目次
はじめに
今回は、2024年7月に公開したピアリング上田さんのインタビュー記事でもご紹介したピアリングの姉妹サイトであるピアリング・ブルーの佐々木さんにお話を伺います。 ※ピアリング上田さんの記事はこちら佐々木さんのがん体験について
濱崎:まず初めに佐々木さんのがん体験について教えてください。 佐々木:がんが見つかったのは会社での健康診断がきっかけでした。 自覚症状などはなかったのですが、便潜血があり要精密検査との結果だったので、クリニックで検査をしたところ、肛門の近くに腫瘍のようなものがあるといわれました。クリニックでは切除ができないということで大きな病院を紹介され、結果、ステージ1の大腸がんであることがわかりました。 濱崎:がんが見つかったのは何年前のことですか。 佐々木:2018年です。46歳のときでした。 当時、中学1年生と高校1年生の息子がおり、夏休みも近いし入院している間どうしようなどと悩んでいたのを覚えています。 調べたところ、私の診断されたステージ1だと、5年生存率も高いし、すぐ治るだろうと思っていました。 しかし、1年もたたないうちに左の肺に転移が見つかってしまいました。幸いなことに、それは切除することができたのですが、その後の術後補助化学療法を7クールやった際の副作用がとてもつらかったです。 その後、右の肺、また左の肺と転移が見つかったのですが、これらも1か所に限局した転移だったので、それぞれ切除することができました。 この時は3か月ごとのフォローアップでCTを撮影し、転移を早期に発見して切除するという感じでしたし、体調も良かったように思います。 濱崎:手術の後遺症などはありませんでしたか? 佐々木:自分で排便のコントロールができず、ひどい排便障害に悩まされることになりました。 直腸を切除したことで便を一時的にためておくことができないため、便意がきたらすぐにトイレに行かないと間に合わないですし、頻度も1日に30~40回あるという日々を過ごしました。 濱崎:それは大変だったでしょうね。 佐々木:決断に少し時間がかかりましたが、永久人工肛門(ストーマ)にすることにしました。2021年のことです。オストメイトになり障害者手帳もいただいています。 オストメイトになることに抵抗感を持つ方もいると思いますが、私の場合は、オストメイトじゃなかった頃の排便障害の大変さを考えると、自分の生活を取り戻すことができたため、とても幸せだと感じました。 ストーマに「いちごちゃん」と名付けてかわいがっていたほどです(笑)。名前は、私が1月5日生まれなのですが、偶然にもその日に手術をすることになったので、『いちご(1、5)』にしました。同じ誕生日です(笑)。 濱崎:オストメイトにしてよかったという話は貴重な体験談ですね。 佐々木:ただ、最近のことなのですが、2024年の4月に2度目の局所再発の手術をしたのですが…。術後の合併症で排尿障害が出現してしまいました。 手術によって膀胱が傷ついてしまい、3年前に受けた骨盤内放射線治療の晩期障害で組織がもろくなっていたこともあり、膀胱に穴が開いてしまいました。常時激しい尿漏れでおむつとパッドを使用しています。尿漏れは、起きていても寝ていても四六時中起き続けます。そのような生活がもう3か月以上続いています。 これまでにもいろいろなトラブルはありましたが、今回のことは対処することがとても難しく、今までで一番つらい状況です。 QOL(生活の質)というものがどれほど重要なことであるかを本当に実感しています。命は助かってもそのあとも人生は続くのです。 濱崎:QOLの維持、向上は本当に大切なテーマであると思います。このような中で、明るく元気に受け答えをしてくださる佐々木さんに頭が上がりません。ピアリングの活動を開始したきっかけについて
濱崎:ピアリング・ブルーを始めたきっかけについて教えてください。 佐々木:診断当時、大腸がんの知識はゼロに近い状態で、そこから自身で大腸がんについて学んでいました。情報を集めていく中で、患者会も探し、オストメイトの会は見つけることができて、そこには大変助けられたものの、「大腸がんの患者会」について見つけることはできませんでした。 そのような中で、YouTubeで子宮体がんの患者さんが自身のがんについて語っているのを見つけました。その動画に出会ったことがきっかけで、「YouTubeで体験談を話してもいいんだ」ということに気づきました。 そして、私も自身の体験を発信してみようと思い、YouTubeでの活動を開始することにしました。この活動によって仲間と繋がれるのではという思惑もありました。 濱崎:そこからカロリーナさんとしての活動がスタートしたのですね。 ※カロリーナさんのYouTubeチャンネルはこちら https://www.youtube.com/@calorin/featured 佐々木:そうです。その当時の悩みであった「排便障害がつらい」という動画を出したところ、同じような経験をした方々から、たくさんのコメントをいただき、大きな反響がありました。 そして、やっぱり同じようなことで悩んでいる仲間がたくさんいるんだ、ということを実感しつつ、このような情報を求めていたり意見交換のできる場所を必要としている方がいるんだ、ということを改めて感じました。 その後、チャンネル登録数も増えていき、患者同士が交流できるコミュニティも作りたいという気持ちもさらに強くなっていきました。そのようなことを考えているなかで、ピアリングの上田さんと出会いました。上田さんに相談をしたところ、「大腸がんでも要望はある」ということで、コミュニティの開設にむけて話が進んでいきました。 開設にあたり、がんを専門にしている先生のアドバイスや、クラウドファンディングなど、たくさんの方のご協力とご支援をいただきました。そして、2023年の4月に「ピアリング・ブルー」はスタートしました。 コミュニティの名前は、大腸がんや胃がん、食道がんの啓発カラーである「ブルー」にちなんで、「ピアリング・ブルー」としました。
(ピアリング・ブルー サイト画面キャプチャ)
濱崎:罹患数の多い大腸がんのコミュニティは多くの人が待ち望んでいたものではないかと思います。