5月29日~6月2日にシカゴで開催された米国臨床腫瘍学会ASCOの年次総会にて、「再発多発性骨髄腫に対して、標準治療であるレナリドミド(商品名レブラミド)とデキサメタゾン(商品名レナデックス)に分子標的薬エロツズマブを追加時の効果を比較する第3相臨床試験」の中間結果が米エモリー大学がん研究センターのSagar Lonial氏によって発表されました。
なお、本研究は2015年ASCO年次総会で発表される研究を代表する4つの試験結果のうちの1つとなり、年次総会に先立ち5月13日にASCOが公表禁止制限付き報道会見されています。

本試験は、治療寛解後に再発された多発性骨髄腫の患者646人が、「標準治療(レナリドミド+デキサメタゾン)の2剤併用群(標準治療群)」と「標準治療に抗SLAMF7抗体エロツズマブを加えた3剤併用群(エロツズマブ群)」に登録・使用した場合の効果を確認しました。

ポイントは以下の通りです。
1.再びがんが悪化するまでの期間はエロツズマブ群19.4か月、標準治療群14.9か月となり、死亡リスクを30%低下させた。
2.ある染色体異常が存在する多発性骨髄腫患者は従来の治療法では効果が低かったが、エロツズマブ群はほぼ同じ効果が得られた。
3.エロツズマブ群は副作用が発現しても軽微なものが多く、使用しても患者の生活の質(QOL)の低下や症状の悪化は認められなかった。

「現在、多発性骨髄腫の治療において承認されている抗体医薬ははなく、今回の結果は多発性骨髄腫における抗体医薬の最大規模の研究であるとともに、標的免疫療法を用いることによる有益性が示された最初の第3相臨床試験といえる」とのことです。

【抗SLAMF7抗体エロツズマブについて】
エロツズマブは抗SLAMF7抗体となります。95%以上の多発骨髄腫細胞上にSLAMF7というタンパク質が存在し、エロツズマブはそれと結合することにより抗腫瘍効果を発揮します。また、免疫細胞の1種のナチュラルキラー細胞表面にもSLMAF7が存在しており、エロツズマブが結合するとナチュナルキラー細胞が活性化し、がんを攻撃するようになります。この2つのメカニズムにより多発性骨髄腫細胞に抗腫瘍効果を示します。
2014年に米食品医薬品局(FDA)は、再発多発性骨髄腫治療のためエロツズマブ+レナリドミド+デキサメタゾンの併用療法を画期的治療薬に指定しています。*SLAMF7:シグナル伝達リンパ活性化分子ファミリー7の略。

日本では、今回の試験のほか以下の臨床試験が進行しています。
新しく診断された多発性骨髄腫患者を対象としたエロツズマブの臨床試験(JAPICにとびます)

antiSLAMF7Ab

The ASCO PSOT(英語)
ASCO2015 Abstract(英語)
この試験の情報Clinical trials.gov(英語)


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