進行トリプルネガティブ乳がんにおいて、エンザルタミドの第2相臨床試験結果が、9月25日から29日までオーストリア・ウイーンで開催されている欧州臨床腫瘍学会(ECC2015)で、スペインVall d’Hebron University HospitalのJavier Cortes氏らが発表されました。

 トリプルネガティブ乳がんは、女性ホルモンであるエストロゲンおよびプロゲステロンのホルモン受容体 (ER・PgR) と上皮細胞成長因子受容体2 (HER2) が検出できない乳がんのタイプで、男性ホルモンであるアンドロゲン受容体からの細胞増殖シグナルに一部依存し、他の複数の発がんに関わるタンパクなどから成っている非常に不均一な疾患です。

 本試験の対象はアンドロゲン受容体陽性(免疫染色でアンドロゲン受容体>0%)の進行トリプルネガティブ乳がんで、未治療もしくは治療歴のある患者です。骨転移のみ転移のある患者も参加可能でしたが、脳転移がある患者は除外されています。

 試験には118人が参加し、エンザルタミドは160mgを1日1回内服しました。

 ポイントは以下の通りです。

【遺伝子レベルでのアンドロゲン受容体の確認】
 アンドロゲン受容体の遺伝子発現プロファイリングを行い、遺伝子レベルでもアンドロゲン受容体の発現の有無を確認。
(遺伝子はタンパク質の設計図であり、その設計図が多いとアンドロゲン受容体が多く合成される可能性がある)
結果、118人中56人(47%)が遺伝子レベルでのアンドロゲン受容体陽性であった。

【参加した患者さんの前治療】
 臨床試験の前に治療を受けた数の中央値は1レジメンで、タキサン系抗がん剤(タキソールやタキソテール)、カペシタビン(ゼローダ)、プラチナ系抗がん剤(パラプラチン注射など)や、エリブリン(ハラヴェン)が使用されていた。

【がんの進行を抑えた期間】
・全体
 遺伝子レベルでのアンドロゲン受容体陰性群(以下、陰性群):8週
 遺伝子レベルでのアンドロゲン受容体陽性群(以下、陽性群):16週
・治療数が0-1レジメンの患者
 陰性群:8.3週
 陽性群:32.3週

【臨床的有効性割合(クリニカルベネフィットレート);総合的判断での治療意義】
・16週時点におけるクリニカルベネフィットレート
 陰性群:11%
 陽性群:39%
・16週時点におけるクリニカルベネフィットレート
 陰性群:6%
 陽性群:9%

【奏効率(一定以上腫瘍が縮小した方の割合)】
 陰性群:3%
 陽性群:9%

【生存期間の中央値】
 陰性群:32.9週
 陽性群:75.6週

 上述より、遺伝子レベルでのアンドロゲン受容体の状態が陽性か陰性か、臨床試験を受けるまでの治療数が1以下か2以上かが治療に関係がある因子であると判明たとのことです。なお、安全性はエンザルタミドの前立腺がん患者における既報告の内容と一致しているとのことです。

 以上のことから、Javier Cortes氏は、「進行トリプルネガティブ乳癌患者において、エンザルタミドの臨床的効果が確認されたとし、また新規の遺伝子発現プロファイリング検査によって、エンザルタミドでより効果が得られる患者を同定できる可能性がある」と締めくくりました。

 なお、本試験は日本では未実施です。

参考:ECC2015 Abstract No.1802

【この試験の詳細(clinical traials.gov)】
Safety and Efficacy Study of Enzalutamide in Patients With Advanced, Androgen Receptor-Positive, Triple Negative Breast Cancer

記事:前原 克章(加筆修正 可知 健太)


この記事に利益相反はありません。

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