を評価した。YS110の用法用量は、6用量(0.1-6mg/kg)にて2週間ごとに1回だった。なお、最大耐量は達成されなかった。
認められた有害事象は、グレード3以上の、呼吸困難(21%)、過敏症(15%)、病態の悪化(15%)、一般的な健康状態の悪化(12%)、および高血糖(12%)が多かった。有害事象のためにYS110を中止した患者は8名(24%)であった。用量制限毒性は2件報告され、いずれもインヒュージョンリアクションであった。

評価可能な26名の患者のうち13名(50%)に長期の病病態安定が認められた。がん種ごとでは、中皮腫患者18名のうち10名(56%)、腎細胞がん患者6名のうち3名(50%)であった。全体的に、無増悪生存期間(PFS)の中央値は43日(範囲5-399)であった。

Angevin氏は「この研究により、CD26を過剰発現する様々な他の適応症の組み合わせを用いてさらなる開発への扉が開かれた」と語り、共同研究者の山田 武人氏(埼玉医科大学)は、「CD26抗体YS110が、進行した中皮腫患者の半分以上が病態安定されたことは非常に重要である」と述べた。一方、Michele Carbone氏(HI、USA、Honolulu、Hawaii Cancer Center、University of Hawaii Cancer Center)は、「データについて語るにはあまりにも予備的である。中皮腫の予後と生存率は数十年で変化していない」と述べた。

Monoclonal antibody YS110 for refractory solid tumours (Lancet Oncology News Articles,Published: 23 March 2017)

近々、第1相試験が日本でも開始する予定

順天堂大学によると、本薬剤は、従来の抗体医薬としての作用だけでなく様々な機序を介して抗腫瘍作用を発揮することが期待されており、日本でも近々、治療抵抗性の悪性中皮腫に対する第1相臨床試験が開始される予定であるとのこと。

記事:可知 健太
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