患者団体に聞く! グループ・ネクサス・ジャパン/全国がん患者団体連合会理事長 天野 慎介さんがん患者団体をよりよくするために -がん患者だけじゃない 共に活動を-


  • [公開日]2023.12.22
  • [最終更新日]2023.12.22

はじめに

今回は、この「患者団体に聞く!」というテーマとして欠かすことのできない方である、全国がん患者団体連合会(以下全がん連)の理事長である天野さんに、悪性リンパ腫の患者団体「グループ・ネクサス・ジャパン」の代表のお立場からのお話も含めて、お伺いしました。

自身のがん体験をきっかけに始まった患者団体での活動

濱崎:天野さんは、診断時の出来事については色々なところでお話になられているかと思いますので、今回は診断から患者団体の活動に携わろうと思ったきっかけを中心にお話をお聞きしたいと思っています。
まず、診断当時のことをお願いします。

天野:まず、私は27歳で悪性リンパ腫と診断受けましたが、その当時はまだがん対策基本法が成立する前のことで国のがん対策はまだ十分ではなかった時代です。今ではAYA(Adolescent and Young Adult思春期・若年成人の意)世代のがんや悪性リンパ腫などの希少がんの対策が進んできていますが、今思えば診断当時は本当に孤独でした。病棟には同世代の方や同じ悪性リンパ腫の方もあまりいませんでした。
次に、患者団体の活動に携わろうと思ったきっかけは大きく二つあると思っています。

濱崎:一つ目はどのようなことですか。

天野:医療情報に関する情報格差があることを強く感じたことです。
高齢の方で2年近く闘病をされている方が同じ病室にいたのですが、その方が最近医師からもらったという資料を見させてもらうと、それがネットで調べたら10秒で出てくるような情報だったことがあり、愕然としました。当時は、このようなことが何度かあったのです。

濱崎:二つ目についてはいかがでしょうか。

天野:辛い話なのですが、生きることを願いながら亡くなっていった方を何人も見てきました。私も再発を繰り返し、当時は5年生存率が10~20%程度といわれていましたが、たまたま治療が奏功して、生きることができました。そのような中で、自分に何かできることがあるのではないのか、という思いが芽生えました。
少ないながら同世代の患者さんもいました。幼いお子さんがいるお母さんで、白血病に罹られていました。白血病を治して、お子さんに早く会わなければという思いで治療を頑張っておられました。その方がいるだけで病棟が明るくなるような、そんな雰囲気の方でした。でもあっけなく亡くなってしまったんです。なんで、こんな若い同世代の、幼いお子さんもいるような方が、すぐに亡くなってしまうのか……。神様なんているのか?と思いました。

濱崎:それはとても辛いですね。このようなご経験、お気持ちが患者団体活動へのきっかけにつながったのですね。

天野:はい。このような気持ちから、ずっと何かをしようと思っていたところ、悪性リンパ腫の患者団体を立ち上げるという設立総会に招待いただきました。縁もゆかりもない人たちではあるけれど、同じ病気の人たちが生きていて自分の目の前に沢山いるということにすごく励まされました。そこで患者団体の活動に興味を持ち、運営に関わるようになりました。

濱崎:患者団体に呼ばれたきっかけは何だったのですか?

天野:当時、自分はもう先は長くはないだろうという思いからインターネットでホームページを作成し体験記を書いており、そこで繋がった方から紹介していただきました。なので、最初から患者団体での活動をしようと考えたわけでなく、参加してみて初めて興味をもちました。


20代の頃の天野さん

悪性リンパ腫の患者会「グループ・ネクサス・ジャパン」の活動について

濱崎:そのようなきっかけから患者会活動に参入されて、天野さんは現在、ネクサスの理事長でいらっしゃいます。
ネクサスでは、「普及啓発事業」、「相談支援事業」、「調査研究事業」、「政策提言事業」の4つの事業を掲げていらっしゃいますよね。
ご活動についてお伺いしたいのですが、まず普及啓発事業についてお願いします。

天野:悪性リンパ腫に関する医療の情報や支援に関する情報を患者さんやご家族へ届ける目的で行っています。
活動をしようと思ったきっかけである情報格差が関係していますが、患者団体を開設した2001年当時は、特にネットにアクセスができない中高年の方の情報格差がひどすぎました。そこで、そのような方にも情報が届くように紙媒体の会報誌を作成し、病院などに置いてもらうといった活動を行っていました。これが最初の活動です。
また、全国各地で血液内科の先生の協力をいただきつつ、講演会の開催もしています。最近では、コロナの影響で講演会の開催ができなくなったことをきっかけに、動画での情報提供に力を入れています。ネクサスチャンネルというYouTubeのチャンネルから、情報を届けるようにしています。
▶ネクサスチャンネルはこちらから
ネクサスチャンネル

濱崎:次に、相談支援事業では、どのような活動をされているのか、お話をお伺いできればと思います。

天野:最初は電話相談からスタートして、とにかく一人でも多くの患者さんの話を聞くべきだ!と24時間体制で相談を受けていました。でもそれだとなかなか大変なこともありました。患者さんは夜の時間帯になると不安な気持ちを抱かれる場合が多く、夜中の2時、3時にかけてくる人がいたり、中には、うつ状態の方や自殺企図がある方からお電話があったこともあります。当時の電話対応の仕方について、未熟な部分がいろいろあったと思っています。
ただ、電話相談はとても大切な活動であると思っており、今でも私も相談対応を行っています。

濱崎:今でも天野さん自ら相談対応されているのですね。相談内容はどのようなものが多いですか。

天野:周りに同じ疾患の患者さんがいなくて話を聞きたいという方が多いですね。あとは、主治医とのコミュニケーションに問題を抱えていたり、十分な情報を貰えていないことに悩んでいる方も多いです。
しかし、相談対応をする我々は医師ではないので、相談対応では一般的な情報の提供やピアサポートの側面が強いです。

濱崎:相談対応の体制はどのようにされていますか?

天野:現在は週3日の火、木、土を相談対応日とし、二人で対応をしています。予約サイトを活用するなど工夫をしていますが、相談希望者が上回っており、受けきれていないというのが現状です。他にも、電話だけでなく、ZOOMを使用した相談対応をしていたり、患者支援の観点でいえば、各支部で患者さんが参加できる交流会などを開催したりもしています。

濱崎:メール対応などはしていますか?

天野:メールで書いてあるものと電話で話していると違ってくることがよくあるので、できるだけお電話またはZOOMでお話をお伺いするようにしています。簡単な質問ならよいのですが、それ以外ではやっぱりお話を伺わないと本当の問題がわからないケースが多いですね。

濱崎:相談対応をされているスタッフの方に謝礼等をお渡しできていますか?

天野:一部の方にはお支払いできるようにはなっているものの、ボランティアの方には、まだまだボランティアベースでやっていただかなければならない状況です。運営の課題であると感じています。


ネクサス交流会でのお写真

濱崎:続いて、調査研究事業についてお話をお願いします。

天野:大学や研究機関、企業から悪性リンパ腫の患者さん、あるいはがん患者さんについての実態調査をしたいといったオファーが時々ありまして。調査に参加する方の募集の協力をしたり、共同研究者として意見させていただいたりしています。

濱崎:最近ではPPI(Patient and Public Involvement:患者・市民参画)の重要性なども言われてきていますが、調査以外にも依頼はありますか?

天野:ありますね。製薬企業からでしたら、患者向けの冊子作製やHP作成において、患者団体からの意見を聞きたいという依頼があります。また、研究グループからは臨床研究への意見が最初の段階から欲しいという依頼や、ガイドラインの作成において関わってほしいという依頼もあります。

濱崎:このような依頼が増えている印象はありますか?

天野:研究グループからは、もともと一定数の依頼が来ていましたが、企業からの依頼は増えてきている印象です。がん患者さんの声をもっと聞きたいという、製薬企業でもPPIが浸透していっているという感触です

濱崎:最後に、政策提言事業についてのお話をお願いします。

天野:まず、リンパ腫に関していうと、必要性の高い未承認薬について早期承認をしていただくよう、厚生労働省へ要望書を提出する活動を定期的に行っています。また、国のがん対策をよりよくするための政策提言活動はネクサスの代表の立場としてやってきましたし、全がん連の活動に関わってからはその立場からも行っています。

濱崎:このような活動をしようと思ったきっかけはなんだったのですか。

天野:我々のような血液がんの患者はお薬による治療になるので、使用できるお薬があるかどうかが重要になります。設立当時は、未承認薬使用問題といわれていた、いわゆるドラックラグの問題があり、早期に使用できるように声を上げていくことが必要であると感じました。このような患者の活動が国のがん対策を推し進めるきっかけにもなったと思っており、とても大事な活動であったと思っています。

濱崎:そう考えると患者団体の活動はとても重要なことですね。

天野:そうですね。ただ、このように、患者からお薬についての要望を出すにあたっては注意しないといけないこともあると思っています。それは「要望を出したいと考えているその治療法に、推奨するだけのエビデンスがあるのかどうか」ということです。我々は、研究で有用性が認められている治療であるかどうかや、複数の専門の医師の意見を参考にするなど、しっかりと裏取りを行ったうえで、活動をするようにしています。


衆議院厚生労働委員長三ッ林裕巳先生への要望書手交

なぜ日本の患者団体が苦労しながら活動を行っているのか

濱崎:さて、ここからは全国がん患者団体連合会の天野さんの立場としてお答えいただきたいと思います。天野さんは患者団体の運営についてどのようなご意見をお持ちですか。

天野:私自身の経験からも、同じ疾患の人が集い情報交換をすること、これが患者団体活動の原点だと思います。そのため、自然とボランティアベースでの活動でスタートすることになります。そのような活動を続けていくうちに参加者が増え、ニーズも増えていくことで、交流の場や情報交換だけでなく、政策提言活動のような声を上げていく活動も考えるようになっていくわけです。そうすると会の規模が大きくなり、運営スタッフを増やしたり、お金も準備する必要が出てくるようになるのですが、これまでと変わらずにボランティアベースで続けている団体が多いのが実情かと思います。資金調達ができればよいのですが、なかなかうまくはいきません。そのような状況の中で患者団体をボランティアベースで3年以上継続できている方は、ある意味「変態」だと思っています。私もその「変態」の一人かもしれません。普通の人だったらボランティアベースで長年やり続けることはできないですし……。一方で、そういう方たちの支えで日本の患者団体は成り立っていると思います。ただ、そのような奇特な方はなかなかいませんし、体調も安定していないと続けられないので、属人的になりやすい側面があります。

濱崎:日本だとなかなか厳しいところがありますよね。海外の患者団体については何かご存じですか?

天野:2010年頃にアメリカ国務省のプログラムで、日本の何人かの患者団体の代表とともにアメリカ各地の患者団体の活動の見学をさせていただく機会があったのですが、日本とは全くの別世界でした。まず驚いたのは、患者団体の運営団体の代表はがん患者だけではなく、非営利団体活動のプロフェッショナルのような方がやっており、ポジションとして政府組織や国連の国際機関のキャリアに組み込まれているという別次元な光景でした。予算規模も日本とは全く異なるのでこれはちょっと参考にはできないと思い、地域のコミュニティーに属する小さな患者団体の活動を見学できるように国務省にお願いをして代表の方とお会いしたのですが、「私たちのような小さな患者団体を見ても何の参考にもなりませんよ」と言われつつ話を聞いてみると、年間の予算規模が約100万ドルとのことで、やっていることもクオリティーの高いがん患者向け冊子をいくつも作成し、地域住民に無料で行き届くような活動をしている……。

濱崎:そのお金は一体どうやって集めているのでしょうか?

天野:寄付ですね。そこはやはり日本と海外での文化の違いがあり、日本には寄付の文化が十分に根付いていないので資金面で問題になりやすいです。

濱崎:資金があればスタッフを雇用や外注業者に依頼することで作業の負担を減らすことができますし、やりたいことがもっとできるようになりますよね。

天野:結局のところ日本で患者団体を運営されている方が苦労していることの原因はこういうことだと思います。でも、私は寄付文化が十分に無いからといってあきらめたくはないですし、改善していけることはあると思っています。ただ、すでに地域で熱心に手弁当で頑張られてきた方々に対して「寄付集めを頑張ってみてはどうか」「ファンドレイジングを学ぶのはどうか」というのも上から目線過ぎてしまうし、そんな暇はないという状態です。難しい問題であると思います。せめて他の患者団体が発足するときに、自分たちみたいな苦労をせずにできたらという想いで全がん連を立ち上げ活動をしています。

よりよい患者団体活動のために必要なことは何か

濱崎:厳しい状況ではありますが、今後患者団体の活動がよりよく運営できるようになるために必要なことはどのようなことでしょうか。

天野:二つあると思っています。
一つは先ほども少しお話に出した寄付文化です。海外では、寄付することで節税になる仕組みになっていて寄付がしやすい環境になっている。ただし、そのようにできている要因として、患者団体が日本でいうところのがん相談支援センターのような、重要な医療や支援の担い手として機能しているという点があります。そのような面が無いと税制面での措置は実現が難しいだろうと思っています。
二つ目は活動のIT化です。例えば、昔だとリアルの場で顔を向き合わせて実施していたが、今はZOOMのような機能を使うことで場所を指定せずに交流の場を設けることができます。また、講演会の開催や動画の作成なども同様に行うことができます。そうすることで、手間やお金をかけずに会の運営ができるようになってきました。
実際に、インターネットでの活動を中心とした新しい形式の患者団体が立ち上がり、1万人規模の会員がいらっしゃる患者団体も出てきています。また、NPO法人ではなく株式会社の形式をとるような団体もでてきました。このように新しい形式で多様な人たちが入ってくることができるようになったのは、患者団体の活動の可能性が広がると思っています。IT技術の進歩によって様々なITツールが使えるようになりました。これからはがんの患者やその家族だけでやっていくのではなく、医療者や企業の方など色々な方とつながり、一緒になって活動をやっていくことが今の患者団体に必要なことではないかと思っています。

濱崎:オンコロでもぜひ協力をしたいと思っています。ただ、少し気になるのが、患者団体の方の中には、従来とは違う新しいやり方や、がん罹患者ではない方が活動に参加することに抵抗感がある方もいるのではないかと思うのですが、そのあたりはいかがでしょうか。

天野:これはとても難しい話ですね。当事者であるがんの患者さんにしかわからない感覚や想いがあるので、それをわからないがんではない方の活動の中にはがんの患者さんへの配慮に欠けるような活動もあって、がんの患者さんが傷つくような思いをしてしまうことがあります。
私もがん患者ですし、そのように思われる当事者の気持ちはよくわかります。なので、当事者の声は尊重されるべきであると思っています。
ですが、このような求める配慮が行き過ぎてしまうと、一般の方や医療者がどう思われるかというと、リスク回避のために、がんの患者さんには関わらないほうが良いのでは、という考えになってしまいかねません。
なので、あまり言いすぎてしまうと外部からの協力者を得られなくなってしまうよ、と言いたい気持ちもあります。患者団体の活動のアウトカムは何なのかを考えることが大切と思うのですが、それは声を上げることやPPIとして参画することではなく、医療や支援がよりよくなることであるはずで、アウトカムを意識してどうするべきかを考えることが必要だと思います。

患者団体の活動をもっと知ってほしい

濱崎:それでは最後にこの記事をご覧になっている患者さんやご家族へメッセージをお願いします。

天野:まず、患者団体というのは人と人とのつながりだと思っています。なので、その患者団体との相性によって当然、合う合わないがあると思いますので、参加してみて活用できそうだなと感じたらぜひ利用してほしいと思っています。そして、これはがん相談の電話を受けているときに耳にタコができるくらい聞く言葉なのですが、「もっと早くこの患者会を知りたかった」という声が、本当に多いです。すでに治療を受けることができない状況になってしまった方や、周りに頼れる人がいなくてずっと一人で悩んでいた方などが多いのです。
だから、患者団体という頼れる場所があることを早い段階で知ってほしいです。

濱崎:続けて社会に対してメッセージをお願いします。

天野:医療の進歩によってがんになっても長期生存ができる時代になってきました。それにより医療以外にも支援が必要なことが増えてきており、その部分の支援において患者団体が果たす役割は決して小さくはないと思っています。また、患者団体の活動はがん患者だけでやるものではないと思っています。がんは日本人の2人に1人がなる国民病ともいえるものですし、もっと多くの方に関心を持っていただき、患者団体の活動にも目を向けていただきたいです。願わくば、多様なステークホルダーの方々に関わっていただき、一緒になってやっていきたいです。どうかご協力をお願いいたします。

濱崎:天野さんどうもありがとうございました。

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