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原発不明がんとの検査と診断

[公開日] 2018.04.20[最終更新日] 2018.04.20

原発不明がんの検査の流れ

原発不明がんと疑われた場合、原発巣の探索や治療の決定に重要なのが、組織診断(病理学的検査)と全身検索(病変分布)です。この2つを軸として、個々の原発不明がんがどのような性格か判断していきます。

組織診断(病理学的検査)

画像診断でがんが疑われても、実際にがんであるか否かは、組織を採取して顕微鏡で観察しなければ確定できません。また、免疫染色(がんの持つ特定のタンパク質を染め、そのパターンでがん種を判断する手法。後述します)等により原発巣が特定できないか精査します。これらを総合的に病理学的検査といい、以下を含みます。

• がんであることの確定診断
• 染色を行い、顕微鏡で観察することで、がんかどうかを診断すると共に、がん細胞やがんの集団の形・性質のタイプ(組織型)を判別する。
• 免疫染色(抗体を使用して、特定のタンパク質を染色する)によって、がんの種類を判別する。
• 染色体検査やFISH検査などによって、特定の染色体異常や転座型遺伝子変異などがないかを確認する。

原発不明がんの組織型

組織型の特定は、治療方針の決定において重要となります。例えば、上皮性原発不明がん(上皮細胞に認められた原発不明がん)の組織型は、以下のような割合で認められます。

・一番多いのは腺癌。腺癌とは、分泌腺の性格を持った細胞が異常増殖したもの。
・低分化癌・低分化腺癌は、非常に未熟な形をした癌・腺癌。
・低分化悪性腫瘍は、がん(悪性腫瘍)ではあるが、それ以上に診断がつかないもの。(肉腫なのか、悪性黒色種なのか、リンパ腫なのか、といったことまでは判別不能)
・扁平上皮癌や神経内分泌癌もわずかに見られる。

免疫染色

免疫染色とは、がんの表面に発現しているタンパク質(抗原)を、抗体を使って染めることによって可視化する手法です(抗原抗体反応を用いていることから、免疫染色と呼ばれます)。染まり方のパターンから、それがそもそもがん(悪性)なのか、転移がんか、原発巣はどこか、といったことを判別します。

がん細胞は、発生部位などがんの種類によって、表面等に発現しているタンパク質(抗原)が異なります。一方で、がんは、がん化してもなお元の組織のタンパク質(抗原)の多くを作り続けています。そこで、ある程度予想される抗体を使って免疫染色して可視化することで、原発巣を推定できるのです。

●原発巣の推定に有用な免疫染色の例:上皮性の腺癌の場合
(CK7とCK20、2つの抗体に対する陽性・陰性の組み合わせで判断)

●がんの種類(部位等)ごとに特徴的な抗原

全身検索(病変分布)

組織診断の後、改めて、原発巣が隠れていないか、どのように広がっているか(病変分布)を確認します。
・問診・身体診察
・血液検査
・胸部X線検査
・頸部、胸部、腹部の造影CT
・便潜血
・マンモグラフィ(女性)
・腫瘍マーカー
などが、原発不明がんの診療ガイドラインで特に推奨されています。

詳しくはコチラ

再検討の結果、原発巣が特定される場合もある

以下は、原発不明がん(CUP)疑いで国立がん研究センター中央病院に紹介された患者の検査結果です。2007年から2015年に850人が原発不明がん疑いで国立がん研究センター中央病院にかかり、病理学的検査や画像検査の再検討が行われました。その結果、組織診断までの段階で50人はがんではなく、また371人は原発巣が判明しました。

図:2017年10月13日開催「第10回希少がんMeet the Expert:原発不明がん」より

病期分類(ステージ分類)

原発不明がんの場合、病期分類(ステージ)は設定されていません。

一般的に、がんの広がりは病期(ステージ)で表され、病期(ステージ)は治療法を選ぶために用いられます。すなわち、がんが局所にとどまっている場合、手術や放射線療法といった局所療法を行います。所属リンパ節への転移がある場合は、局所療法と全身療法の組合せの治療を行います。局所を超えて広がっている場合(遠隔転移している場合)は、薬物療法といった全身療法を行います。

原発不明がんは、遠隔転移先で発見されたがんであるため、薬物療法を中心とした治療が行われます。

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