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患者団体に聞く!ピアリング・ブルー 代表 佐々木 香織 さん

[公開日] 2024.08.02[最終更新日] 2024.10.11

目次

はじめに

今回は、2024年7月に公開したピアリング上田さんのインタビュー記事でもご紹介したピアリングの姉妹サイトであるピアリング・ブルーの佐々木さんにお話を伺います。 ※ピアリング上田さんの記事はこちら

佐々木さんのがん体験について

濱崎:まず初めに佐々木さんのがん体験について教えてください。 佐々木:がんが見つかったのは会社での健康診断がきっかけでした。 自覚症状などはなかったのですが、便潜血があり要精密検査との結果だったので、クリニックで検査をしたところ、肛門の近くに腫瘍のようなものがあるといわれました。クリニックでは切除ができないということで大きな病院を紹介され、結果、ステージ1の大腸がんであることがわかりました。 濱崎:がんが見つかったのは何年前のことですか。 佐々木:2018年です。46歳のときでした。 当時、中学1年生と高校1年生の息子がおり、夏休みも近いし入院している間どうしようなどと悩んでいたのを覚えています。 調べたところ、私の診断されたステージ1だと、5年生存率も高いし、すぐ治るだろうと思っていました。 しかし、1年もたたないうちに左の肺に転移が見つかってしまいました。幸いなことに、それは切除することができたのですが、その後の術後補助化学療法を7クールやった際の副作用がとてもつらかったです。 その後、右の肺、また左の肺と転移が見つかったのですが、これらも1か所に限局した転移だったので、それぞれ切除することができました。 この時は3か月ごとのフォローアップでCTを撮影し、転移を早期に発見して切除するという感じでしたし、体調も良かったように思います。 濱崎:手術の後遺症などはありませんでしたか? 佐々木:自分で排便のコントロールができず、ひどい排便障害に悩まされることになりました。 直腸を切除したことで便を一時的にためておくことができないため、便意がきたらすぐにトイレに行かないと間に合わないですし、頻度も1日に30~40回あるという日々を過ごしました。 濱崎:それは大変だったでしょうね。 佐々木:決断に少し時間がかかりましたが、永久人工肛門(ストーマ)にすることにしました。2021年のことです。オストメイトになり障害者手帳もいただいています。 オストメイトになることに抵抗感を持つ方もいると思いますが、私の場合は、オストメイトじゃなかった頃の排便障害の大変さを考えると、自分の生活を取り戻すことができたため、とても幸せだと感じました。 ストーマに「いちごちゃん」と名付けてかわいがっていたほどです(笑)。名前は、私が1月5日生まれなのですが、偶然にもその日に手術をすることになったので、『いちご(1、5)』にしました。同じ誕生日です(笑)。 濱崎:オストメイトにしてよかったという話は貴重な体験談ですね。 佐々木:ただ、最近のことなのですが、2024年の4月に2度目の局所再発の手術をしたのですが…。術後の合併症で排尿障害が出現してしまいました。 手術によって膀胱が傷ついてしまい、3年前に受けた骨盤内放射線治療の晩期障害で組織がもろくなっていたこともあり、膀胱に穴が開いてしまいました。常時激しい尿漏れでおむつとパッドを使用しています。尿漏れは、起きていても寝ていても四六時中起き続けます。そのような生活がもう3か月以上続いています。 これまでにもいろいろなトラブルはありましたが、今回のことは対処することがとても難しく、今までで一番つらい状況です。 QOL(生活の質)というものがどれほど重要なことであるかを本当に実感しています。命は助かってもそのあとも人生は続くのです。 濱崎:QOLの維持、向上は本当に大切なテーマであると思います。このような中で、明るく元気に受け答えをしてくださる佐々木さんに頭が上がりません。

ピアリングの活動を開始したきっかけについて

濱崎:ピアリング・ブルーを始めたきっかけについて教えてください。 佐々木:診断当時、大腸がんの知識はゼロに近い状態で、そこから自身で大腸がんについて学んでいました。情報を集めていく中で、患者会も探し、オストメイトの会は見つけることができて、そこには大変助けられたものの、「大腸がんの患者会」について見つけることはできませんでした。 そのような中で、YouTubeで子宮体がんの患者さんが自身のがんについて語っているのを見つけました。その動画に出会ったことがきっかけで、「YouTubeで体験談を話してもいいんだ」ということに気づきました。 そして、私も自身の体験を発信してみようと思い、YouTubeでの活動を開始することにしました。この活動によって仲間と繋がれるのではという思惑もありました。 濱崎:そこからカロリーナさんとしての活動がスタートしたのですね。 ※カロリーナさんのYouTubeチャンネルはこちら https://www.youtube.com/@calorin/featured 佐々木:そうです。その当時の悩みであった「排便障害がつらい」という動画を出したところ、同じような経験をした方々から、たくさんのコメントをいただき、大きな反響がありました。 そして、やっぱり同じようなことで悩んでいる仲間がたくさんいるんだ、ということを実感しつつ、このような情報を求めていたり意見交換のできる場所を必要としている方がいるんだ、ということを改めて感じました。 その後、チャンネル登録数も増えていき、患者同士が交流できるコミュニティも作りたいという気持ちもさらに強くなっていきました。そのようなことを考えているなかで、ピアリングの上田さんと出会いました。上田さんに相談をしたところ、「大腸がんでも要望はある」ということで、コミュニティの開設にむけて話が進んでいきました。 開設にあたり、がんを専門にしている先生のアドバイスや、クラウドファンディングなど、たくさんの方のご協力とご支援をいただきました。そして、2023年の4月に「ピアリング・ブルー」はスタートしました。 コミュニティの名前は、大腸がんや胃がん、食道がんの啓発カラーである「ブルー」にちなんで、「ピアリング・ブルー」としました。
(ピアリング・ブルー サイト画面キャプチャ)

 

濱崎:罹患数の多い大腸がんのコミュニティは多くの人が待ち望んでいたものではないかと思います。

ピアリング・ブルーの活動について

濱崎:ピアリング・ブルーはどのような場所ですか。 佐々木:ピアリング・ブルーは同じ患者同士がピアサポートの場として利用していただけるSNS型の患者コミュニティです。 例えば、排便障害やオストメイトの話など、あまり他の人には話がしにくい内容についても、仲間と情報交換をすることができます。また、大腸がんだけでなく消化器系のがんというくくりにしていますので、胃がんや食道がん、膵臓がんなど大腸がん以外の方にも参加いただけます。 参加している皆さんはとても温かく、気軽に交流することができると思います。きっと今まで出会えていなかった仲間に会えると思います。また、書き込みをするのは抵抗があるなと思っている方は、無理に参加をしなくても、やり取りを見ることができますので、それを見るだけでも気持ちが楽になったり、安心につながるなど、お役に立てるのではないかと思います。 濱崎:何か取り組んでいることはありますか。 佐々木:「ひとりでも孤独な仲間を減らそう」という想いから、できるだけ多くの方に知ってもらうための活動を行っています。 2023年の12月に両面カラーのチラシを作製したのですが、それを会員さんが、自分の通っている病院や主治医に渡して宣伝を行っています。その名もチラシ大作戦です。実際に主治医からチラシをもらったという人からのコンタクトがあり、その効果を実感しています。 濱崎:確かに、主治医から患者さんに情報提供をしてもらうことができれば、多くの方にコミュニティの存在を知ってもらえますね。 佐々木:そう思って頑張っています。その他には、朝日新聞にて掲載していただいたり、週刊女性などのメディアにも取り上げていただきましました。そこから広がったご縁もたくさんあります。 このような活動も実を結び、開設1年が経過した現在では800名を超える会員数になりました(2024年7月末現在)。でも、大腸がんの罹患数からみると、まだまだピアリング・ブルーにたどり着いていない人がたくさんいます。 濱崎:もっと多くの方に知ってもらえるようオンコロでも宣伝しますね。他の活動についてはいかがでしょうか。 佐々木:現在はまだできていませんが、今後はピアリング(乳がん・婦人科がん)のように、医療者や企業との協業による調査や研究を行っていきたいと思っています。 そしてもっと多くの方に消化器がんの患者が抱える悩みや日々の工夫、リアルな思いを知ってもらいたいと思っています。

苦労していることについて

濱崎:コミュニティの運営をするにあたり苦労をしていることはありますか。 佐々木:会員さん同士のもめ事への対応に苦労することがあります。顔の見えないやりとりが中心であるため、どうしてもいざこざが起こってしまいます。どこの世界でも同じかもしれませんが、人間関係に関する問題は難しいと感じます。 濱崎:やはりそうなのですね。ピアリングの上田さんも一番の悩みであるとお話ししていました。 佐々木:そうですね。それでも、対応策として、ピアリング・ブルーではピアリング運営のメンバーがこれまでに培ってくれた経験をノウハウとして活用することができるので、随分と助かっています。通報システムなどはピアリング・ブルーでも導入しており、同様の運営体制で行っています。

今後の展望について

濱崎:男性の大腸がんの方にもニーズがあると思っているのですが、その辺りはどのように考えていますか。 佐々木:実は、それについては方向性について思い悩んでいるところでした。現状の会員は女性に限定されてはいますが、会員にならなくても情報を見ることができますので、男性の方にもお役にたてる情報はたくさんあるのではないかと思います。 でも、おっしゃる通り、男性にも交流を求めている方がいると思いますし、男性の方でも利用をしてもらえるような方法を検討しています。まずは、男性会員を受けいれることについて、会員さんへアンケートを取ることなどを検討しています。 また、改修費の問題はありますが、アプリを改修すれば、抵抗感のある方向けに女性限定の部屋なども作るなどもできますし、こちらも今後検討できると良いなと思います。 濱崎:大腸がんは罹患数の多いがんですので、男性も気軽に使えるものがあると良いなと思います。

記事を読む方へのメッセージ

濱崎:最後にこの記事をご覧になっている方へメッセージをお願いします。 佐々木:診断から丸6年経ちましたが、がんは本当に色々なことを含んだ病気であると、排尿障害に悩み続けている今、改めてそう感じています。 私自身の考えになりますが、「良い悪い」ではなく、がんの先の人生をいかに楽しめるかが生きる上でのモチベーションになっています。そして、がんが生き続けられる病気だとしたら、その先の人生をいかに快適に過ごせるかを一緒に考えよう、と思って活動しています。 5年が過ぎると「卒業」という表現もあり、がんのことは考えたくないという人ももちろんいらっしゃるとは思います。でも、がんが原因で変わったことなど、他の人に話せずに悩んでいる人がいれば、お話しすることで仲間からもらえる思いがけないヒントもあると思います。 みんなと一緒に少しでも楽しく生きていく、ピアリング・ブルーはそのサポートができると思っていますので、よろしければ是非ピアリング・ブルーを使ってほしいです。 濱崎:社会に対しても一言お願いします。 佐々木:がんは2人に1人がなる病気だと言われつつも、まだ身近にがん患者がおらず、理解や想像ができない、という方も多いように感じます。そのため、がんの話を気兼ねなくできるような社会にはなっていないと思います。 がん患者にとって、よりよい社会にするためには、がん患者である自分たち自身が、もっと発信していかないと伝わらないことも多くあると思っています。もし、身近にがん患者がいないという方がいれば、ぜひ私たちのコミュニティを見に来て、がん患者のことを知ってください。 もっとがん患者に対する理解が広がっていくといいなと思っています。 濱崎:本日はどうもありがとうございました。 ■SNSコミュニティ『PeerRing”Bleu” ピアリング・ブルー』:https://bleu.peer-ring.com/
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