2月4日、第一三共株式会社は、EGFR遺伝子変異を有する切除不能非小細胞肺がん患者を対象に、HER3に対する抗体薬物複合体(ADC)であるU3-1402(一般名:パトリツマブ デルクステカン、以下U3-1402)の有効性、安全性を検証する第2相HERTHENA-Lung01試験(NCT04619004)を開始し、最初の患者への投与したと発表した。
肺がんは、2020年の世界における新規患者数が220万人/年と、世界で最も患者数の多いがん種であり、主要な死亡原因にもなっている。非小細胞肺がんは肺がんの80~85%を占め、そのうちの83%にHER3の発現が見られる。HER3は細胞増殖と関連する受容体、HERファミリーの1種であり、がんの転移の増加や生存率の低下と関連が示唆されている。非小細胞肺がん治療は進歩しており、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害剤の選択肢もあるが、HER3を標的とした治療法はなく、新たな治療法が期待されている。
HERTHENA-Lung01試験は、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤(EGFR-TKI)+化学療法の治療後に病勢進行したEGFR遺伝子変異陽性の切除不能な非小細胞肺がん患者を対象に、21日1サイクルとしてU3-1402を5.6mg/kg投与する固定用量パートと21日1サイクルとしてU3-1402を3.2mg/kg、4.8mg/kg、6.4mg/kgと漸増するパートから構成される第2相臨床試験。主要評価項目は客観的奏効率、副次評価項目は奏効期間、病勢コントロール率、無増悪生存期間、全生存期間などである。米国、欧州、アジアで最大420名の患者登録を予定している。
第一三共は「EGFR変異を有する切除不能な非小細胞肺がん患者さんに新しい治療の選択肢を提供できることを期待しております」と述べている。
抗体薬物複合体(ADC)とは 抗体と薬物(低分子化合物)を適切なリンカーを介して結合させた薬剤。がん細胞に発現している標的因子に結合する抗体を介することで薬物をがん細胞へ直接届け、薬物の全身曝露を抑えつつがん細胞への攻撃力を高める働きを持つ。
参照元:第一三共株式会社 プレスリリース