・未治療ALK陽性肺がん患者に対するブリガチニブ有効性を確認
・ザーコリと比較した第2相試験結果
・ブリガチニブ病態進行リスクを51%低下させた
2018年11月22日、医学誌『The New England Journal of Medicine』にてALK阻害薬治療歴のないALK陽性進行性非小細胞肺がん患者に対する次世代ALK阻害薬であるブリガチニブ単剤療法、第1世代ALK阻害薬であるクリゾチニブ(商品名ザーコリ;以下ザーコリ)単剤療法の有効性を比較検証した第III相のALTA-1L試験(NCT02737501)の結果がMRC Laboratory of Molecular Biology ・D. Ross Camidge氏らにより公表された。
ALTA-1L試験とは、ALK阻害薬治療歴のないALK陽性進行性非小細胞肺がん患者(N=275人)に対して1日1回ブリガチニブ180mg単剤療法を投与する群(N=137人)、または1日2回ザーコリ250mg単剤療法を投与する群(N=135人)に1対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目として独立評価委員会の評価による無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目として独立評価委員会の評価による客観的奏効率(ORR)、脳転移を有する患者群における頭蓋内奏効率、全生存期間(OS)などを比較検証した国際多施設共同非盲検下の第III相試験である。
本試験が実施された背景としては、次世代ALK阻害薬であるブリガチニブと第1世代ALK阻害薬であるザーコリの有効性を比較検証するためである。本試験以前、ザーコリ治療歴のあるALK陽性進行性非小細胞肺がん患者に対するブリガチニブの有効性は確認されていたが、ALK阻害薬治療歴のないALK陽性進行性非小細胞肺がん患者に対するブリガチニブの有効性はザーコリに比べて優越性があるかどうか示されていなかった。以上の背景より、本試験が実施された。
本試験に登録された患者背景は下記の通りである。年齢中央値はブリガチニブ群58歳(27-86歳)に対してザーコリ群60歳(29-89歳)。性別はブリガチニブ群で女性50%(N=69人)に対してザーコリ群で59%(N=81人)。人種はブリガチニブ群で非アジア人57%(N=78人)、アジア人43%(N=59人)に対してザーコリ群で非アジア人64%(N=89人)、アジア人36%(N=49人)。
ECOG Performance Statusはブリガチニブ群でスコア0または1が96%(N=131人)、スコア2が4%(N=6人)に対してザーコリ群でスコア0または1が96%(N=132人)、スコア2が4%(N=6人)。進行病期はブリガチニブ群でステージIIIBが6%(N=8人)、ステージIVが94%(N=129人)に対してザーコリ群でステージIIIBが9%(N=12人)、ステージIVが91%(N=126人)。
肺がんの種類はブリガチニブ群で腺がん92%(N=126人)、腺扁平上皮がん2%(N=3人)、扁平上皮がん3%(N=4人)、大細胞がん1%(N=2人)、その他1%(N=2人)に対してザーコリ群で腺がん99%(N=137人)、腺扁平上皮がん1%(N=1人)、扁平上皮がん0%、大細胞がん0%、その他0%。
脳転移の有無はブリガチニブ群で脳転移あり29%(N=43人)に対してザーコリ群で脳転移あり30%(N=41人)。放射線治療歴はブリガチニブ群であり13%(N=18人)に対してザーコリ群で14%(N=19人)。化学療法治療歴はブリガチニブ群であり26%(N=36人)に対してザーコリ群で27%(N=37人)。なお、両群間で患者背景に大きな偏りはなかった。
以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。主要評価項目である独立評価委員会の評価による無増悪生存期間(PFS)中央値はブリガチニブ群未到達に対してザーコリ群9.8ヶ月(95%信頼区間:9.0-12.9ヶ月)、1年無増悪生存率(PFS)はブリガチニブ群67%(95%信頼区間:56%-75%)に対してザーコリ群43%(95%信頼区間:32%-53%)、病勢進行または死亡(PFS)のリスクを51%統計学有意に減少し(HR:0.49,95%信頼区間:0.33-0.74,P<0.001)、主要評価項目を達成した。
また、副次評価項目である独立評価委員会の評価による客観的奏効率(ORR)はブリガチニブ群71%(95%信頼区間:62%-78%)に対してザーコリ群60%(95%信頼区間:51%-68%)を示し、1年奏効持続率(DCR)はブリガチニブ群75%(95%信頼区間:63%-83%)に対してザーコリ群41%(95%信頼区間:26%-54%)を示し、脳転移を有する患者群における頭蓋内奏効率はブリガチニブ群78%(95%信頼区間:52%-94%)に対してザーコリ群29%(95%信頼区間:11%-52%)を示した。なお、全生存期間(OS)中央値は両群ともに未到達であり、1年全生存率(OS)はブリガチニブ群85%(95%信頼区間:76%-91%)に対してザーコリ群86%(95%信頼区間:77%-91%)を示した。
一方の安全性として、ザーコリ群に比べてブリガチニブ群で5%以上多く確認された全グレードの治療関連有害事象(TRAE)はクレアチンキナーゼ上昇でブリガチニブ群39%に対してザーコリ群15%、咳で25%に対して16%、高血圧で23%に対して7%、リパーゼ上昇で19%に対して12%であった。
反対に、ブリガチニブ群に比べてザーコリ群で5%以上多く確認された全グレードの治療関連有害事象(TRAE)は、吐き気でブリガチニブ群26%に対してザーコリ群56%、下痢で49%に対して55%、便秘で15%に対して42%、末梢浮腫で4%に対して39%、嘔吐で18%に対して39%、ALT上昇で19%に対して32%、食欲減退で7%に対して20%、光視症で1%に対して20%、味覚異常で4%に対して19%、視覚障害で0%に対して16%を示した。
以上のALTA-1L試験の結果よりD. Ross Camidge氏らは以下のように結論を述べている。”ALK阻害薬治療歴のないALK陽性進行性非小細胞肺がん患者に対するブリガチニブ単剤療法は、ザーコリ単剤療法に比べて無増悪生存期間(PFS)を統計学有意に改善しました。”
Brigatinib versus Crizotinib in ALK-Positive Non–Small-Cell Lung Cancer(N Engl J Med; November 22, 2018; 379:2027-2039)
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