HER2陽性切除可能食道腺がんに対する化学放射線療法へのトラスツズマブ追加投与、無病生存期間を改善せずThe Lancet Oncologyより


  • [公開日]2022.01.27
  • [最終更新日]2022.01.26
この記事の3つのポイント
HER2陽性切除可能食道腺がん患者が対象の第3相試験
・化学放射線療法にトラスツズマブ追加投与の有効性安全性を比較検証
無病生存期間中央値は化学放射線療法+トラスツズマブ群19.6ヶ月、化学放射線療法群14.2ヶ月であり統計学的有意な延長は認めず

2022年1月14日、医学誌『The Lancet Oncology』にて未治療のHER2陽性切除可能食道腺がん患者を対象に抗HER2モノクローナル抗体薬であるトラスツズマブを用いた集学的治療の有効性、安全性を比較検証した第3相のNRG Oncology/RTOG-1010試験(NCT01196390)の結果がRhode Island HospitalのHoward P Safran氏らにより公表された。

NRG Oncology/RTOG-1010試験が開始された背景として、トラスツズマブはHER2を標的と下したモノクローナル抗体である。無作為化オープンラベルの第3相試験である本試験では、未治療のHER2陽性切除可能食道腺がん患者(N=203人)に対する術前化学放射線療法として、1週を1サイクルとしてパクリタキセル50mg/m2+カルボプラチン AUC2化学療法を6週間実施し、あわせて放射線療法50.4Gy/28fractionsを実施後、切除手術を実施し、本集学的治療に加え、化学放射線療法中に1週を1サイクルとしてトラスツズマブ2~4mg/kgを5週間投与し、術前にトラスツズマブ6mg/kgを1回投与し、術後より21~56日後、3週を1サイクルとしてトラスツズマブ6mg/kgを13回投与する群(N=102人)とトラスツズマブの投与をしない群(N=101人)に1対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目として無無病生存期間(DFS;死亡、病勢進行、再発遠隔転移二次がんをイベントとして定義)を比較検証した。

フォローアップ期間中央値2.8年時点における結果は下記の通りである。主要評価項目である無病生存期間(DFS)中央値は、化学放射線療法+トラスツズマブ群の19.6ヶ月(95%信頼区間:13.5-26.2ヶ月)に対して化学放射線療法群で14.2ヶ月(95%信頼区間:10.5-23.0ヶ月)と、化学放射線療法+トラスツズマブ群で病勢進行または死亡のリスク(DFS)が1%減少(HR:0.99、95%信頼区間:0.71-1.39、P=0.97)した。

一方の安全性として、最も多くの患者で確認されたグレード3以上の治療関連有害事象(TRAE)は、血液関連有害事象と胃腸関連有害事象であった。血液関連有害事象の発症率は、化学放射線療法+トラスツズマブ群の56%(N=53/95人)に対して化学放射線療法群で57%(N=55/96人)、胃腸関連有害事象の発症率は29%(N=28人)に対して21%(N=20人)であった。

また、重篤な治療関連有害事象(SAE)発症率は、化学放射線療法+トラスツズマブ群の36%に対して化学放射線療法群で28%を示した。治療関連有害事象(TRAE)による死亡は、化学放射線療法+トラスツズマブ群で5人(気管支胸膜瘻、食道吻合部漏出、肺感染症、突然死、原因不明)、化学放射線療法群で3人(多臓器不全が2人と敗血症が1人)であった。

以上のNRG Oncology/RTOG-1010試験の結果よりHoward P Safran氏らは「HER2陽性切除可能食道腺がん患者に対する化学放射線療法+抗HER2モノクローナル抗体薬トラスツズマブは、無病生存期間(DFS)を改善する効果がありませんでした。一方、トラスツズマブ追加投与により有害事象(AE)発症率の増加にはなりませんでした」と結論を述べている。

Trastuzumab with trimodality treatment for oesophageal adenocarcinoma with HER2 overexpression (NRG Oncology/RTOG 1010): a multicentre, randomised, phase 3 trial(Lancet Oncol. 2022 Jan 14;S1470-2045(21)00718-X. doi: 10.1016/S1470-2045(21)00718-X.)

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