2017年9月8日から12日までスペイン・マドリードで開催されている欧州臨床腫瘍学会(ESMO)にて、ER陽性HER2陰性閉経後の早期乳がん患者に対するレトロゾール(商品名フェマーラ,以下フェマーラ)+PI3キナーゼ阻害薬taselisib併用療法の有効性を検証した第2相のLORELEI試験(NCT02273973)の結果がスペイン・バルセロナ・Vall d’Hebron University HospitalのCristina Saura氏より発表された。

本試験は、治療歴がないER陽性HER2陰性閉経後のステージ1/2/3乳がん患者に対してフェマーラ+PI3キナーゼ阻害薬taselisib併用療法(N=166人)、またはフェマーラ+プラセボ併用療法 (N=168人) を無作為に割り付け、主要評価項目であるMRIによるmRECIST評価による客観的奏効率(ORR)、副次評価項目である乳房および腋窩の病理学的完全奏効率(pCR)を比較検証した国際共同試験の結果である。

登録された患者は全体で334人、その内PI3キナーゼCA遺伝子変異型患者がtaselisib群で73人、プラセボ群で79人、PIキナーゼ3CA遺伝子野生型患者はtaselisib群で92人、プラセボ群89人であった。このような患者に対してフェマーラ2.5mgを1日1回、taselisib4mgもしくはプラセボを1日1回5日間服薬し2日間休薬するスケジュールで16週間投与した。

その結果、主要評価項目である客観的奏効率(ORR)は患者全体でtaselisib群50%に対してプラセボ群39.3%(オッズ比1.55、95%信頼区間:1.00–2.38、P=0.049)であった。一方で、副次評価項目である病理学的完全奏効率(pCR)は両群間に統計学的違いは確認されなかった。また、PI3キナーゼCA遺伝子変異型患者における客観的奏効率(ORR)はtaselisib群56.2%に対してプラセボ群38%(オッズ比2.03、95%信頼区間:1.06-3.88、P=0.033)であった。

以上の結果を受けてCristina Saura氏は下記のようなコメントをした。”PI3キナーゼ阻害薬であるtaselisibによる治療効果は全ての患者で確認されたが、私が最も伝えたいことはtaselisibはPIキナーゼ3CA遺伝子変異の有無に関係なく治療効果があるということである”

また、本試験には関与していないドイツ乳がんグループ(German Breast Group)の議長であるSibylle Loibl氏は下記のようなコメントをした。”PI3Kを阻害するだけでは抗腫瘍効果が減弱である。強力な抗腫瘍効果を発揮するためにはtaselisibのようにPI3Kα変異型に対して強い阻害活性を示すのが望ましく、また他のPI3キナーゼ阻害薬に比べて副作用も少ない”

たしかに、taselisibによる治療の継続が不可能となった患者は10.8%、taselisibによる治療の減量を必要とした患者は11.4%であり、本試験で毒性管理は可能であったとされている。taselisibにより発症したグレード3/4の有害事象としては下痢や大腸炎などの消化管障害が7.8%、感染症4.8%、皮膚・皮下組織障害4.8%、血管障害3.6%、高血糖を含む栄養代謝異常3.6%であった。

以上のように、本試験によりER陽性HER2陰性閉経後の早期乳がん患者に対するフェマーラ+tselisib併用療法は主要評価項目である客観的奏効率(ORR)を統計学的有意に上昇させることが証明された。”本結果はPI3Kα変異型に対して強い阻害活性を示すPI3キナーゼ阻害薬をホルモン療法に追加する意義を初めて証明した報告であるため、LORELEI試験以外の第Ⅲ相試験によるさらなる報告に期待する”とSibylle Loibl氏はコメントしている。


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