適応外・未承認薬を対象とする医師主導臨床研究開始:小児・AYA世代のがん患者さんのドラッグアクセス改善を目指す-国立がん研究センター-


  • [公開日]2024.01.25
  • [最終更新日]2024.01.26

1月19日、国立がん研究センターは「小児・AYA世代がん患者のドラッグアクセスの改善を目指す」と題した記者会見を開催。療薬を患者申出療養制度のもとで使いたいと希望する方を対象に、安全性と治療効果を評価する医師主導臨床研究を2024年1月から開始したと発表した。

同研究内容の詳細に関しては、小川千登世先生(国立がん研究センター中央病院 小児腫瘍科長)から説明があった。

日本には適応外薬または未承認薬を使用するための制度として、患者申出療養制度がある。患者さんの希望に基づいて国へ申請し、承認を受けた上で、安全性や有効性を確認する臨床試験として治療を実施できる。現在実施中の臨床研究としては、がん遺伝子パネル検査により判明した遺伝子異常に対し、患者申出療養制度を利用して適応外薬を投与するNCCH1901試験があるが、小児を対象とする医薬品は限られているという問題点がある。

そこで今回、難治性小児・AYAがん患者さんを対象に、患者申出療養制度を利用して適応外薬あるいは未承認薬を投与する臨床研究(PARTNER試験)が計画された。同試験内の治療においては、患者さんは入院費や検査料などの保険内費用のみを負担することになる。

対象となる薬剤は、試験開始時点ではノバルティス ファーマ株式会社、中外製薬株式会社から無償提供される6つの医薬品が対象であるが、今後更に多くの企業からの協力を目指していくと言う。また、実施施設に関しても、国立がん研究センター中央病院からスタートし、今後はがんゲノム医療中核拠点病院、および小児がん中央機関もしくは小児がん拠点病院なども追加予定だ、と小川氏は説明した。

小児がんの患者さんから使用したいという申し出があると想定される適応外薬、あるいは未承認薬などの医薬品の使用体制を整えることで、必要とする医薬品を迅速に患者さんに届け、医師の適切な管理下で使用できることを目指している、と小川先生。研究の中で収集する各医薬品の小児における治療効果や副作用のデータが今後の患者さんのために役立ち、さらには将来的に保険適用を検討する際の参考となることが期待される、と今後の展望を語った。

最後に、今回の取り組みはあくまで小児・AYA世代がん患者さんのドラッグアクセス改善の第一歩、と小川先生。最終的なゴールは、どんな薬剤も研究ではなく日常診療として保険適用内で使えるようになることだ、と強調した。

参照元:
国立がん研究センター プレスリリース 『小児・AYA世代がん患者のドラッグアクセスの改善を目指す』

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