患者団体に聞く! メラノーマ患者会【Over The Rainbow】 杉本さん 木村さん 患者と医療者で作る究極のセミナー -共感しあえる優しい団体であり続けたい-


  • [公開日]2023.11.24
  • [最終更新日]2023.11.24

はじめに

今回はオンコロ立ち上げ当初からお付き合いのあるメラノーマ患者会【Over The Rainbow】さんについて、現在運営側として活動をされている杉本さんと木村さんにお話をお伺いしました。

希少がんであるが故、メラノーマ診断は簡単ではない

濱崎:まずは杉本さん、診断されたときのことを教えてください。

杉本:2014年にメラノーマに罹患しました。足首にあるほくろが大きくなったことで病院へ行ったのですが、そのときは「良性のものである」といわれました。
良性だけど邪魔だろうから取ってしまおうかという話も出てはいたのですが、その当時第2子を妊娠中であったこともあったので、後回しとなったのです。しかし、出産後にそのほくろが大きくなっており……。大きな病院へ行ったところメラノーマという診断を受けました。
メラノーマという病気があることは、芸能人が診断されたニュースをテレビで見て知っていたので、最初は自分がメラノーマじゃないか?という話もしていたのですが、かかりつけの皮膚科ではあまり取り合ってはくれませんでした。私も希少がんであるメラノーマに自分がなるなんて思わなかったので。
その後、治療として手術と薬物治療(抗がん剤)を行い、以降再発はなく経過観察という状況です。

濱崎:ある程度メラノーマのことを知っていても診断には時間がかかったのですね。

濱崎:木村さんにもお話をお伺いできたらと思います。

木村:私は2021年の12月に肛門部のメラノーマと診断を受けました。
きっかけは検診で便潜血陽性で要検査となったことです。内視鏡の専門の病院にいって検査をしてもらったら、「1㎝くらいの黒いものがあるから、専門の病院に行ったほうがいい」と言われた。でもその時、病名は何も言われませんでした。
その後、がんセンターを受診し、診断を受けました。治療については、手術(直腸切断術)を受けました。術後の補助療法に関しては、粘膜メラノーマであったことから、メラノーマの専門医である主治医と何度も話し合い、再発リスクや治療の副作用の影響などを総合的に判断し、しないという選択をしました。現在は再発なく経過観察中です。

濱崎:メラノーマの診断や治療選択は、専門医に見てもらうことが特に重要になりそうですね。

専門医の協力とともに立ち上げられた患者会

濱崎:患者会の立ち上げは徳永さんが立ち上げられたのですよね。

杉本:はい。2013年8月に初代代表の徳永さんが立ち上げました。それまではメラノーマの患者会は日本にはありませんでした。
インターネットでつながった小さなコミュニティーに参加しているメンバーの要望があり、患者会を作ろうという話になったと聞いています。今でも大変お世話になっている国立がん研究センター中央病院の山崎先生も立ち上げに協力してくれました。十数名で始まった会ですが、今では約200名ほどのメルマガ会員さんがいます。

濱崎:運営スタッフとして参加されたきっかけなどがあるのですか?

杉本:会の立ち上げ後すぐに、参加者の立場として会には参加していたんです。専門医の先生のセミナーでメラノーマについて学んだり、お茶会に参加し仲間との交流をすることで、自分の中で気持ちが変わっていくのを感じました。
スタッフとして会に携わることになったのは、徳永さんからのお誘いがあったことがきっかけですね。

濱崎:杉本さんは、現在は代表として活動されていますね。

杉本:徳永さんが虹の橋を渡られた後、別のメンバーが代表を務め、その次に私にバトンが渡ったという感じです。まだ小さな子供がいること、フルタイムでの仕事をしていることもあり、正直キャパシティはありませんでした。でも、患者会は存続しなければいけない、という思いからも、この会を私が続けなければ、と引き受けることにしました。

濱崎:木村さんはどのようなきっかけで会に参加されたのですか?

木村:私は、術後体調が落ち着いたころ、【Over The Rainbow】が主催する患者向けのメラノーマセミナーがあり、それを拝見したのがきっかけです。
そのセミナーの後のQ&Aセッションで先生方が一人一人の質問に向き合う姿や患者会のやり取りを見て、先生が一つの病にこんなに真摯にやってくれているのかと驚くと同時に、こういった場所は大事だから自分も何かできることはないかと思いました。そして自分から問い合わせて、何かできることがあればスタッフとして参加させてくださいとお願いし、参加しました。

子育てとフルタイム勤務の中での患者会運営

濱崎:他の患者会の代表のお話を聞いていると会の運営には大変な面もあるようですね。

杉本:そうですね。私たちは4人のスタッフで運営を行っていますが、仕事と家庭と治療をそれぞれ抱えながら活動しているので時間的余裕がなかなか無いなどはありますね。
色々なことをやっていきたい気持ちもありますし、スタッフ内でも同じように語り合ったりするのですが、実際には手を出せないというもどかしさがあります。

濱崎:人手が増えることで解決できるのでしょうか。

杉本:誰でもできるというものではない面もあるので、やはり難しいですよね。会員さんの個人情報の取り扱いへの十分な配慮や、メラノーマの知識やこれまでの会の活動への理解なども必要になってきます。

木村:私も参加してまだ1年くらいで、やりたい気持ちはあるけれど、患者会の活動を行っていくには自分の経験だけでは補えないものもあると歯痒く感じています。相談対応は杉本さんがメインで対応されているのですが、お休みの時間にされているんですよね。

濱崎:プライベートの時間を割いて活動を継続しているのですね。それは本当に大変なことだと思います。

杉本:会の活動は、やはりどうしても簡単なことだけではないのですよね。でも、活動して嫌な気持ちや、つらいことになってほしくはないと思っています。
そうなったらすごく悲しいですし、そういう思いをしてまでやる活動ではないとも思っていますので。
お互いが共感しあえる、優しい団体でありたいと心がけています。

メラノーマの専門医が集結!他にはない究極のセミナー

濱崎:毎年5月に開催しているセミナーについてお話を聞かせてください。

杉本:5月は世界的なメラノーマの啓発月間となっており、それにあわせてセミナーを開催しています。前半パートではメラノーマ治療に関する最新情報の講義を行っていただき、後半パートでは全国から集まった専門医に患者から質問や相談をするというディスカッション形式で行われます。

濱崎:私も毎年参加させていただいていますが、ディスカッションのパートは先生方の熱量がものすごいですよね。

杉本:プログラム作成にあたり先生からの意見として、講義よりもディスカッションを多くしたいという希望があります。先生が患者さんの困りごとを一つでも減らしたいという思いで参加してくださっているのです。それは本当に貴重な機会だと思って私たちもやっています。

木村:山崎先生がいろんな先生に話を振って、うちの病院では……などと、複数の先生の意見が聞けるように進行をしてくださいます。それにより、山崎先生がいる東京の築地(国立がん研究センター)に行かなければいけない、ではなくて、自身の病院での治療に納得できたり、自身の近隣の病院でのセカンドオピニオンを検討するのもいいな、と思ってもらえます。
各地から先生が来てくれることで、そういったこともできています。

濱崎:ディスカッションによって患者さんの治療の選択が広がるのは本当に素敵だと思います。そんなセミナーは、現在はオンラインでの開催でしたよね。

杉本:はい。東京でオフライン開催をしていましたが、コロナをきっかけにオンラインでの開催になりました。

濱崎:最近はコロナの影響も緩和され、リアルの場での開催が戻りつつありますが、そのような意見はありますか。

杉本:ありますね。先生方にも患者さんの目の前でやりたいという想いもあるようです。ただ、オフラインだと遠方の方の参加が難しくなるので、オンラインとオフラインのハイブリット開催ができると良いなという意見が出ています。ただ、これには配信設備を整えなければならないなどのセミナーの運営側としてハードルがあります。

濱崎:ディスカッションパートは後日見られるように動画公開はできないのですか。

杉本:内容的に個人情報が含まれるようなものがあったり、先生方の発言の細かいチェックを入れる必要があったりするため、現状では難しいです。また、クローズな場だからこそより突っ込んだ議論ができているというのもあると思います。

濱崎:そうですか。これまでにたくさんのセミナーを見てきましたが、患者さんにとって最高のセミナーであると思っています。少しでも多くの方に参加してもらえるようにしたいですね。

患者会の声を届けて、患者が取り残されないより良い社会へ

濱崎:今後、会として目指していきたいことはありますか。

杉本:これまでもやってきたことですが、メラノーマという病気を持つ人同士がいつでも話し合える場を用意していきたいです。また、地域での活動を希望する方の支援などもしていけるとよいなと思っています。
最近では、ある地域でのがん患者イベントに参加する機会があったのですが、とても良かったです。

木村:全国を回って、全国の方に患者会の事をもっと知ってもらう活動などもやってみたいね、と話したりもしています。

杉本:活動をしてみたいという方がいれば、ご一緒して全国に輪を広げられるとよいなと思っています。

濱崎:他にはいかがですか。

杉本:患者会にはメラノーマという希少な病気の方の声が多く集まります。この集まった声を先生方や製薬企業さんと連携することで、活かしていきたいと思っています。これは、患者会だからこそできることだと思うので。PPI(Patient and Public Involvement:患者・市民参画)にも貢献できると思うので、ぜひ患者会を活用してほしいです。

濱崎:国や医療者、製薬企業へ伝えたいことがあればお願いします。

杉本:希少がんという理由で取り残されたくはない、というのをお伝えしたいですね。少数なので治療の開発などを進めにくいというのはあるのでしょうが、患者さんが安心できる社会になることを願っています。
これまで、患者が少ないために、治療の開発などが遅れてきたことがあったので、尊厳が守られて安心して暮らせる社会になればいい。当時者にとっては深刻なことですので、対策を進めていってほしいです。

「ひとりじゃないよ」 患者会という場所があることを知ってほしい

濱崎:最後に、患者さんへのメッセージをお願いします。

杉本:メラノーマという病気は診断されてから不安とか孤独がやってくると思います。そのようなときに、同じ病気の人と話をしてみたり、話を聞いてみたいな、と思った際には、会の活動に参加してみることを検討していただければと思います。そうして、少しでも気持ちが楽になるのであれば患者会としてとても嬉しいです。そういったときのためにも、こういう場所があるということを知っていただければと思いますね。
もちろん、患者会というのは、だれにでも必要というものではないと思うし、無理に勧誘をするわけでもないので、気になる方は気軽にお問い合わせいただければと思います。「ひとりじゃないよ」という言葉を伝えたいです。私もその言葉で支えられたし、患者会のつながりに惹かれていったので。

木村:私も患者会によって支えられたひとりです。杉本さんの頑張りや、この会の良いところが少しでも多くの方に伝わるとよいなと思います。

濱崎:オンコロとしても引き続き【Over The Rainbow】さんの活動をサポートしていきたいと思っています。本日はありがとうございました。

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