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患者団体に聞く! NPO法人脳腫瘍ネットワーク(JBTA)理事 山口 秀司 さん

[公開日] 2024.03.29[最終更新日] 2024.10.11

目次

はじめに

今回は、この「患者団体に聞く!」というテーマの中で「患者力」の向上とその取り組みに力を入れて活動をされているNPO法人脳腫瘍ネットワーク(以下JBTA)の理事の山口さんにお話しを伺いました。

JBTAとは?

金川: JBTAについてお伺いしたいのですが、まず最初にJBTAはいつ設立されたのか教えてください。

山口:JBTAの会の設立は2006年4月で、もうすぐで18年目になりますね。活動は全国規模ですが、NPO法人としての拠点は神奈川県横浜市に置いております。また、現在は約150名の方がJBTAの会員となっています。

金川:かなり長く活動を継続されているのですね。具体的な会の活動内容も是非教えてください。

山口:2018年頃までは、国立がん研究センター中央病院内で会員さんを集めて座談会形式での交流会を実施していました。現在はオンライン中心で、おおむね月に1回の開催となっています。オンライン中心での実施により、自宅から参加できるようになったので、会員さんの抱える障害の有無や、お住まいの地域に関わらず交流会に参加しやすい形になりました。

がんの情報共有からイベントも行う交流会

金川:オンラインでの開催となって交流会に参加できる方も増えたのですね。交流会では具体的にどのようなことをされているのですか?

山口:日常生活での困り事を相談したり、同じような立場の人に悩みを打ち明けられる場として交流会を開催しています。
また、セミナーや勉強会では、治験参加についての勉強会や脳腫瘍の診断や治療に関するセミナーなども実施してきました。
最近では脳腫瘍学会の学術集会へ参加し、その内容についての報告会をJBTA内で実施しています。またJBTAからの最新の情報発信には、国際脳腫瘍ネットワーク(IBTA)が毎月出しているニュースレターの日本語翻訳の実施などを行っています。

金川:会員さん向けに様々な活動されているのですね。その他にされている活動を教えてください。

山口:趣味の活動のようなお話にはなりますが、コロナ前では夏頃に千葉県でバーベキュー大会を開催したことがあります。ですが、コロナ以降このような集まりはできていませんね。
他には、脳腫瘍についての啓発活動なども行っています。現在、日本脳腫瘍学会内に支持療法に関する委員会が立ち上がっており、そこでは治療内容や治療法の話ではなく、患者さんのQOLの維持や後遺症などについて検討する活動が実施されています。
その活動にJBTAのメンバー2名が参加して、患者としての声を学会に伝えています。具体的には脳腫瘍患者や家族、介護者のニーズやサポートについてアンケート調査を実施しています。
2023年7月に行われた脳腫瘍支持療法研究会では、この調査の中間結果報告を行いました。

※腫瘍支持療法研究会 に関する情報はこちらから

「患者力」をあげることを大切にしながら寄り添える活動

金川:具体的にご説明ありがとうございます。今後の会の活動についてはどのように検討されていますか?

山口:JBTAの会員の中から、希少がんである脳腫瘍という病気そのものをより多くの一般の方に知ってもらいたいという意見が出ています。そのため、JBTAを通してそのような機会をつくることはできないかと模索している状況です。患者および患者家族からそのような動きが出てきていることは、理事の私としても嬉しく思います。

金川:会員の方から脳腫瘍の啓発活動をしたいというお声が上がるのは本当にうれしいことですね。


金川:JBTAの運営にあたって、どのようなことを工夫されていますか?

山口:患者会の中で情報発信をするにあたり「患者力を上げる」ということが大切であると思い、その言葉をしっかり患者会に参加されている人に伝えることを意識しています。
「患者力を上げる」上で必要なことは、とにかく主治医の先生と向き合う時間を大切にすることです。そのためには患者自身も勉強して、わからないことはしっかりわからないと伝えるなど、疑問を持つことと、それをしっかり主治医に聞くことが大切だと考えます。セカンドオピニオンの際も同様であると考えます。

金川:「患者力」良い言葉ですね。確かにがん治療を進めて行くうえで非常に大切なことですね。山口さんご自身もがん罹患経験者ですが、どのように患者力を上げられましたか?

山口:私自身としては、妻の存在が大きくて、医師より余命宣告をされた際に、妻がありとあらゆる事を調べてくれたことが大きな支えになりました。ある意味でこのような話は就職活動の面接を何度も行うことでスキルが身につくのと同じように、沢山の先生と話す機会があることでこのような「患者力」が育つと考えられます。
これについては、医師も患者も人間なので、話しやすい先生やそうでない先生などもいるかと思います。そのような実体験を基に、JBTAに参加される患者さんに伝えています。それは「思い」ではなく「想い」として伝えている努力をしています。そういった意味で「患者力」は非常に大切だと思っています。

金川:とても大切な想いをご共有いただきありがとうございます。JBTAの活動のうえで他に大切にされている思いなどもぜひ教えてください。

山口:患者力という言葉を全面に出しましたが、患者個々人の状況によって違う場面もあります。今は身体も気持ちもしんどい状況だから、寄り添って欲しいという方もおられます。そのような方々に少しでも寄り添い、共感していける会でもありたいとも思っています。

患者団体を運営するうえで

金川:JBTAを運営してく中で難しいと感じることは何かありますか?

山口:JBTAに参加している会員だけではなく、理事の中においても、患者や患者家族、患者遺族であるなど、立場や環境が異なります。全国規模で活動をしているので、異なる立場や環境によってそれぞれの悩みが皆違うことが難しさにつながると感じています。

金川:会員や理事の立場で様々な方がJBTAに関わる中での難しさもありますね。運営に対してどのようなサポートが必要と感じていらっしゃいますか?

山口:同じ脳腫瘍患者・家族の中でも個人個人の悩みが異なるので、それぞれの悩みを共有しやすいコミュニティが必要との意見もあります。その解決方法として、ZOOMの機能を用いて個別の悩みを解決する場所が欲しいという意見が出ています。今は実現に向けてどのように進めるかということを検討している状況です。
また、JBTAのみならず他の患者会の活動でどのような活動をどういった方法で実施しているのか、互いの患者会の情報交換ができれば良いと考えています。

金川:さまざまな患者会の活動の中で皆さんが患者会の垣根をこえてつながっていけると確かによいですね。JBTAの理事として活動に尽力されているそんな山口さんですが、どのようなことをきっかけにJBTAに参加されたのですか?

山口:実は参加したきっかけにはオンコロが関係しているんです。以前、国立がん研究センター中央病院で実施されたオンコロのイベントに参加した際に、たまたま近くに現在の理事が座っており、JBTAの参加につながることになりました。

金川:そういった偶然があったんですね。その出会いのきっかけにオンコロが関わっていたと聞くと嬉しく思います。

心の拠り所となれるようなカフェ

金川:JBTA理事の山口さんではなく、山口さん個人としてはがん領域においてどのような目標をお持ちになれられているのか、ぜひ教えていただけると嬉しいです。

山口:私個人の話になりますが、奈良県宇陀市という日本書記に登場します薬猟りの地で『農縁caféピア』というカフェをオープンしました。
脳腫瘍サバイバーである自身の体験もベースに、このスペースに集い、語り合い、つらい気持ち等を吐き出せる、そして明日への一歩を踏み出す気持ちになって帰って頂く来店下さった方々の『心の拠り所』の一つになればいいなという想いで進めています。
私事になりましたが、この脳腫瘍ネットワークという患者会に集うことで、1人1人の心の拠り所になって、次の一歩を踏み出すきっかけとなってくれれば、こんな嬉しいことはありません。

みんなで協力しサポートしあいたい

金川:よろしければ最後に一言お願いいたします。

山口:全国には数々のサポートをしている患者会があると思いますが、協力し合える体制を構築しつつ、患者会に参加しにくいと思っている人にもしっかり届くような活動を実施していきたいです。オンコロさんにもそのサポートをしていただけると嬉しく思います。

金川:ありがとうございます。オンコロも皆さんと協力して、是非、皆さんの「患者力」向上に貢献出来る様に努めて参ります。

NPO法人 脳腫瘍ネットワーク
https://www.jbta.org/index.html


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