複数治療歴のある再発/難治性多発性骨髄腫に対するCAR-T細胞療法イデカブタゲン ビクルユーセル、無増悪生存期間を延長The New England Journal of Medicineより


  • [公開日]2023.02.16
  • [最終更新日]2023.02.16
この記事の3つのポイント
・複数治療歴のある再発/難治性多発性骨髄腫患者が対象の第3相試験
CAR-T細胞療法であるイデカブタゲン ビクルユーセルの有効性安全性標準療法と比較検証
無増悪生存期間は13.3ヶ月であり、標準治療群(4.4ヶ月)に対して有意に延長した

2月10日、医学誌『The New England Journal of Medicine』にて複数治療歴のある再発/難治性多発性骨髄腫(RRMM)患者に対するB細胞成熟抗原(BCMA)を標的としたキメラ抗原受容体(CAR)T細胞免疫療法であるイデカブタゲン ビクルユーセル(idecabtagene vicleucel:ide-celまたはbb2121)療法、標準治療を比較検証した第3相のKarMMa-3試験(NCT03651128)の結果がUniversidad de Navarra のPaula Rodriguez-Otero氏らにて公表された。

KarMMa-3試験は、複数治療歴のある再発/難治性多発性骨髄腫(RRMM)患者(N=386人)に対して、介入群としてイデカブタゲン ビクルユーセル(ide-celまたはbb2121)を150~450×106個の範囲で投与する群(N=254人)、対照群として主治医選択の標準治療(ダラツムマブ+ポマリドミド+デキサメタゾン併用療法、ダラツムマブ+ボルテゾミブ+デキサメタゾン併用療法、イキサゾミブレナリドミド+デキサメタゾン併用療法、カルフィルゾミブ+デキサメタゾン併用療法、エロツズマブ+ポマリドミド+デキサメタゾン併用療法)を実施する群に無作為に振り分け、主要評価項目として無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目として全生存期間OS)、客観的奏効率ORR)、安全性、無イベント再発期間(EFS)などを比較検証した非盲検単群多施設共同国際共同の第3相試験である。

本試験が開始された背景として、多発性骨髄腫は骨髄にある形質細胞ががん化することで発症する疾患であるが、この発症原因は不明である。そのため、多発性骨髄腫を完治させる治療方法は現在のところ存在しないが、近年の医学の進歩により、複数の新規治療薬が開発されている。しかしながら、複数の治療法を受けたにも関わらず、多発性骨髄腫は進行、再発する。

多発性骨髄腫の新規薬剤であるイデカブタゲン ビクルユーセル(ide-celまたはbb2121)はB細胞成熟抗原(BCMA)を標的とする遺伝子改変自家キメラ抗原受容体(CAR)T細胞免疫療法である。イデカブタゲン ビクルユーセル(ide-celまたはbb2121)は多発性骨髄腫細胞の表面にあるB細胞成熟抗原(BCMA)を認識し結合することでCAR-T細胞が増殖し、サイトカインが放出されるため、結果としてB細胞成熟抗原(BCMA)発現細胞が融解、殺傷される可能性が示唆されている。
(参考:ブリストル・マイヤーズ スクイブ株式会社 プレスリリース

以上の背景より、複数治療歴のある再発/難治性多発性骨髄腫(RRMM)患者に対するB細胞成熟抗原(BCMA)を標的としたキメラ抗原受容体(CAR)T細胞免疫療法であるイデカブタゲン ビクルユーセル(ide-celまたはbb2121)の有用性を検証する目的で本試験が開始された。

本試験のフォローアップ期間中央値18.6ヶ月時点における結果、主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値は、介入群であるイデカブタゲン ビクルユーセル(ide-celまたはbb2121)の13.3ヶ月に対して対照群である主治医選択の標準治療群で4.4ヶ月と、イデカブタゲン ビクルユーセル(ide-celまたはbb2121)群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを51%(HR:0.49、95%信頼区間:0.38-0.65、P<0.001)統計学的有意に改善した。

また、副次評価項目である客観的奏効率(ORR)は、イデカブタゲン ビクルユーセル(ide-celまたはbb2121)群の71%に対して主治医選択の標準治療群で42%(P<0.001)、完全寛解率(CR)はイデカブタゲン ビクルユーセル(ide-celまたはbb2121)群の39%に対して主治医選択の標準治療群で5%を示した。

一方安全性として、グレード3または4の有害事象は、イデカブタゲン ビクルユーセル(ide-celまたはbb2121)群で93%、対主治医選択の標準治療群で75%に発生した。イデカブタゲン ビクルユーセル(ide-celまたはbb2121)の投与を受けた患者において、サイトカイン放出症候群は88%で発生し、グレード3以上は5%であり、神経毒性は15%に発生し、グレード3以上は3%で発生した。

第3相試験の結果より、Paula Rodriguez-Otero氏らは「再発/難治性多発性骨髄腫(RRMM)患者に対するB細胞成熟抗原(BCMA)を標的としたキメラ抗原受容体(CAR)T細胞免疫療法であるイデカブタゲン ビクルユーセル(ide-celまたはbb2121)療法は、主治医選択の標準治療と比較して無増悪生存期間を有意に延長し、奏効率を改善させました」と結論を述べている。

Ide-cel or Standard Regimens in Relapsed and Refractory Multiple Myeloma(N Engl J Med. 2023 Feb 10. doi: 10.1056/NEJMoa2213614.)

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