抗VEGF抗体薬アバスチン投与後に増悪した進行性非小細胞非扁平上皮肺がん患者に対するアバスチン継続投与、全生存期間(OS)を統計学有意に改善しない医学誌『JAMA Oncology』より


  • [公開日]2018.09.04
  • [最終更新日]2019.02.15
この記事の3つのポイント
維持療法としてのアバスチン投与後に増悪した非小細胞肺がん患者が対象の第Ⅲ試験
二次治療としてアバスチン+標準化学療法有効性を標準化学療法と比較検証した
全生存期間統計学的有意差はなかったが病勢進行までの期間は改善した

2018年8月30日、医学誌『JAMA Oncology』にて抗VEGF抗体薬であるベバシズマブ(商品名アバスチン;以下アバスチン)投与後に増悪した進行性非小細胞非扁平上皮肺がん患者に対するアバスチン+標準化学療法(SOC)の有効性を比較検証した第III相のAvaALL試験(NCT01351415)の結果がS.G. Moscati Hospital・Cesare Gridelli氏らにより公表された。

AvaALL試験とは、一次治療としてアバスチン+プラチナ系抗がん剤併用療法の治療歴、メンテナンス療法として少なくとも2サイクルのアバスチン単剤療法の治療歴のある進行性非小細胞非扁平上皮肺がん患者(N=485人)に対して21日を1サイクルとして1日目にアバスチン7.5/15.0mg/kg+主治医判断の標準化学療法(SOC)を投与する群、または主治医判断の標準化学療法(SOC)を投与する群に1対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目として全生存期間(OS)、副次評価項目として初回病勢進行より2回目の病勢進行までの期間(PFS2)、初回病勢進行より3回目の病勢進行までの期間(PFS3)などを比較検証した国際多施設共同の第III相試験である。

なお、本試験が実施された背景として大腸がん、乳がん患者に対するアバスチン投与後の増悪例に対するアバスチン継続投与の有効性(Bevacizumab Beyond Progression;BBP)が確認されており、肺がんにおいても同様の有効性が確認されるかどうかをAvaALL試験で初めて検証している。

本試験は2011年1月より2015年2月に実施され、登録された患者背景は下記の通りである。年齢中央値は63.0歳(26-84歳)。性別は男性60.4%(N=293人)。以上のような背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。

主要評価項目である全生存期間(OS)中央値はアバスチン+標準化学療法(SOC)群11.9ヶ月(90%信頼区間:10.2-13.7ヶ月)に対して標準化学療法(SOC)群10.2ヶ月 (90%信頼区間:8.6-11.9ヶ月)、アバスチン+標準化学療法(SOC)群で死亡のリスクを16%減少(HR:0.84,90%信頼区間:0.71-1.00,P=0.104)するも統計学有意な差は確認されなかった。

副次評価項目である初回病勢進行より2回目の病勢進行までの期間(PFS2)中央値はアバスチン+標準化学療法(SOC)群5.5ヶ月(90%信頼区間:4.2-5.7ヶ月)に対して標準化学療法(SOC)群4.0ヶ月(90%信頼区間:3.4-4.3ヶ月)、アバスチン+標準化学療法(SOC)群で初回病勢進行より2回目の病勢進行のリスクを17%減少(HR:0.83,90%信頼区間:0.70-0.98,P=0.06)するも統計学有意な差は確認されなかった。

また、初回病勢進行より3回目の病勢進行までの期間(PFS3)中央値はアバスチン+標準化学療法(SOC)群4.0ヶ月(90%信頼区間:2.9-4.5ヶ月)に対して標準化学療法(SOC)群2.6ヶ月(90%信頼区間:2.3-2.9ヶ月)、アバスチン+標準化学療法(SOC)群で初回病勢進行より3回目の病勢進行のリスクを37%減少(HR:0.63,90%信頼区間:0.49-0.83)した。

一方の安全性として、グレード3または4の治療関連有害事象(TRAE)発症率はアバスチン+標準化学療法(SOC)群76.5%(N=186人)に対して標準化学療法(SOC)群60.3%(N=140人)であった。なお、本試験で新たに確認された治療関連有害事象(TRAE)はなく、既存のアバスチンの安全性プロファイルと一致していた。

以上のAvaALL試験の結果よりCesare Gridelli氏らは以下のように結論を述べている。”アバスチン治療後に病勢進行した非小細胞肺がん患者に対するアバスチンの継続投与(BBP)は全生存期間(OS)を統計学有意に延長しませんでした。しかし、アバスチン+標準化学療法(SOC)群は初回病勢進行より3回目の病勢進行までの期間(PFS3)を標準化学療法(SOC)群よりも改善しておりました。”

Safety and Efficacy of Bevacizumab Plus Standard-of-Care Treatment Beyond Disease Progression in Patients With Advanced Non–Small Cell Lung Cancer The AvaALL Randomized Clinical Trial(JAMA Oncol. Published online August 30, 2018. doi:10.1001/jamaoncol.2018.3486)

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