多発性骨髄腫の検査・診断


  • [公開日]2023.01.01
  • [最終更新日]2023.02.14

多発性骨髄腫の検査

多発性骨髄腫の診断と病期等の確定にあたっては、血液検査および尿検査、画像検査、骨髄検査が行われます。

血液検査・尿検査

多発性骨髄腫が疑われた場合、まず血液検査と尿検査が行われます。採取した血清(血液の上澄み)と尿を、それぞれ「タンパク質電気泳動法」と「免疫電気泳動法」という検査にかけます。これにより、過剰なMタンパクが検出されると、多発性骨髄腫の可能性が極めて高くなります。Mタンパクに加えて各種の抗体(特にIgG、IgA、IgM)も調べられ、骨髄腫の種類の診断に用いられます。

多発性骨髄腫の血液検査ではこのほか、血中のカルシウムやヘモグロビン、クレアチニンの値を確認します。さらに、多発性骨髄腫の進行度を示す「病期」(ステージ)分類のため、血液中のアルブミン値とβ₂ミクログロブリン値、場合によって乳酸脱水素酵素の値も併せて分析されます。

多発性骨髄腫の尿検査では、24時間にわたって尿を採取し、その中に含まれるタンパク質の量と種類を分析します。多発性骨髄腫では、Mタンパクの一部が尿の中に漏れ出てくることがあり(ベンス・ジョーンズタンパク質)、約半数の患者の尿から検出されます。このほか、多発性骨髄腫の尿検査では、クレアチニン値も確認されます。

画像検査

多発性骨髄腫の画像検査としては、まず全身のX線検査(全身骨X線検査)が行われます。さらに、骨が損傷して痛みが発生している部位を具体的に調べるため、MRI(磁気共鳴画像)検査や、CT(コンピュータ断層撮影)とPET(陽電子放出断層撮影)を組み合わせたPET-CT検査が行われます。

骨髄検査(骨髄穿刺・骨髄生検)

多発性骨髄腫では、診断や種類の確定には「骨髄検査」(骨髄穿刺・骨髄生検)が必要です。骨髄検査は、骨髄組織に含まれる骨髄腫細胞の数や形状、染色体異常などを調べるために行われます。

皮膚を消毒して局所麻酔をした後に、一般的には腸骨(腰の骨)に細い針を刺し、骨髄液を注射器で吸引する「骨髄穿刺」と、腸骨にやや太い針を刺して骨髄組織を採取する「骨髄生検」があります。染色体異常については、採取した骨髄細胞の分裂期に現れる染色体の種類を調べます。

骨髄穿刺と骨髄生検の療法を行った上で、診断を確定します。多発性骨髄腫では、骨髄の細胞の形状に異常が見られるほか、多数の形質細胞が異常な並び方(シート状や房状)をしているのが確認できます。

多発性骨髄腫の種類と病期(ステージ)

多発性骨髄腫の種類と診断

多発性骨髄腫は、非常に進行が速いものから比較的ゆっくりと進行するものまで、さまざまです。タイプまで、患者ごとに進行様式が異なることが特徴のひとつです。診断基準も日進月歩で変わっています。

現在、多発性骨髄腫の診断には、国際骨髄腫作業部会(IMWG)による「SLiM-CRAB」と呼ばれる診断基準が用いられています。「SLiM」と「CRAB」という2つの基準を組み合わせたもので、どちらかの基準を見たせば「症候性骨髄腫」(いわゆる多発性骨髄腫)として治療を開始することが推奨されます。

かつてはCRAB基準に該当する場合のみ多発性骨髄腫(症候性骨髄腫)と診断されていました。しかし、SLiM基準を組み合わせることで、それまで「無症候性」(症状がない)であるとして治療を開始せず経過観察のみにとどめていた症例も、積極的に治療をしていこうという方針に変わりました。

【SLiM 基準】
■骨髄中の形質細胞が60%以上
■腫瘍由来であること
■非腫瘍由来の血清遊離軽鎖(FLC、抗体等の断片)比が100以上、もしくはMRIで証明された巣状病変が2カ所以上あること
⇒■のいずれか1つ以上を満たせば、症候性骨髄腫に含める

【CRAB基準】
■骨髄中にクローン性の(遺伝的に同一な)形質細胞が10%以上、または生検で証明された形質細胞腫があること
■CRAB症状=高カルシウム血症(C)、腎障害(R)、貧血(A)、骨病変(B)がある
⇒両方の■を満たすと、症候性骨髄腫と診断できる

なお、多発性骨髄腫の診断基準を満たさず、

○意義不明の単クローン性免疫グロブリン血症(MGUS):血清中にMタンパクは検出されるが3g/dL未満、骨髄中の形質細胞10%未満、CRAB症状がない
○くすぶり型骨髄腫(SMM):血清中Mタンパクが3g/dL以上、骨髄中の形質細胞10%以上だが、CARB症状がない

と診断された場合でも、経過観察中に多発性骨髄腫に進展することもあります。現在のガイドラインでは、MGUSやSMMの段階では治療は開始せず、多発性骨髄腫の診断基準を満たした場合に治療を開始することとなっています。

日常生活の中に、骨髄腫のリスクが高い事柄は特に報告されていません。ただ、MGUSと診断された患者さんは1年に1%が骨髄腫に進行し、SMMと診断された患者さんは5年間で50%が骨髄腫に進行します。そのためSMMやMGUSと診断を受けたら、定期的な検査を続けることが大切です。経過観察中に自己判断で通院を中断した患者さんが、数年後に圧迫骨折を起こすケースは少なくありません。

多発性骨髄腫の病期

診断の次は、I~III期まで3段階の病期(ステージ)分類の決定です。最も病気が進行した状態がステージIIIです。病期に基づいて、多発性骨髄腫の進行度と予後(今後の経過)をある程度予測することができ、治療法選択の重要な目安になります。

従来、国際病期分類に基づく病期が使われてきました。ただ、高リスク染色体異常の検査が保険適用されたため(2022年~)、乳酸脱水素酵素の値(LDH値、血液検査による)、高リスク染色体異常の有無(骨髄検査による)、の3つを指標とした「改訂国際病期分類」へと移行する可能性があります。

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