公益社団法人日本臨床腫瘍学会は、全世界で猛威を振るう新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関連し、がん治療中の患者から寄せられるであろう質問を想定した「新型コロナウイルス感染におけるがん患者への対応 Q&A」を公開した。
全文は以下の通り。
新型コロナウイルス感染におけるがん患者への対応 Q&A
Q1. 現在抗がん剤治療を受けています。新型コロナウイルスに関して注意することはありますか。
A1. 新型コロナウイルスで重症化する患者さんの特徴は十分解明されていませんが、がんを患っていることや抗がん剤の治療を受けていることは、肺炎など重症化のリスクである可能性があります。抗がん剤治療を受けていると、感染に対する抵抗力が低下している可能性があります。感染を防ぐことが極めて重要ですので、人混みを避け、手洗いなど一般的な衛生管理をお願いします。
Q2. 以前抗がん剤の治療を受けていましたが、新型コロナウイルスに関して注意することはありますか。
A2. 比較的近い過去(1~2年以内)がん治療経験された方は、免疫力が若干弱くなっている場合があり、新型コロナウイルスに感染や重症化のリスクがあることは否定できません。感染を防ぐことが極めて重要ですので、人混みを避け、手洗いやマスク着用など一般的な衛生管理をお願いします。
Q3. がん患者で新型コロナウイルス罹患が疑われる場合、診療で留意する点はありますか。
A3. 明らかなエビデンスはないものの、CDCのガイダンス(2020年1月30日付)では、がんの罹患は重症化リスクの一つであるとされています。免疫抑制状態もリスク因子とされているため、抗がん剤治療を受けている患者はさらに厳重な注意が必要です。新型コロナウイルス感染が確認された場合は、速やかな感染対策の上、丁寧なモニタリングを行い、必要に応じて治療の一時中止や延期を考慮する必要があります。
公益社団法人日本臨床腫瘍学会「新型コロナウイルス感染におけるがん患者への対応 Q&A」より
また、世界各国の政府組織や医療関連団体からも同様の通知が発表されている。アメリカ・国立がん研究所(NCI)は「Coronavirus: What People with Cancer Should Know」と題した6問のQ&Aを公開。新型コロナウイルスの基本的な疫学情報から治験参加中の患者が取るべき行動まで、より踏み込んだ内容を記載している。
米国臨床腫瘍学会(ASCO)が公表した「ASCO Coronavirus Resources」は、全5章で構成され、NCIと同様に新型コロナウイルスの基礎知識から「特定のがん種(例、乳房、肺)と治療(免疫療法、チロシンキナーゼ阻害薬)、または小児がん患者や高齢者がん患者等に対するケアに関するエビデンスは確立されていない」など、現時点で判明している情報をまとめている。
オンコロでは、各団体が公開した情報の中から日本国内のがん患者にも有用なものを抜粋し、随時翻訳・公開していく。
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