原発不明がんについて


  • [公開日]2018.04.20
  • [最終更新日]2019.08.02

原発不明がんとは

原発不明がんは、原発巣(がんが最初に発生した臓器)が特定できない転移がんです。

今日では、検査・診断技術の発達によって、病理医は多くの転移がんの原発巣を特定することができるようになっています。ところが、体内にがん細胞が認められるにもかかわらず、十分な精密検査に基づいて病理診断を行っても、原発巣が不明なものも出てきてしまうのです。

原発不明がんは、発見される臓器等やがんの形・性質のタイプ(組織型)が患者ごとに異なるため、症状や経過も人それぞれ、治療戦略も様々です。原発巣が特定されないため、医師にとっても治療方針などが立てづらいがんと言えます。

予想患者数は全がん患者の1%~5%、国内で原発不明がんと診断されている患者は約17,000人程度と言われています。

その他、過去の研究報告によると、死亡後の病理解剖でも原発巣が不明とされる患者が20%~50%存在しました1)。

1) Pavlidis N Briasoulis E, Hainsworth J, Greco FA. Diagnostic and therapeutic management of cancer of an unknown primary. Eur J Cancer. 2003 Sep;39(14):1990-2005.

原発不明がんの原因

原発巣の発がんに起因します。ただし、がんは、日々の生活の中で徐々に遺伝子が傷つき、その蓄積により発生するものなので、一部を除き親から子への遺伝は少ないとされています。

原発巣が特定されない原因

原発巣が特定されない原因として、様々なパターンが考えられます。

• 原発巣が診察や画像検査で見つけにくい部位に存在する。
• 転移が多く、原発巣が埋もれている。
• 原発巣が診察や画像検査で見つけられないくらい極めて小さいうちから転移をきたした。
• 原発巣が自然退縮し、転移部位だけが残った。
※精巣原発胚細胞腫瘍や腎細胞がんなどでは、自然退縮が知られている。
• がんの発生素地が臓器以外に存在する。
※胎生期(胎児の期間)の遺残組織や異所性組織からがんが発生することがある。

原発不明がんの症状

原発不明がんの症状は、病変部位(がんが認められる転移先の臓器等)に依存することが多いため、共通する特徴的な症状はありません。症状がまったくなく、健康診断などの画像検査で見つかることもあります。

――――――――原発不明がんの症状例――――――――
• 身体にしこりができる。
• 身体の特定の部分に痛みが続く。
• (肺や胸膜への転移)咳が止まらない。声がかれる。
• (腹部への転移)腹が腫れる。便や尿の出方に変化。
• 全身の慢性炎症による諸症状(原因不明の体重減少、
食欲不振、倦怠感、発熱等)         など

原発不明がんの予後

原発不明がんは、疾患の特徴として、
・予測不能な転移の仕方をすることがある
(⇔多くのがんでは、所属リンパ節をはじめとした特有の転移が見られる)
・早期に広がり、進行の速いがんが多い
・早期から播種を起こす
などの点から、一般的に予後不良と言われ、全生存期間中央値(MST)は6~12か月とされています1)。

しかしながら、一部の予後良好群では、特定の治療に反応し、治癒(完治)や長期生存が認められることがあります2)。

また、PET検査を始めとする画像診断の進歩、免疫組織染色や遺伝子発現プロファイルを用いての原発巣探索といった技術進歩に伴い、原発不明がんは減少傾向に転じていると言えます。

1) Pavlidis N, Briasoulis E, Hainsworth J, Greco FA. Diagnostic and therapeutic management of cancer of an unknown primary. Eur J Cancer. 2003 Sep;39(14):1990-2005.

2) Pavlidis N, Pentheroudakis G. Cancer of unknown primary site. Lancet 2012 ; 379 : 1428.

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