脳転移を有する未治療のPD-L1陽性非小細胞肺がん患者に対する抗PD-1抗体薬キイトルーダ単剤療法、脳転移巣における奏効率(BrM RR)29.4%を示す米国臨床腫瘍学会(ASCO 2018)より


  • [公開日]2018.07.02
  • [最終更新日]2019.02.15
この記事の3つのポイント
・本試験は、1個以上の増悪脳転移を有する未治療非小細胞肺がん患者に対して抗PD-1抗体薬キイトルーダ単剤療法の有用性を検証した第II相試験である
・本試験の主要評価項目である脳転移巣における奏効率(BrM RR)はPD-L1陽性患者で29.4%、PD-L1陰性患者で0%であった
・本試験の副次評価項目である全生存期間OS中央値はPD-L1陽性患者で9.4ヶ月、全患者群で8.9ヶ月であった。また、治療開始後の2年全生存率(OS)は31%であった

2018年6月1日より5日までアメリカ合衆国・イリノイ州・シカゴで開催された米国臨床腫瘍学会(ASCO 2018)にて、1個以上の増悪脳転移を有する未治療非小細胞肺がん患者に対する抗PD-1抗体薬であるペムブロリズマブ(商品名キイトルーダ;以下キイトルーダ)単剤療法の有効性を検証した第II相試験(NCT02085070)の結果がYale School of Medicine・Sarah B. Goldberg氏らにより公表された。

本試験は、1個以上の増悪脳転移を有する未治療非小細胞肺がん患者(N=39人)に2週間に1回キイトルーダ単剤療法を投与し、主要評価項目として脳転移巣における奏効率(BrM RR)、副次評価項目として脳外病巣の奏効率、全生存期間(OS)などを検証した単アームの第II相試験である。

本試験に登録された患者背景は下記の通りである。年齢中央値60歳(33-91歳)。性別は女性67%(N=26人)。前治療歴は0レジメン31%(N=12人)、1レジメン36%(N=14人)、2レジメン33%(N=13人)。放射線治療歴はなし49%(N=19人)、定位手術的照射単独療法(SRS)歴36%(N=14人)、全脳照射(WBRT)歴21%(N=8人)。

肺がんの種類は腺がん87%(N=34人)、扁平上皮がん10%(N=4人)。遺伝子変異の種類はKRAS遺伝子変異33%(N=13人)、EGFR遺伝子変異15%(N=6人)、ALK遺伝子変異3%(N=1人)。PD-L1発現率は陽性87%(N=34人)、陰性または不明13%(N=5人)。以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。

主要評価項目である脳転移巣における奏効率(BrM RR)はPD-L1陽性患者で29.4%(95%信頼区間:15.1%~47.5%)、PD-L1陰性患者で0%であった。なお、PD-L1陽性患者の7人で中枢神経系CNS)と全身病巣の奏効に乖離があり、4人が脳転移巣病勢進行(PD)全身病巣部分奏効(PR)、3人が脳転移巣部分奏効(PR)全身病巣病勢進行(PD)であった。また、脳転移の奏効持続期間(DOR)中央値は7.5ヶ月(1.3~23.3カ月)であった。

副次評価項目である全生存期間(OS)中央値はPD-L1陽性患者で9.4ヶ月(95%信頼区間:6.6ヶ月~29.7ヶ月)、全患者群で8.9ヶ月(95%信頼区間:6.6ヶ月~29.7ヶ月)であった。また、治療開始後の2年全生存率(OS)は31%(95%信頼区間:19%-51%)であった。

一方の安全性としては、キイトルーダにより5%以上の患者で確認されたグレード3以上の治療関連有害事象(TRAE)は肺臓炎(N=2人)のみであった。また、神経症状に関してはグレード1~2程度の発症であり、キイトルーダ関連によるグレード2以上の神経症状は確認されなかった。

以上の第II相試験の結果よりSarah B. Goldberg氏らは以下のように結論を述べている。”増悪脳転移を有する未治療非小細胞肺がん患者に対するキイトルーダ単剤療法は持続的な抗腫瘍効果を示し、忍容性も問題ありませんでした。”

Durability of brain metastasis response and overall survival in patients with non-small cell lung cancer (NSCLC) treated with pembrolizumab.(ASCO 2018, Abstract No.2009)

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