2月22日~24日、第21回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO 2024)が名古屋国際会議場で開催された。同学術集会の「シンポジウム7:その治療、やりすぎじゃないですか?」のセッションの中で、「そのICI、やりすぎでしょ」というタイトルで後藤悌先生(国立がん研究センター中央病院 呼吸器内科)が発表した。
免疫チェックポイント阻害剤(ICI)を使いすぎるケースには3つある、と後藤先生。
1つは、効果が出ているが故に2年以上治療を継続するケース。従来の化学療法(カルボプラチン+パクリタキセル)では、毒性の観点から、無期限に継続するよりも一定期間の投与にした方が良いことはコンセンサスが得られているという。一方のICIに関しては、臨床試験では2年の投与が一般的になってきているものの、まだ十分なエビデンスがないことから、実臨床では効果がなくなるまで投与し続けることも多い。
ただしキイトルーダ(一般名:ペムブロリズマブ)の治験データの中では、2年で一度休薬し再発後に再度キイトルーダを使うことで、効果が期待できる症例も認められている。また、2年で休薬する場合と継続する場合で生存期間(OS)に差がないことを示す後ろ向きの解析があること、長く投与を続けることで経時的な有害事象の発現頻度が上昇することを説明した。
現在前向きの臨床研究として、抗PD-1抗体の継続と休止に関する前向きランダム化試験(JCOG1701)が進行中であり、その結果が待たれる。
2つ目は、病勢増悪(PD)後もそのままICIを使い続けるケース。ICIの特徴として、投与直後に一度効果がないように見えてもその後ゆっくり効果が出てくるパターン(Pseudo-Progression)もあることから、遅れて効果が出てくることを期待してしまうようだ。
3つ目は、ICI再投与を実施するケース。確かにICIを再投与することで生存期間が長くなる場合もあるが、全例に効果があるわけではない。後藤先生は、転移臓器の特徴(耐性メカニズムの違いや再発のタイミングなど)によって効果が変わってくる可能性もあるとし、現在研究中であると述べた。
ICI治療が標準療法の枠を越えて終末期に使われるケースが、特にnon-academicの施設において年々増えているという海外からの報告もある。
後藤先生は、正しく患者選択をせずにICIを使った場合の奏効率は非常に低いことを示し、臨床試験のエビデンスがない使い方は全て“やりすぎ”の治療である可能性があることを指摘した。また、治療のやりすぎに関しては、薬剤を使用する医師だけでなく、行政を含めた国の制度によって管理・制御されるべきだと語り講演を締めくくった。
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第21回日本臨床腫瘍学会学術集会
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