オプジーボ使用における保険制度上の課題解決へ 肺癌学会と患者連絡会 要望書提出


  • [公開日]2015.12.14
  • [最終更新日]2017.11.13[タグの追加] 2017/11/13

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■この記事のポイント
・日本肺癌学会と肺がん患者会連絡会がオプジーボに関する声明および厚労省宛ての要望書を提出。
・DPCという医療費算定制度下であると、入院下にてオプジーボが使用されないことが懸念点。
・早期の改善を要望するとともに、全国の医療機関には安全且つ適切に使用することを呼びかけた。
・医療者・患者以外にも、メディアがそういった情報を正しく世に広げることが大切。


12月11日、日本肺癌学会(理事長:光冨 徹哉氏、保険委員会委員長:高橋 和久氏)と肺がん患者会連絡会(代表:長谷川 一男氏)は「抗PD-1抗体ニボルマブ(オプジーボ)の DPC出来高移行への要望書」を提出しました。

患者がより安全に使用できるために

オプジーボの非小細胞肺がんへの適応拡大の厚生労働省の承認が秒読みとなっており、患者の期待も高まっている中、費用の支払いに関する懸念点があがっています。

現在のオプジーボの薬価では、(体重に依存しますが)月間約300万円の費用がかかります。

非常に高額な薬剤治療費となりますが、患者側は高額医療費制度の恩恵があり、月額の負担は10万円程度、適応4か月目以降は約4万5000円となります(年収による)。

その分は税金が補てんしているため問題は残りますが、今回は「医療機関側が負担する費用」と「そういった背景により患者が安全にオプジーボを使用できないのではないか」という懸念点に対して、日本肺癌学会と肺がん患者連絡会の連盟にて、厚生労働省に要望した形となります。

包括支払制度とは

包括支払制度とは、従来の診療行為ごとの点数をもとに計算する「出来高払い方式」とは異なり、入院期間中に治療した病気の中で最も医療資源を投入した一疾患のみに厚生労働省が定めた1日当たりの定額の点数からなる包括評価部分(入院基本料、検査、投薬、注射、画像診断等)と、従来どおりの出来高評価部分(手術、胃カメラ、リハビリ等)を組み合わせて計算する方式です。1日当たりの定額の点数は、「診断群分類」と呼ばれる区分ごとに、入院期間に応じて定められています。
詳細は以下をご参考ください。
図2

上記のように、包括評価部分をどんなに実施しても医療費は一定となり、これにより入院時の過剰診療を防いでいます。

入院時にオプジーボが使われない可能性

オプジーボのように1回で、包括評価部分で想定する費用を超えてしまう場合は、医療機関は赤字となってしまいます。(以下、参考)

図1

こうなると、医療機関は入院にてオプジーボを使用したくなくなる訳です。(実際、オプジーボの費用の半分を医療機関が負担しなければなりません)

高額薬剤は、じきにDPC出来高分に移行しますが、その時期を一日でも早めるための要望書といえます。(メラノーマに対しては既に高額薬剤区分となっている。)

なお、治験ではオプジーボは外来下にて使用できました。しかしながら、肺がんでの安全性は治験という限られた場面でしか確認されておらず、臨床として様々なバックグラウンド(既往歴やがんの状態)を持つ多くの患者さんが使用するため、厳重の注意が必要となります。

肺がん患者会連絡会議(代表 長谷川 一男)連盟による厚生労働大臣への要望 「抗PD-1抗体ニボルマブ(オプジーボ®)のDPC出来高移行への要望」

イレッサと同じ轍を踏まないために

肺がん分野では、かつてゲフィチニブイレッサ)という夢の新薬が登場して、様々なバックグラウンドを持つ肺がん患者が使用しました。

その結果、副作用として間質性肺炎が多発し合計で800名以上もの患者さんが亡くなっています。

そうした過去の教訓として、日本肺癌学会は、要望書と共に「日本肺癌学会会員・肺癌薬物療法に関わる医療者へのお願い」と題して、入院での投与も含めオプジーボの適切且つ慎重な使用および適切なインフォームドコンセントを呼びかけました。

日本肺癌学会会員・肺癌薬物療法に関わる医療者へのお願い「抗PD-1抗体薬ニボルマブ(オプジーボ®)についてのお願い」

今回、肺がん患者会連絡会が共同で要望書を提出にも、患者の異変は患者自身にしかわからないといった背景もあり、肺がん患者会連絡会代表の長谷川氏は自身の所属する患者会ワンステップにて以下のように述べています。

「過去、夢の新薬と言われてでてきた「イレッサ」。登場したばかりの頃、間質性肺炎の危険性がまだわからず、800名以上の方が亡くなりました。今回のニボルマブ承認・使用に当たり、その教訓を忘れてはならないと考えます。これは医療者だけでなく、患者も同じと考えます。」

ニボルマブに関する要望書(肺がん患者会ワンステップ ブログ)

メディアも考えなければならないこと

イレッサが登場したとき、各メディアが夢の新薬と報道したのを覚えていますが、今回もそういった風潮があります。それはオンコロでも気を付けることだと考えています。

オンコロでは、オプジーボの話題をかなり取り上げていますが、副作用に関することも取り上げてきていますので、こういった情報も今後も取り上げていきたいです。

ニボルマブ(オプジーボ) 重大副作用の注意喚起等を追記 厚生労働省が指示(オンコロニュース2015/9/16)

オプジーボ/レンビマ 重大副作用の注意喚起等を追記 厚生労働省が指示(オンコロニュース2015/11/24)

夢の新薬とはいえ、何が起こるかわかっていないということを、我々のような情報発信側のメディアも含め考えていくべきだと考えさせられる出来事だと思いました。

日本肺癌学会ニュースリリース「ニボルマブ(オプジーボ)に関する声明文公開・要望書提出について」

肺がん患者の会ワンステップHP

記事:可知 健太

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