国立がん研究センターは3月13日、再発・難治性多発性骨髄腫(relapsed/refractory multiple myeloma:RRMM)における骨髄の形質細胞DNAと循環腫瘍DNA(ctDNA)の変異を解析し、循環腫瘍DNA変異の高い予後予測能力を見出したことを発表した。
同センターは、国内前向き観察研究「再発又は難治性の多発性骨髄腫患者を対象としたイキサゾミブとレナリドミド及びデキサメタゾン併用療法(IRd療法)の多施設共同前向き観察研究」において、81施設から参加した295名のRRMM患者のうち同意が得られた261名の骨髄液およびctDNAを解析。その結果、TP53変異の59.2%はctDNA解析のみで変異が認められ、またctDNA解析ではTP53やDNMT3Aに複数の変異が認められるなど、骨髄の形質細胞とctDNAにおける変異パターンが異なることが示された。
更に予後との関連を調べた結果、TP53変異やKRAS変異などのctDNA変異は、骨髄の形質細胞DNAよりも無増悪生存率の予測能が優れていることを示した。
以上の結果に基づき、ctDNAにおける予後に関連した6遺伝子の変異総数、血漿DNA濃度、前治療レジメン数を組み入れた新しい予後予測モデル「ctRRMM-PI」を開発。RRMMの予後予測において、ctDNA変異が非常に重要な役割を果たすことを見出した。
同研究はIRd療法を受けた再発・難治症例を対象としていたため、今回発見されたctDNA変異と予後との関連が他の治療を受ける症例や未治療症例にも適用可能か、今後の検討が必要だ。また、予後予測モデルctRRMM-PIを臨床で実施するには、血漿DNAの定量方法や、ctDNA変異解析方法などの分析手法の最適化も必要になってくる。
今後ctDNAに基づく分子プロファイリングを利用することで、低リスクの患者と高リスクの患者をより正確に特定できるようになり、RRMM患者の治療戦略を大きく改善することが期待される。
なお同研究結果は、2024年3月1日に米科学誌「Blood」に掲載されている。
参照元:
国立がん研究センター プレスリリース
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