2018年1月31日、医学誌『BMJ』にて慢性疾患の罹患ががんの罹患率、がんによる死亡率に対して与える影響力についてを前向きに検証したコホート試験の結果がThe University of Texas MD Anderson Cancer Center・Huakang Tu氏らにより公表された。

本試験は、台湾のがん登録、台湾の死亡記録のデータに基づき心血管系疾患、糖尿病、慢性腎臓病、肺疾患、痛風性関節炎など5種類の疾患に罹患する405,878人を対象にその後の転帰を平均8.7年間(1.0-12.9)追跡調査し、主要評価項目としてがんの罹患率、がんによる死亡率を検証した前向きコホート試験である。

慢性疾患とがんの罹患率、死亡率のハザードリスク、95%信頼区間を算出する方法としてはCox比例ハザードモデルを採用しており、年齢、性別、教育、職業、喫煙の有無、アルコール摂取の有無、BMI値、運動量、野菜・果物摂取量などの患者背景の違いにより偏りが生じないよう調整している。

なお、5種類の疾患の基準値として心血管疾患では血圧値、総コレステロール値、心拍数、糖尿病では血糖値、慢性腎臓病では糸球体濾過率、蛋白尿陽性率、肺疾患では一秒率(FEV1/FVC%)、痛風性関節炎では尿酸値、計8つの基準値を採用しており、この基準値に基いて5種類の疾患の重症度を分類している。

本試験の結果、高血圧、肺障害を除いた8つの疾患、基準値はがんの罹患率を統計学的有意に増加させることを示し、そのハザードリスク比は1.07-1.44であった。特に、また、総コレステロール値とがんの罹患率の関係性は密接であり、総コレステロール値4.15mmol/L未満の人よりも6.22mmol/L以上の人はがんの罹患率を44%(ハザードリスク比1.44, 95%信頼区間1.33-1.56,P<0.001)統計学的有意に増加することが示された。

他の基準値としては、心拍数90/分以上の人は70/分未満の人に比べてがんの罹患率を9%(ハザードリスク比1.09, 95%信頼区間1.01-1.18,P=0.03)統計学的有意に増加、蛋白尿陽性率は重症度と伴に罹患率は上昇し、微量蛋白尿の人はがんの罹患率を12%(ハザードリスク比1.12, 95%信頼区間1.04-1.21,P=0.004)統計学的有意に増加、蛋白尿の人はがんの罹患率を21%(ハザードリスク比1.21, 95%信頼区間1.09-1.35,P<0.001)統計学的有意に増加した。

一方、がんの死亡率も 8つの疾患、基準値と密接に関連しており、そのハザードリスク比は1.12-1.70を示し、罹患率以上に死亡率の増加に影響を与える因子であることが判った。例えば、蛋白尿陽性率は最もがんの死亡率に影響を与え、微量蛋白尿の人はがんの死亡率は35%(ハザードリスク比1.35, 95%信頼区間1.21-1.51)、蛋白尿の人はがんの死亡率は70%(ハザードリスク比1.70, 95%信頼区間1.48-1.95)増加した。

以上の前向きコホート試験の結果より、Huakang Tu氏らは以下のように結論を述べている。”がんのリスク因子として慢性疾患は見落としがちですが、喫煙、低活動性、野菜・果物摂取量の低さ、毎日のアルコール摂取、肥満などの5大因子と同様に慢性疾患はがんの罹患率、死亡率に関係する因子です。本試験により慢性疾患はがんを罹患する5人に1人、がんで死亡する3人に1人以上に影響を与えていることが示されました。”

Cancer risk associated with chronic diseases and disease markers: prospective cohort study(BMJ, Published 31 January 2018)

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