進行性胃腺がんまたは食道胃接合部腺がん患者に対するファーストライン治療としてのキイトルーダ単剤/併用療法、CPS1以上の患者に対して全生存期間中央値で非劣勢を示す欧州臨床腫瘍学会(ESMO 2019)より


  • [公開日]2019.11.01
  • [最終更新日]2019.11.01
この記事の3つのポイント
・進行性胃腺がんまたは食道胃接合部腺がん患者が対象の第3相試験
ファーストライン治療としてのキイトルーダ単剤/併用療法有効性安全性を検証
CPS1以上の患者に対して、全生存期間化学療法単独に対して非劣勢を示した

PD-L1染色細胞の数を腫瘍細胞の合計数で割り、100をかけた数値=combined positive score

2019年9月27日より10月1日、スペイン/バルセロナで開催された欧州臨床腫瘍学会(ESMO 2019)にて進行性胃腺がんまたは食道胃接合部腺がん患者に対するファーストライン治療としての抗PD-1抗体薬であるペムブロリズマブ(商品名キイトルーダ;以下キイトルーダ)単剤療法、併用療法の有効性、安全性を比較検証した第3相のKEYNOTE-062試験(NCT02494583)の結果が国立がんセンター東病院の設樂 紘平氏らにより公表された。

本試験は、進行性胃腺がんまたは食道胃接合部腺がん患者に対してファーストライン治療として3週を1サイクルとしてキイトルーダ200mg単剤療法を最大2年間投与する群(N=256人)、3週を1サイクルとしてキイトルーダ200mg+シスプラチン80mg/m2+5-FU 800mg/m2または1日2回カペシタビン1000mg/m2を投与する群(N=257人)、または3週を1サイクルとしてプラセボ+化学療法を投与する群(N=250人)に1対1対1対の割合で振り分け、主要評価項目としてCPS1以上、10以上の患者群における全生存期間(OS)、無増悪生存期間PFS)、副次評価項目として客観的奏効率ORR)を比較検証した第3相試験である。

本試験の結果、CPS1以上の患者群における全生存期間(OS)中央値はキイトルーダ単剤群10.6ヶ月(95%信頼区間:7.7-13.8ヶ月)に対して化学療法単独群11.1ヶ月(95%信頼区間:9.2-12.8ヶ月)、キイトルーダ単剤群で死亡(OS)のリスクを9%減少(HR:0.91,99.2%信頼区間:0.69-1.18)し、非劣勢が証明された。CPS10以上の患者群における全生存期間(OS)中央値はキイトルーダ単剤群17.4ヶ月に対して化学療法単独群10.8ヶ月で、キイトルーダ単剤群で死亡(OS)のリスクを31%減少(HR:0.69,99.2%信頼区間:0.49-0.97)した。

もう1つの主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値はキイトルーダ単剤群2.0ヶ月(95%信頼区間:1.5-2.8ヶ月)に対して化学療法単独群6.4ヶ月(95%信頼区間:5.7-7.0ヶ月)に対してキイトルーダ+化学療法併用群6.9ヶ月(95%信頼区間:5.7-7.3ヶ月)、キイトルーダ単剤群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを66%増加(HR:1.66,95%信頼区間:1.37-2.01)、キイトルーダ+化学療法併用群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを16%減少(HR:0.84,95%信頼区間:0.70-1.02,P=0.039)した。

また探索的試験も実施されており、高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High;以下MSI-High)を有する患者群(N=50人)における全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)の結果は下記の通りである。MSI-High患者群における全生存期間(OS)中央値はキイトルーダ単剤群未到達(95%信頼区間:10.7ヶ月−未到達)に対して化学療法単独群8.5ヶ月(95%信頼区間:5.3-20.8ヶ月)に対してキイトルーダ+化学療法群未到達(95%信頼区間:3.6ヶ月−未到達)、キイトルーダ単剤群で死亡(OS)のリスクを71%減少(HR:0.29,95%信頼区間:0.11-0.81)、キイトルーダ+化学療法群で死亡(OS)のリスクを63%減少(HR:0.37,95%信頼区間:0.14-0.97)した。

MSI-High患者群における無増悪生存期間(PFS)中央値はキイトルーダ単剤群11.2ヶ月(95%信頼区間:1.5ヶ月−未到達)に対して化学療法単独群6.6ヶ月(95%信頼区間:4.4-8.3ヶ月)に対してキイトルーダ+化学療法群未到達(95%信頼区間:3.6ヶ月−未到達)、キイトルーダ単剤群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを28%減少(HR:0.72,95%信頼区間:0.31-1.68)、キイトルーダ+化学療法群で死亡(OS)のリスクを55%減少(HR:0.45,95%信頼区間:0.18-1.11)した。

副次評価項目である客観的奏効率(ORR)はキイトルーダ単剤群57.1%に対して化学療法単独群36.8%に対してキイトルーダ+化学療法群64.7%、化学療法単独に比べてキイトルーダ単剤、キイトルーダ+化学療法それぞれで高率の客観的奏効率(ORR)を示した。また、奏効持続期間(DOR)中央値はキイトルーダ単剤群21.2ヶ月に対して化学療法単独群7.0ヶ月に対してキイトルーダ+化学療法群未到達であった。安全性として、グレード3〜5の治療関連有害事象(TRAE)発症率はキイトルーダ単剤群17%に対して化学療法単独群69%に対してキイトルーダ+化学療法群73%を示した。

KEYNOTE-062試験の結果より設樂 紘平氏らは以下のように結論を述べている。”進行性胃腺がんまたは食道胃接合部腺がん患者に対するファーストライン治療としての抗PD-1抗体薬キイトルーダはCPS1以上の患者に対して全生存期間の非劣勢を示し、CPS10以上の患者に対しては臨床的意義のある改善効果を示しました。”

First-Line Pembrolizumab Versus Chemotherapy in Patients with Advanced G/GEJ Cancer Demonstrates Similar Survival and HRQoL[ESMO 2019 Oncology News]

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