2017年6月2日から6日まで第53回米国臨床腫瘍学会(ASCO:アスコ)Annual Meeting(年次総会)が開催される。毎年、米国シカゴにて開催されるASCO年次総会は、毎回世界中から3万人以上のオンコロジストが集まる世界最大の「がんの学会」と言える。今年の年次総会のテーマは「Making a Difference in Cancer Care With You」となり、『ともにがんのケアを変革していく』という意である。
年次総会では2,150の演題が採択され、さらに2,890本以上の演題がオンライン発表として採択されており、多くは5月17日に公開された。更に、6つの重要な演題については、ASCOに先立ちプレスリリース公開されており、その1つとして「HPVの口腔感染に対して、HPVワクチンが口腔咽頭がんの予防への影響の研究結果」が掲載された。
口腔咽頭がんの原因となる経口HPV感染をHPVワクチンで予防できる。口腔咽頭がんの予防立証には更なる研究が必要
米国の男性におけるHPV(ヒトパピローマウイルス)陽性の口腔咽頭がんの発生率は、最近10年間で上昇している。しかしながら、口腔HPV感染に対するHPVワクチンの影響は、まだ有効性試験やサーベイランス研究で評価されていなかった。
今回、MDアンダーソンがんセンターのMaura L, Gilison氏らの研究チームは、米国人のHPV感染症に対する予防的HPVワクチン接種の影響を評価するために、2011~14年の国民健康栄養調査で、18~33歳の米国男女2,627名の横断研究を実施した。1回以上のワクチン接種が口腔HPV感染の有病率に対する影響を、ワクチン接種群とワクチン非接種群の間で評価した。2つの群間比較は、年齢、性別、および人種を調整したロジスティック回帰分析を用いて行った。
結果、26歳になるまでに18.3%がHPVワクチン接種を受けたと報告しており、女性の方が高かった(女性29.2%、男性6.9%、p<0.001)。
ワクチンで予防できる型(16/18/6/11型)のHPV感染率は、ワクチン接種群で0.11%に対してワクチン非接種群1.61%と、ワクチン接種群に有意に減少した(p=0.008)。その減少は約88.2%(95%CI = 5.7%~98.5%)に相当する。対照的に、ワクチンで予防できない型(33型)のHPV感染率は、ワクチン接種群・非接種群で同等であった(3.98%対4.74%、p=0.24)。
HPVワクチンの接種率を考慮すると、経口HPV(16/18/6/11型)感染に対するHPVワクチン接種の集団レベル有効性は、全体で17.0%、女性で25.0%、男性で6.9%であった。
HPVワクチン接種は、2011〜14年の米国の若年成人(18〜33歳)のワクチン型口腔HPV(16/18/6/11)の感染率を大幅に低下させたものの、ワクチンの接種率が低さから人口レベルの有効性は全体的には大きなものではなく、とくに男性では低かった。
Gilison氏は「(米国では)HPVワクチンは、子宮頸がん、外陰がん、膣がんおよび肛門がん(男性含む)の予防として適応されている。」、「HPVワクチンが、口腔HPV感染に関連する口腔がんの発症率の上昇を抑えることができるか不明ではある」および「HPVワクチンは、過去数十年でがん予防におけるもっとも重要な進歩の一つである」と述べている。
この結果は、米国臨床腫瘍学会学術集会(ASCO2017)で6月5日に発表される。
Impact of prophylactic human papillomavirus (HPV) vaccination on oral HPV infections among young adults in the U.S.(Abstract No:6003)
HPV Vaccination May Reduce Oral HPV Infections(ASCO NEWS RELEASE)
Rates of Oral HPV Infection Plummet After Vaccination(ASCO POST)
記事:加藤 テイジ & 可知 健太