転移性去勢抵抗性前立腺がんに対するPARP阻害薬ルカパリブ単剤療法、無増悪生存期間を延長


  • [公開日]2023.02.24
  • [最終更新日]2023.02.22
この記事の3つのポイント
転移性去勢抵抗性前立腺がん患者が対象の第3相試験
・ルカパリブ単剤療法有効性安全性を主治医選択の化学療法と比較検証
無増悪生存期間BRCA遺伝子変異群で11.2ヶ月、全患者群で10.2ヶ月を示しいずれも化学療法群に比べて有意に延長した

2月16日~18日、米国カリフォルニア州・サンフランシスコにて開催された泌尿器癌シンポジウム(ASCO GU 2023)にて転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)患者に対するポリ(ADPリボース)ポリメラーゼ(PARP)阻害薬であるルカパリブ単剤療法の有効性、安全性を比較検証した第3相のTRITON3試験(NCT02975934)の結果がMayo ClinicのAlan Haruo Bryce氏らにより公表された。

TRITON3試験は、転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)患者に対して1日1回ルカパリブ600mg単剤を投与する群、もしくは主治医選択薬(エンザルタミド、アビラテロン、ドセタキセルのいずれか)を投与する群に2対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目として無増悪生存期間(rPFS)、重要な副次評価項目として全生存期間OS)、客観的奏効率ORR)、奏効持続期間(DOR)、PSA病勢進行等を比較検証した多施設共同ランダム化オープンラベルの第3相試験である。

本試験が開始された背景として、転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)患者の約12%ではBRCA1、BRCA2遺伝子変異が確認されている。このような遺伝子変異に対してはPARP阻害薬は良好な抗腫瘍効果を示している。以上の背景より、転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)患者に対するポリ(ADPリボース)ポリメラーゼ(PARP)阻害薬であるルカパリブ単剤療法の有用性を検証する目的で本試験が開始された。

なお、第2相のTRITON2試験(NCT02952534)ではエンザルタミド、アビラテロン等の次世代アンドロゲン受容体経路阻害剤(ARPI)、タキサン抗がん剤ベースの化学療法後に病勢進行したBRCA遺伝子変異のある転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)患者に対してルカパリブ単剤療法は客観的奏効率(ORR)43.5%~50.8%と良好な抗腫瘍効果を示している。(参考:J Clin Oncol. 2020 Nov 10;38(32):3763-3772. doi: 10.1200/JCO.20.01035. Epub 2020 Aug 14.

また、他のPARP阻害薬であるオラパリブも、第2相のTOPARP試験(NCT01682772)にてDNA修復遺伝子変異のある転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)患者に対してオラパリブ単剤療法は客観的奏効率(ORR)33%と良好な抗腫瘍効果を示している。(参考: N Engl J Med. 2015 Oct 29;373(18):1697-708. doi: 10.1056/NEJMoa1506859.

本試験の結果、主要評価項目であるBRCA遺伝子変異群における無増悪生存期間(rPFS)中央値は、ルカパリブ単剤群の11.2ヶ月(95%信頼区間:9.2-13.8ヶ月)に対して主治医選択薬であるドセタキセル群で8.3ヶ月(95%信頼区間:6.1-9.9ヶ月)、エンザルタミドもしくはアビラテロン群で4.5ヶ月(95%信頼区間:3.3-5.8ヶ月)をそれぞれ示し、ルカパリブ単剤群で病勢進行または死亡のリスク(rPFS)を50%統計学的有意に減少(HR:0.50、95%信頼区間:0.36-0.69)した。

全患者群(ITT)における無増悪生存期間(rPFS)中央値は、ルカパリブ単剤群の10.2ヶ月(95%信頼区間:8.3-11.2ヶ月)に対して主治医選択薬であるドセタキセル群で8.3ヶ月(95%信頼区間:6.1-10.1ヶ月)、エンザルタミドもしくはアビラテロン群で4.5ヶ月(95%信頼区間:3.7-5.8ヶ月)をそれぞれ示し、ルカパリブ単剤群で病勢進行または死亡のリスク(rPFS)を39%統計学的有意に減少(HR:0.61、95%信頼区間:0.47-0.80)した。

副次評価項目であるBRCA遺伝子変異群における全生存期間(OS)中央値は、ルカパリブ単剤群の24.3ヶ月(95%信頼区間:19.9-25.7ヶ月)に対して主治医選択薬であるドセタキセル群で18.9ヶ月(95%信頼区間:15.0-23.1ヶ月)、エンザルタミドもしくはアビラテロン群で22.1ヶ月(95%信頼区間:15.9-28.3ヶ月)をそれぞれ示し、ルカパリブ単剤群で死亡のリスク(OS)を19%減少(HR:0.81、95%信頼区間:0.58-1.12)を示した。

全患者群(ITT)における全生存期間(OS)中央値は、ルカパリブ単剤群の23.6ヶ月(95%信頼区間:19.7-25.0ヶ月)に対して主治医選択薬であるドセタキセル群で19.1ヶ月(95%信頼区間:15.3-23.1ヶ月)、エンザルタミドもしくはアビラテロン群で22.1ヶ月(95%信頼区間:17.2-29.0ヶ月)をそれぞれ示し、ルカパリブ単剤群で死亡のリスク(OS)を6%減少(HR:0.94、95%信頼区間:0.72-1.23)した。

一方、安全性として、最も頻度の高い治療関連有害事象(TRAE)は無力症/疲労であり、ルカパリブ単剤群で61.1%、ドセタキセル群で67.6%、エンザルタミドもしくはアビラテロン群で57.6%を示した。グレード3以上の治療関連有害事象(TRAE)はルカパリブ単剤群で貧血が23.7%、ドセタキセル群で好中球減少症が14.1%、エンザルタミドもしくはアビラテロン群で高血圧が10.2%であった。

以上のTRITON3試験の結果について、Alan Haruo Bryce氏らは「転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)患者に対するポリ(ADPリボース)ポリメラーゼ(PARP)阻害薬であるルカパリブ単剤療法は、主治医選択薬(エンザルタミド、アビラテロン、ドセタキセルのいずれか)療法に対して無増悪生存期間(rPFS)を有意に改善し、安全性プロファイルはこれまでに報告されているものと同様であった」と結論を述べている。

Rucaparib for metastatic castration-resistant prostate cancer (mCRPC): TRITON3 interim overall survival and efficacy of rucaparib vs docetaxel or second-generation androgen pathway inhibitor therapy.(2023 ASCO GU Cancers Symposium, Abstract #18)

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