ホルモン受容体陽性閉経後早期乳がんに対する術後化学療法としてのアロマターゼ阻害薬5年間投与、5年無病生存率(DFS)はタモキシフェン2年投与後のアロマターゼ阻害薬3年投与と差がない医学誌『The Lancet Oncology』より


  • [公開日]2018.04.18
  • [最終更新日]2018.04.18

2018年2月23日、医学誌『The Lancet Oncology』にてホルモン受容体陽性閉経後早期乳がん患者に対する術後化学療法としてのアロマターゼ阻害薬であるアナストロゾールエキセメスタン、レトロゾール単剤療法をそれぞれ5年間投与する群、またはタモキシフェン単剤療法を2年間投与後にアナストロゾール、エキセメスタン、レトロゾール単剤療法をそれぞれ3年間投与する群に分けてその有効性を比較検証した第III相のFATA-GIM3試験(NCT00541086)の結果がUniversità Federico II・Sabino De Placido氏らにより公表された。

FATA-GIM3試験では、完全切除後のホルモン受容体陽性閉経後早期乳がん患者(N=3697人)に対して術後化学療法として以下の6つの治療を投与している。Upfront治療としては1日1回アナストロゾール6mgを5年間投与する群、1日1回エキセメスタン25mgを5年間投与する群、レトロゾール2.5mgを5年間投与する群の3つ。Switch治療としては1日1回タモキシフェン20mgを2年間投与後に1日1回アナストロゾール6mgを3年間投与する群、1日1回タモキシフェン20mgを2年間投与後に1日1回エキセメスタン25mgを3年間投与する群、1日1回タモキシフェン20mgを2年間投与後に1日1回レトロゾール2.5mgを3年間投与する群の3つ。以上の6つの治療群に1:1:1:1:1:1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目である5年無病生存率(DFS)、副次評価項目として5年全生存率(OS)を比較検証した多施設共同オープンラベルの第III相試験である。

本試験に登録された患者背景は下記の通りである。年齢中央値は64.0歳(58-71歳)、 原発腫瘍の大きさと広がり(T因子)はpT1が70%(N=2586/3697人)、腋窩リンパ節転移N因子)pN0が64%(N=2378/3697人)、乳がんのサブタイプ分類としてHER2陽性9%(N=330/3697人)。前治療歴として術前化学療法、または術後化学療法を受けていた患者38%(N=1415人)である。

なお、Upfront治療群(N=1847人)、Switch治療群(N=1850人)、アナストロゾール治療群(N=1226人)、エキセメスタン治療群(N=1238人)、レトロゾール治療群(N=1233人)別の患者背景はそれぞれ下記の通りである。年齢中央値は64歳(57-70歳)、64歳(58-70歳)、64歳(58-70歳)、64歳(58-70歳)、63歳(58-70歳)。 原発腫瘍の大きさと広がり(T因子)はpT1が70%(N=1287人)、70%(N=1299人)、70%(N=863人)、69%(N=856人)、70%(N=867人)、腋窩リンパ節転移(N因子)pN0が64%(N=1187人)、64%(N=1191人)、64%(N=788人)、65%(N=799人)、64%(N=791人)、乳がんのサブタイプ分類としてHER2陽性9%(N=162人)、HER2陽性9%(N=168人)、HER2陽性9%(N=107人)、HER2陽性9%(N=114人)、HER2陽性9%(N=109人)。

上記背景を有する患者に対して6つの治療を投与したフォローアップ期間中央値60.0ヶ月(46–72)時点の結果、主要評価項目である5年無病生存率(DFS)はそれぞれ下記の通りである。Upfront治療を実施した3群の5年無病生存率(DFS)は89.8%(95%信頼区間:88.2-91.2%)、Switch治療を実施した3群は88.5%(95%信頼区間:86.7-90.0%)、両群間に統計学的有意な差は確認されなかった(ハザードリスク比:0.89,95%信頼区間:0.73-1.08,P=0,23)。

また、アナストロゾール治療を実施した群の5年無病生存率(DFS)は90.0%(95%信頼区間:87.9-91.7%)、エキセメスタン治療を実施した群は88.0%(95%信頼区間:85.8-89.9%)、レトロゾール治療を実施した群は89.4%(95%信頼区間:87.3-91.1%)、3つのアロマターゼ阻害薬の間で統計学的有意な差は確認されなかった。

副次評価項目である5年全生存率(OS)それぞれ下記の通りである。Upfront治療を実施した3群の5年全生存率(OS)は95.3%(95%信頼区間:94.1-96.3%)、Switch治療を実施した3群は96.8%(95%信頼区間:95.7-97.6%)、両群間に統計学的有意な差は確認されなかった(ハザードリスク比:0.72,95%信頼区間:0.51-1.00,P=0,052)。

また、アナストロゾール治療を実施した群の5年全生存率(OS)は95.9%(95%信頼区間:94.4-97.0%)、エキセメスタン治療を実施した群は95.7%(95%信頼区間:94.2-96.8%)、レトロゾール治療を実施した群は96.6%(95%信頼区間:95.3-97.6%)、3つのアロマターゼ阻害薬の間で統計学的有意な差は確認されなかった(P=0.52)。

一方の安全性として、既存の安全性プロファイルと一致しており予期せぬ重篤な有害事象(SAE)、治療関連死(TRD)は発生しなかった。グレード3または4の筋骨格系有害事象(AE ※骨粗しょう症、関節炎、筋力低下、痛みなど)として、Upfront治療を実施した3群で7%(N=128/1766人)、Switch治療を実施した3群で7%(N=130/1761人)であった。なお、全グレードの筋骨格系有害事象(AE)においてはUpfront治療を実施した3群で52%(N=924/1766人)、Switch治療を実施した3群で42%(N=745/1761人)を示し、両群間で統計学的有意な差が確認された。

また、3つのアロマターゼ阻害薬別の有害事象(AE)では消化器系有害事象(AE)はレトロゾールよりもエキセメスタンの方で頻繁に発症し、高コレステロール血症はエキセメスタンよりアナストロゾール、レトロゾールの方で頻繁に発症した。それ以外の有害事象(AE)で3つのアロマターゼ阻害薬の間で統計学的有意な差は確認されなかった。

以上のFATA-GIM3試験の結果よりSabino De Placido氏らは以下のように結論を述べている。”アロマターゼ阻害薬単剤療法を5年間投与する治療は、タモキシフェン単剤療法を2年間投与した後にアロマターゼ阻害薬単剤療法を3年間投与する治療法に比べて有効性は優れておりませんでした。また、3つのアロマターゼ阻害薬の間でも有効性において差は確認されませんでした。つまり、ホルモン受容体陽性閉経後早期乳がん患者さんに対する術後化学療法として最適な治療を選択する時は、患者さんの好み、忍容性、経済的事情などを考慮するべきであることを意味します。”

Adjuvant anastrozole versus exemestane versus letrozole, upfront or after 2 years of tamoxifen, in endocrine-sensitive breast cancer (FATA-GIM3): a randomised, phase 3 trial(The Lancet Oncology, DOI: https://doi.org/10.1016/S1470-2045(18)30116-5)

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