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転移性肛門がん対象 オプジーボの第2相臨床試験 病勢コントロール率70% ASCO2016

[公開日] 2016.07.13[最終更新日] 2016.07.13

目次

ニボルマブ(商品名オプジーボ)は、現在、国内では悪性黒色腫と非小細胞肺がんの適応で承認されている。米国ではこれらに加え腎細胞がんでも承認され、効果・効能の拡大を検討するため様々ながん種を対象とした臨床試験が世界的に進められている。 免疫チェックポイント阻害薬と呼ばれる抗体医薬で、T細胞に発現するPD-1に結合することにより、がん細胞に発現するPD-L1とPD-1の結合によって開始する相互作用を阻害する。その相互作用が免疫チェックポイントの機能を果たす。いわば免疫の検問で、がん細胞を異物として攻撃する免疫システムが働かなくなり、攻撃を免れたがんの生存と増殖を許してしまう。したがって、免疫チェックポイントを阻害する薬物療法はがん種を超えて活用可能性がある。 2016年6月3日から7日までシカゴで開催された第52回米国臨床腫瘍学会(ASCO:アスコ)にて、オプジーボの転移性肛門管扁平上皮がん(SCCA)患者を対象とする前向き第2相臨床試験(NCI9673、NCT02314169)の結果が、米国テキサス州立大学MDアンダーソンがんセンターのVan Karlyle Morris氏により発表された。

標準治療のない希少がん転移性肛門管扁平上皮がん、ヒトパピローマウイルスと関連

肛門管がん(肛門がん)の発生頻度は低く、すべての下部消化管がんのうち4%程度、中でも扁平上皮がん(SCCA)は日本では極めて珍しい。米国では2016年に肛門がんと診断されるのは8000人超、同疾患で死亡するのは1000人超と、米国がん協会が予測している。本試験(NCI9673)の責任医師であるMDアンダーソンがんセンターのCathy Eng氏によると、肛門がんの約20%が扁平上皮がんで、早期と診断された後に転移性肛門がんに進行する患者は新たに20%いるという。欧米では放射線と化学療法を併用する治療が第一選択とされているが、日本では患者数が少ないため実態は明らかではなく、外科的切除の補助療法として放射線照射が行われているようだ。 まれながんではあるものの患者数は増加傾向にあり、肛門管扁平上皮がんはヒトパピローマウイルス(HPV)との関連が深いとされることから楽観視はできない。また、免疫抑制状態は肛門管扁平上皮がんのリスク因子として知られており、感染しやすい状態となっているヒト免疫不全ウイルス(HIV)陽性の人も肛門がんのリスクが高い。

HIV陽性、B型、C型肝炎患者も含む対象で試験完了した初のPD-1阻害薬オプジーボ

転移性SCCA患者を対象とする本試験には、HIV陽性、B型肝炎ウイルス(HBV)、またはC型肝炎ウイルス(HCV)陽性の患者も含めた計39人が登録され、37人にオプジーボ3mg/kgが2週毎に静注された。 その結果、有効性解析対象37人中、完全寛解(CR)2人(5%)、部分寛解(PR)7人(19%)が得られ、病勢安定(SD)は17人(46%)を合わせた病勢コントロール率(DCR)は70%(26/37人)であった。無増悪生存(PFS)期間中央値は3.9カ月で、解析時点でも6人は治療を継続していた。主な有害事象は疲労、貧血、および発疹で、間質性肺炎は1件認められた。本試験は登録が迅速に進み5カ月以内に完了したことから、治療が満たされていない現状を浮き彫りにした。そして、ニボルマブは肛門管扁平上皮がんのリスク因子を有する患者を含めて試験完了した初のPD-1阻害薬となった。 本試験は米国、カナダで2015年5月に開始されたオープンラベル試験で、米国立がん研究所(NCI)の実験治療学臨床試験ネットワークおよびがん治療評価プログラム(Experimental Thrapeutic Clinical Trial Network and Cancer Therapy Evaluation Program)として実施された。 現在、日本において、PD-1抗体ペムブロリズマブ(キイトルーダ)の肛門管がんを含む10種の希少がん対象の第2相試験が実施中である。 NCI9673: A multi-institutional eETCTN phase II study of nivolumab in refractory metastatic squamous cell carcinoma of the anal canal (SCCA).(ASCO2016,Abstract No.3503) 記事:川又 総江
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