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2021年の日本人の全死因死亡率の動向とその要因は?

[公開日] 2023.09.01[最終更新日] 2023.09.01

国立がん研究センターは、新型コロナウイルス感染症(以下COVID-19)のパンデミック期における日本人の年齢調整死亡率を、人口動態統計(全数調査)により分析し、死因別の死亡動向を明らかにした。 8月29日に記者会見を開催し、片野田耕太氏(国立がん研究センター がん対策研究所 データサイエンス研究部長)および田中宏和氏(同研究部サーベイランス研究室 研究員)が調査結果の詳細を発表した。 なお、同研究成果は8月31日 に国際英文ジャーナル「BMJ Open」に公表されている。 パンデミックが日本の全死亡率に与えた影響は? COVID-19のパンデミックや、それに伴う治療の先延ばしなどの医療・保険サービスの変化に伴い、2020年以降の平均寿命の短縮(全死因死亡率の増加)が、世界的に報告されている。一方、日本では他国と比較して死亡率の変化は指摘されてこなかったものの、詳細な検討は実施されていなかった。 そこで研究グループは、厚生労働省(厚労省)が公表している人口動態統計の死亡データを使い、1995-2021年の毎年の年齢調整死亡率を算出、それぞれの年について前年のデータの比較した死亡率の変化及びその要因について分析した。 その結果、2021年の全死亡率は、東日本大震災の影響を受けた2011年以来、初めて増加に転じた(2020年と比較して男⼥計で2.2%増加)。その主な原因は、COVID-19、老衰、心疾患であった、と田中氏は指摘。一方、がんに関しては、全体解析および部位別解析のいずれにもいても大きな変化は認められず、2020年、2021年ともに減少傾向を示したという。 結果の解釈には継続的な解析が重要に 今回の結果を受けて田中氏は、日本でも他国と同様2021年の全死因死亡率は増加傾向が見られたと結論付けた。 死因別の分析では、COVID-19による直接の影響に加え、COVID-19感染による循環器疾患(特に⼼疾患)リスクの増加の可能性、また医療機関の診療体制の制限による循環器疾患の救急体制への影響が考えられるようだ。また、老衰やその他の死因の増加も見られたことについては、医療機関のひっ迫により在宅死が増えたことなどの影響も考えられる、と説明した。 がんに関しては、依然として死因の第一位ではあるものの、今回の死亡率増加に直接的な寄与はないことが明らかとなったと田中氏。しかしながら、医療・保健サービスの変化の影響(治療の先延ばしやがん検診の受診抑制など)が顕在化するまでにはタイムラグがある可能性があり、引き続き注視する必要があるとコメントした。 厚労省の調査によると、2022年の年齢調整死亡率も増加傾向が続いていることが示唆されており、更にがんに起因する年齢調整死亡率は男性で減少、⼥性で(特に乳房と大腸で)増加の⾒込みであるという。 これを受けて田中氏は今後、全国がん登録(2020年以降)に基づくがんのステージや⽣存率、がん検診などさまざまなデータを組み合わせて、COVID‐19のパンデミックによるがん診療への影響を検討していきたい、と展望を語った。 また片野田氏は、厚労省からの発表により、全死亡率の増加に関しては既に報告があったものの、がんを含めた死因を個別に分析し論文化したことが本発表の新規性であると指摘。2022年のデータも含めて変化の継続的な追跡をしていくことの重要性を改めて強調した。 参照元:
国立がん研究センター プレスリリース
ニュース がん一般

浅野理沙

東京大学薬学部→東京大学大学院薬学系研究科(修士)→京都大学大学院医学研究科(博士)→ポスドクを経て、製薬企業のメディカルに転職。2022年7月からオンコロに参加。医科学博士。オンコロジーをメインに、取材・コンテンツ作成を担当。

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