転移性去勢抵抗性前立腺がんに対するファーストライン治療としてのPARP阻害薬タラゾパリブ+エンザルタミド、画像無増悪生存期間を延長ASCO GU 2023


  • [公開日]2023.02.27
  • [最終更新日]2023.02.24
この記事の3つのポイント
転移性去勢抵抗性前立腺がんが対象の第3相試験
・タラゾパリブ+エンザルタミド併用療法の有効性安全性プラセボ+エンザルタミドを比較検証
・画像無増悪生存期間はタラゾパリブ+エンザルタミドで未到達を示し、
 相同組換え修復(HRR)の欠損の有無にかかわらずプラセボ群に対して延長を認めた

2023年2月16日~18日、米国カリフォルニア州・サンフランシスコにて開催された泌尿器癌シンポジウム(ASCO GU 2023)にて転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)患者に対するファーストライン治療としてポリ(ADPリボース)ポリメラーゼ(PARP)阻害薬であるタラゾパリブ+次世代アンドロゲン受容体経路阻害剤(ARPI)であるエンザルタミド併用療法の有効性、安全性を比較検証した第3相のTALAPRO-2試験(NCT03395197)の結果がHuntsman Cancer InstituteのNeeraj Agarwal氏らにより公表された。

TALAPRO-2試験は、転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)患者(N=805人)に対するファーストライン治療として1日1回タラゾパリブ0.5mg+エンザルタミド160mg併用療法を実施する群(N=402人)、もしくは1日1回プラセボ+エンザルタミド160mg併用療法を実施する群(N=403人)に無作為に振り分け、主要評価項目として画像無増悪生存期間(rPFS)、副次評価項目として全生存期間OS)、客観的奏効率ORR)、PSA奏効率などを比較検証したランダム化二重盲検下プラセボ対照の第3相試験である。

本試験が開始された背景として、転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)を含めて、前立腺がんではBRCA1、BRCA2、ATM、または他の相同組換えDNA修復遺伝子における遺伝子変異が確認されている。このような遺伝子変異に対してPARP阻害薬は下記の臨床試験などで良好な抗腫瘍効果を示している。

例えば、第2相のTALAPRO-1試験(NCT03148795)では、相同組換え修復(HRR)の欠損のある進行性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)患者に対するタラゾパリブ単剤療法は、客観的奏効率(ORR)29.8%(95%信頼区間:21.2-39.6%)の良好な結果を示している。(参考:Lancet Oncol. 2021 Sep;22(9):1250-1264. doi: 10.1016/S1470-2045(21)00376-4. Epub 2021 Aug 10.

また、他のPARP阻害薬であるオラパリブも、第2相のTOPARP試験(NCT01682772)では、DNA修復遺伝子変異のある転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)患者に対してオラパリブ単剤療法は客観的奏効率(ORR)33%の良好な抗腫瘍効果を示している。(参考:N Engl J Med. 2015 Oct 29;373(18):1697-708. doi: 10.1056/NEJMoa1506859.

以上の背景より、転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)患者に対するポリ(ADPリボース)ポリメラーゼ(PARP)阻害薬であるタラゾパリブ+エンザルタミド併用療法の有用性を検証する目的で本試験が開始された。

本試験の結果、主要評価項目である画像無増悪生存期間(rPFS)中央値はタラゾパリブ+エンザルタミド併用群の未到達に対してプラセボ+エンザルタミド併用群で21.9ヶ月と、タラゾパリブ+エンザルタミド併用群で画像の病勢進行または死亡(rPFS)のリスクを37%(HR:0.63、95%信頼区間:0.51-0.78、P<0.001)を統計学的有意に改善した。

また、相同組換え修復(HRR)の欠損を有する患者群では、プラセボ+エンザルタミド併用群に比べてタラゾパリブ+エンザルタミド併用群で画像の病勢進行または死亡(rPFS)のリスクを54%(HR:0.46、95%信頼区間:0.30-0.70、<0.001)減少し、相同組換え修復(HRR)の欠損のないまたは不明の患者群ではプラセボ+エンザルタミド併用群に比べてタラゾパリブ+エンザルタミド併用群で画像の病勢進行または死亡(rPFS)のリスクを30%(HR:0.70、95%信頼区間:0.54-0.89、P=0.004)減少した。副次評価項目である全生存期間(OS)はデータが未成熟であった。

一方、安全性としてグレード3~4の治療関連有害事象(TRAE)はタラゾパリブ+エンザルタミド併用群で71.9%、プラセボ+エンザルタミド併用群で40.6%に見られた。最も多かったグレード3以上の有害事象はタラゾパリブ+エンザルタミド併用群で貧血、好中球減少、血小板数減少であり、プラセボ+エンザルタミド併用群では高血圧、貧血、疲労であった。

以上の第3相のTALAPRO-2試験の結果より、「転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)患者に対するファーストライン治療としてのPARP阻害薬タラゾパリブ+次世代アンドロゲン受容体経路阻害剤(ARPI)エンザルタミド併用療法は、相同組換え修復(HRR)ステータスに関係なく画像無増悪生存期間(rPFS)を統計学的有意に改善しました」と結論を述べている。

TALAPRO-2: Phase 3 study of talazoparib (TALA) + enzalutamide (ENZA) versus placebo (PBO) + ENZA as first-line (1L) treatment in patients (pts) with metastatic castration-resistant prostate cancer (mCRPC).(2023 ASCO GU Cancers Symposium, Abstract # LBA17)

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