希少がんMeet the Expert 第2回 GIST(消化管質腫瘍)書き起こし~講義 前編~


  • [公開日]2017.04.25
  • [最終更新日]2020.03.25
スピーカー
国立がん研究センター中央病院 病院長 西田 俊朗
開会挨拶
講演 前編
講演 後編
ディスカッション

西田) 皆さんこんばんは。西田です。よろしくお願いします。

この後GISTの話を、これまで、先ほど西舘さんが少しご挨拶されましたが、西舘さんたちと患者さんの勉強会を、東病院時代に何回かやってます。そういうのをまとめてお話をさしていただこうかなと思います。

前回、メラノーマの時に、僕が最初、挨拶した時に、マイクがうまくかかってなかったので、もし聞こえなければ聞こえないと言ってください。今から始めたいと思います。

GISTという病気は、先ほど中釜理事長からありましたように、日本でいえば、年に10万人に1人ぐらいです。日本は、比較的、早い時期に見つかるGISTの患者さんが多くて、逆に言えば少し早めに取っていることがあるので、諸外国よりは頻度が少し高いかなという印象を持ってます。でも基本的には10万人に1人です。

アメリカでは同じですが10万人に1人から、10万人に0.6人ぐらいというデータも出ています。それぐらいだと思っていただければいいかなと思います。今日のお話は、一つはGISTってどういうもんだろうということを知っていただくために、ちょっとややこしいんですけども、GISTって手術した後しかわからないのです。手術する前、わかるのは非常にまれなんです。

だから、手術する前は粘膜化腫瘍、胃の粘膜化腫瘍とか、大腸の粘膜化腫瘍と言われるので、まず粘膜化腫瘍ってどんなもんだろうっていう話をします。

それから、標準的な治療二つ、外科的な治療、薬物治療と話をします。どこでもよく聞かれるのは、中釜先生がおっしゃってましたが、kit変異が見つかって治療が始まったという話があり、「この遺伝子変異って、いったいどういう役割が、臨床的に意味があるんですか?」という質問をよく聞くので、その話を最後に取り上げたいと思います。

では、最初のところで診断です。まずGISTとは?という話なんですけども、手術した標本、ちょっと明る過ぎてわかりにくいかもしれませんが、肉腫の一種なんです。だから肉腫という、肉というぐらいなので、これを見ていただいたように、肉の塊のような腫瘍なんです。

CTで見ると、ここにある。これが胃なんですけども、この大きな塊がGISTなんです。もう少し小さいころっていうと、超音波内視鏡を入れて、この黒いところがそうです。顕微鏡で見るとちょっと特殊な染色kitでいうタンパク質を見てると、こういう細長い細胞がつながってます。みっしりとつながってます。

どこにできるかというと、消化管の壁の中、筋肉の層に、主には筋肉の層です。主には、全部じゃないですけど、筋肉の層にできる。胃カメラとかで見つかったら、皆さんたぶん「粘膜化腫瘍があるよ」って言われて、たぶんそこから始まると思います。この間葉系腫瘍と書いてありますが、これは要するに、こういう皮膚の表面とか、胃の表面から出てくる。

だから、川井先生が、確かさきほどpっしゃられておられましたけれども、骨肉腫や、軟骨肉腫など、その辺の親戚です。良性があるかどうかは、ちょっと言いにくいんですけど、良性の経過をたどるものから、悪性の経過をたどるものまであって、悪性の経過をたどるやつは肉腫です。まさしく肉腫の一種です。

さきほど言いましたように、こういうkitっていうたんぱく質とか、DOG-1というたんぱく質を強く発現してます。「DOG-1」と犬みたいな名前が付いてるんですけど、別に、犬に出てたから付けたわけじゃなくて、これはスタンフォード大学の先生が、実はGISTに特異的なたんぱくがないだろうかといって、ずーっと調べたんです。

だからある特定のたんぱくが、すごく強く出てると、kit以外に、Discovered on GISTと名前付けた、だからDOG-1という名前なんです。これ事実です。ジョークではなくて事実なんです。9割のGISTの原因は、さきほど紹介にあったkit、それから同じ染色体の上の、すぐ横にある。すぐ下というか横にあるPDGFRAっていう、遺伝子の名前です。

これは、西田俊朗と同じように、こちらが西田俊朗なら、山田なんとかというのと同じように遺伝子の名前です。こういう二つの遺伝子が、だいたい90%の原因を説明しています。

先ほどご紹介がありましたように、本当に治療しなければいけないのは、実は10万人に、年1人ぐらいです。あとで紹介しますように、私は今60で、もうすぐ61になるんですけども、60の人の胃を、綿密にずーっと細かく顕微鏡で見ると、3人に1人はGISTの芽があるんです。

でもそれは、さっき言った、ほとんどが良性の経過をたどるので、本当に治療しなければいけない人が、10万人に1人というぐらいだと思う。やはり私の年代が非常に好発年齢であるという特徴です。

粘膜化腫瘍というのは、このように内視鏡で見ると、出来物がポコッとできてますよね。これはGISTでポコッとできてます。このようなものがいくつか、いろいろなタイプがあるんです。例えば、同じようにポコッと飛び出してるんだけど、これは腫瘍じゃなくて、外から押されてるだけ、これは先天性の良性の出来物です。だから手術する必要もなにもない。

これは平滑筋腫で、胃の入り口によくできる良性の腫瘍です。これは全然手術する必要ない、これに至っては炎症なんです。少し潰瘍があるんですけども、この人は実は、「手術してください」と、以前勤めてた大阪の警察病院に来られたんです。

「いや、本当に手術せんとあかんかな、もう1回カメラしましょう」とやってみたら消えていた、だから炎症なんです。だからこのような状態で手術すると、大変なことに。あとで医療訴訟になったりする。

こちら側はNETと言いますが、これはがんの一種です。同じように見えても違うんです。こういうのを見たときに、内部の細胞を取ってきて、できたらいいんですけども、全部が取れるわけではないので、CTとか超音波内視鏡で調べるというのが現状です。

たまたま内部の細胞、針を刺して取ったというときに、例えばこういうの取ってきて同じようにこういうの見える。これはHE染色って、一般的によくやられる染色方法なんです。同じように見えますが染色してみると、実は、これだけがGISTで、これはさっき言った平滑筋腫の悪性タイプです。

だからがんになります。これは神経腫、これは神経の良性腫瘍と、それぞれ人に、顔が違うように特殊なこういう顔をしてるときはGISTだけど、こちら側の顔をしてるときはGISTじゃない。それを決めるのが、さきほど言ったkitや、DOG-1というたんぱく質です。

ですからこういう細胞を見たら、時々昔の先生は、みんな診断をつけたことがありますが、こういったたんぱくが出てるかどうかを、必ず、あとで言いますように、手術所見で聞いた時に確認しておくことは非常に重要です。

GISTができやすいところは、だいたい決まっていて、胃のちょうど入り口に近いところ、だから十二指腸から空腸と言って、小腸のはじめの辺りです。それから直腸と言って、肛門、便が出る直前のところにできる。だいたい決まってるんです。それ以外にできたときは、GISTではないんじゃないかなと疑いを持ったほうがいいかもしれません。

ということで、GISTの診断は、どうやって決めるか?まず顕微鏡で見ます。写真を見て、あんな出来物ができているぐらいではGISTではないのです。顕微鏡で、今度は細長い細胞があったりするとGISTをまず疑う。

さきほど言ったように、kitというたんぱく質が出てるか、あるいはDOG-1というたんぱく質が出ているか。以前はCD34と、これは血管に出てるマーカーですが、こういうのが出たらGISTと言います。それが出ていなければ、ちょっと別の病気を考えましょう。

もちろん、遺伝子で変異が起こると言いましたよね。だから遺伝子の変異があれば当然GISTだという診断。これは結構重要で、実はGISTに私たちは専門ですよという病院のデータが、日本で取ってみたら3%から5%ぐらいは、本当は専門家が診たら違うというのは、やはりちゃんとした専門病院で手術を受け、顕微鏡で見てもらうのは非常に重要なことです。

そうでないとGIST以外には、例えばイマチニブっていうのは効かないですから、効かない薬を飲まないといけないということだから、ちゃんとした病院で、まず手術を受けることは重要なことです。

GISTの発生頻度は、先ほど言いましたように本当は臨床的に手術が必要になるのは10万人に1人、年1人ぐらいです。ただ、いま皆さん方、胃がん検診とかして胃カメラするでしょ?胃カメラしたら1,000人に1人ぐらいは、こんな小さい腫瘤が胃の中に見つかるんです。その小さい腫瘍の半分は、確率の的にはGISTだと言われてます。

そうするとほぼ1,000人に1人弱ぐらいで、こういう小さいGISTを持ってるという可能性。さきほど言いましたように、僕は60歳ですけど、60の人とたまたま会った時、胃がんの早期がんで胃を全部取ったという人がいるわけです。そういうのを実はずっと一生懸命調べた人がいる。

調べてみたら3人に1人ぐらい、こんな小さい、顕微鏡でしかわからないGIST、だからGISTというのは、もともとこういうやつがある一定の年代になったら、みんな持ってる可能性はある。ただ、みんな良性で、こういったら失礼ですけども、100、200ぐらいまでは、200はいかないか、100ぐらいまでは持っていけると、だから治療も何にもする必要がない。

そのうちの一部に、ある遺伝子変異が起こり、もう少しこういうふうな診断。これでも、ほとんどは良性で、さらにいくつかの遺伝子変異が起こって10万人に1人だけが、治療しなければいけなくなるという、発生過程だと思っていただければいいと思います。

もう1回おさらいします。だいたい病院に行って、いきなりGISTって診断がつくことはないんです。最初には粘膜化腫瘍、「胃の下に、あるいは直腸の下、粘膜の下になにか腫瘤がありますよ」という言われ方をする。

ではそこからどうするかと、もちろん診断をつける方法もありますし、診断がつくと針を刺さないといけないので、本当に針を刺す必要がある人はいいけれど、そうではない人は、例えば、明らかにこの腫瘤で症状がある人は、これはもう絶対手術をやりましょう、と。

それから5センチを超えると結構悪性なものが多いです。だからあまり時間かけて検査するよりは手術しましょうと、ガイドラインでいうと。明らかにこれは良性腫瘍ですよ、と、例えば脂肪の塊ですと言いきれたら、いいんですが、そうではなかったら、5センチを超えたら、やっぱり手術を考えましょうというガイドラインであると。

では5センチ以下のときはどうかと、だいたい2センチから下というのは、なかなか診断つくのは難しいです。ですから2センチから5センチは、こういったCTやEUS(超音波内視鏡)で、それから針を刺して調べて、病理診断きっちりつけましょうという説明をしています。2センチ以下は基本的には内視鏡、EUSはあまりしません。

内視鏡で見て悪性所見って、これはまた後で説明しますけども、形が悪いとか、潰瘍があるとか、そういうのがなければ、もう定期的に年に1回か、2年に1回、カメラをするのでいいんじゃないか、韓国では3年に1回でいいんじゃないか、という意見も出てるぐらいです。ともかく定期的に見るだけで手術しなくていいと言われてます。

私は実は、日本ではGISTと診断ついたら、みんな手術しなさいとガイドラインには書いてるんですけど、さっき言ったように、小さいやつは結構見つかるんですよね。

時々、皆さん来られるんですけど、個人的には胃のGISTの場合で2センチ以下であれば、GISTと診断つくことまずないのですが、さきほど言った、こういった潰瘍があるとか、形が悪いとか、人間でもやくざは明らかにやくざっぽい人いるじゃないですか、ああいう人でなければ経過観察してもいいのではないかなと。

実はアメリカのガイドライン、2センチ以下で悪性所見ではなかったら、GISTはもう手術しないでおこうという、アメリカのガイドラインはそうなってるんです。なぜならエビデンスはそこまでありません。なぜなら希少がんなのでエビデンスがまだ出てないんです。それを今ちょうど疫学調査で、日本内視鏡学会と、我々と、GIST研究会とで一緒にやってます。

さっき言いましたようにGISTができやすい場所は、確かに、この胃の入り口のところです。だいたい6割から7割ぐらいです。ここはちょっと手術がややこしい。なぜならば、ここはげっぷとか、逆流性食道炎、ここを切るとと手術で起こしやすいんですが、だから上手に手術しなければ。ちょっと慣れた医師にしてもらったほうがいいです。

2番目に多いのは、この十二指腸から、ちょうど十二指腸出たあたりの空腸に多いです。ここは悪くするとすい臓の手術と一緒のようになってしまうので、場所によっては非常に難しい手術、場所が良ければ非常に簡単な手術です。

あとは直腸、この肛門から便が出る直前の腸、ここにできやすいです。だから人工肛門にしたくないって言いながら、人工肛門にせざる得ないことが時々あります。2番目は治療、外科手術の話をします。これはアメリカの先生から貰ったやつ、非常にわかりやすいので、彼らは開腹でやってるからわかりやすいんです。

日本はこんな状態だったら腹腔鏡でやるので、こんなにいい写真はなですが、見ていただいているようにポコッと飛び出してありますが、一つ覚えておいてほしい。今のところ、お薬では治りません。お薬は治りません。小さくはできますけど治りません。ですから、治したければ必ず手術を受けてください。初発の人は基本的には手術です、ということですよね。

それからさきほど言いましたように、手術の前に診断がつくことは、あまりありません。手術して顕微鏡で見てもらって、初めてわかることが圧倒的に多いです。5センチ以下のものは腹腔鏡してもいいと思いますけど、大きいやつは、おなかを開けて安全に手術するのが一番いいと思いますし、このように血管が多いんですね。ここに血管が出てるんですけど、悪くなればなるほど血流が豊富になってきます。そういう特徴があります。

GISTかどうかは別にして、まずこういう腫瘤があったときに転移があった場合には、針で刺してGISTということを確認して、こういったお薬で治療します。転移があっても手術するというのは、ちょっと専門家的にはないです。転移があるときは、まずお薬治療です。転移がない。再発でないというときに外科手術を選びます。

外科手術をといったときに、例えば、さきほどのは小さいですよね。例えば20センチぐらいになってきたら、隣の肝臓も切らないといけない。腸も切らないといけないとなってくると、もう少し小さくしてからのほうが安全だよねというのと、例えば、ほかの高血圧とか糖尿病があって、大きな手術ができないっていう人もいらっしゃるので、そういうときにはネオアジュバントと言って、先にイマチニブを入れて、6カ月ぐらい入れて、小さくしてからやるというのが、ガイドラインでは今、推奨度Cになってます。

日本と韓国でやった臨床研究では非常にいいデータが出てますので、たぶん次に改定するときには、これが推奨されるようなかたちになると思います。

では確実に切れると、小さくしなくても切れるといったときには、小さい腹腔鏡手術でできますか?それとも開腹ですか?というのを考えなければ。一般的には5センチ以下であれば腹腔鏡をやればいいし、5センチを超えれば、一般的です。例外もあります。7センチでもできるのもありますけど、一般的には5センチで開腹か腹腔鏡かで、だいたい分かれています。

ですから、覚えておいてほしいのは、転移や再発のときには、いきなり手術はしません。まずはイマチニブ。初発GISTのときは、さきほど言いましたように、手術が一番確実な方法ですが、その時に、大きく分けて三つ、先ほど言いましたネオアジュバント、先に薬を使って小さくして、もう1回術後にも入れるという治療もありますけれど、実は一般的には、ほとんどの人がいきなり手術をして、リスク分類で、あとで出てくる。こういうのを、悪性度、再発リスクを計算します。

再発リスクを計算して、中リスク以下であれば年に1回とか2回とかのフォローだけで、5年間フォローでいいと思います。海外の先生は、超低リスクになったら、もうフォローもいらないと、手術がきちんとできていれば、それで後はいいんだという先生もいらっしゃいます。だから、高リスクになった場合は、基本的にはやっぱり今のガイドラインでは3年間だけアジュバント治療しましょうというふうに考えてます。これだけ覚えておいてください。

ネオアジュバントは、こことここを合わせて3年間ぐらいだと言われてます。外科治療で優先していただかなければいけないのは、やはり手術は安全であると、これが一番。それから確実にきちんと取れるということが最優先です。おなかを開ける。小さな傷でやる。そんな優先順位は非常に低いと思ってください。

選ぶときはやはり手術を経験して、手術を経験してるというのは、つまりGISTの経験、こういう腫瘍だよというのは、よくわかった先生がいるところでやったほうがいいと思います。

例えば、胃の入り口のところの手術って、GIST取ること自体は簡単なんです。ただ逆流性食道炎を起こさないような手術をするとか、そういう必要があるので、腫瘍を取ること自体は簡単なんですけども、そうじゃない。そのあとの機能を考えてやるという意味では、こういうところに行かれたほうがいいと。

さきほど言いましたように腹腔鏡手術は最優先ではありません。まずは手術を確実に、その次は、この機能保存、さきほど言ったように逆流性食道炎、術後に起こさないような手術をすると、そういうことのほうが大事になります。

手術を受けたときに、患者さんやご家族の皆さん方が、ぜひ確認していただきたい。赤字で書いてあるところは、ぜひ確認してください。まずは当然、誰でも聞きますよね。GISTがさきほど言ったように「kitやDOG-1が出てますか?」と聞いてください。ちゃんとその辺、説明ができる先生は専門家だと思う。

どこにできたか、胃か、腸か、胃、腸以外でも時々あります。これによって再発率が全然変わります。それから、もちろん転移、播種あるかないかを聞くと思いますけど、それ以上に腫瘍が破裂してたかどうかという、たぶんそういう言葉を使えば、「あ、この患者さんよくわかってるな」と聞かれるから、これを聞いていただければいいと。

完全に取れたかどうかは当然聞かれますよね。それから大きさ、これは取った時の大きさでいいです。手術の最中と取った大きさ、微妙に大きさが違うんですけど、取った時の大きさで結構です。聞いてください。それから、細胞分裂像数を聞いてください。普通は50視野あたりとおっしゃると思います。

これが5ミリ平米あたりって言ってくれる先生がいたら、そうとうベテランです。よくわかってる医師です。この医師は信用していいと思います。

それからリスク分類、「リスク分類で、どのリスクに入りますか?」と聞くときに、どのリスク分類というのも大事なんです。それによって、再発率が微妙に違うので、それは聞いてください。それから、お薬を飲みましょうと言われたときには、遺伝子をできたら検査してもらってください。特にアジュバントのときはしてもらったらいいと思います。そういうことを、よく聞いていただくといいかなと思います。

手術をすると、胃がんや大腸がん、大腸がんと同じぐらいかもわかりません。胃がんよりは成績が良くて、だいたい6割の方は手術で治ります。これは世界のデータです。日本のデータも入ってます。我々のデータも入ってますけども、日本だけすごくいいんです。7割から7割5分ぐらい大丈夫なんです。

何故いいのかはわかりません。ともかく6割以上は治ると思ってください。だから手術したら、すごい不安になる必要は全くありません。手術したら、先ほど言いましたように顕微鏡で見てもらって、高リスクか高リスク以外かによってあとの治療が違います。高リスクと言われたときには、基本的には今のところガイドラインでは、アジュバントを3年間やりましょうと。

高リスクの場合は、一応10年間ほどと言われてます。こちら側のほうは最低5年はやったらいいと思いますけども、まあ、10年間、是非かどうかは何とも言えません。検診を受けていただいてもいいぐらいだと思います。

イマチニブのアジュバント治療、これはお金がだいぶかかりますよね。3年間やったらどれだけかかると思います?1,000万円近くかかる。900万円ぐらい、一応計算して、薬代だけでそれだけなんです。

少し薬剤高いなという気がしますが、ですから、本当に適応のある人だけ飲まれたほうがいいと。さきほど言いました高リスク、破裂して縮小した方は飲んでいただく。

このお薬は、実はアジュバントと言って、本当はちゃんと手術で、例えば70%になるのは、アジュバントしたら75%、80%は治るようにしてほしいんですけど、実はこのお薬は、そこまでちからがなくて、再発するのを抑えるぐらいのちからしかないんです。

絶対再発する人が、たぶんやめたら再発するので、破裂したGISTなんかは9割の人が再発すると言われてますから、僕は個人的には、破裂したGISTの方は、もう少し長く飲むように推奨してます。ただし、ここに書いてあるように、遺伝子を調べるのは、実は最初からイマチニブが効かないことがわかってるんです。

PDGFRA D842Vとか、これは覚えなくていいんですけど、このタイプとか、kitやPDGFRAに遺伝子変異がないのは最初から効かない。ですから、私は個人的には、こういう方がいらっしゃったら、「もうアジュバントはいいです。様子見ましょう」と。幸い、このタイプは非常におとなしいので再発率、全然低いです。ですから、こういうやつはアジュバントを勧めないと。

アジュバント、治療中に再発した場合は、スニチニブ、あるいはさきほど言いました、これは効かないので場合によっては手術することがあります。再発が実は今、アジュバント3年間終わって5年目に再発した場合は、もう1回、基本的にはイマチニブを入れるという治療を、今はしてます。

次は、お薬の話が少し入ってきましたので、お薬の話に入りたいとおもいます。あまり時間を気にせずに話ししてるんですけども、まず一番最初これは覚えておいてください。

ガイドラインは、実は「再発のときに肝臓に3個までやったら手術しましょう」というのが点線で書いてあるんですけど、個人的には今はもう、転移や再発に関していえば、まずは薬物治療、お薬を投与する。そのあと手術するかどうかは、専門家の意見を聞いてください。転移、再発がある場合は、基本的には薬物治療だと思っておいてください。

薬物治療は最初にイマチニブ、2番目にスニチニブ、それが駄目になったらレゴラフェニブの順です。これは承認された順番です。あとで出しますけども、こことここに関しては、すごい強いエビデンスがあるわけではないのですが、レゴラフェニブってのは、スニチニブが効かなくなった時に、初めて臨床試験をやりましたから、今のところ承認上はスニチニブを使った後にこれを使うと言われてます。

外科治療は、先ほど言いましたように、もともとお薬が効かない。こういうやつで再発したときに、転移が2個とか手術できるよっていうときにはやっていいと思うんで、ここはよほど慎重に、よくわかった医師とご相談されて決められた方がいいと思います。

再発する場所は、ほとんど肝臓か、こういった腹膜です。どちらも、腹膜に転移しても胃がんとか、大腸がんで腹水がたまってバーンっとあるんですけども、実は、あまり腹水たまる人は少なくて、本当に肉腫なので肉でぱんぱんになってくるというのはあります。

食道と直腸だけは例外です。これは肺に転移、あるいは骨に転移することがある。結構あります。まあ、それは覚えなくていいんです。

基本的にはおなかの中に再発すると思ってもらっていいと思います。それから、さっきから言いましたがお薬は三つあります。この三つと、でもこの三つの中で共通して、実は、ここしかGISTには効いてないです。kitと、PDGFR、みんな共通して阻害するんです。やっぱりここをたたいて、初めてやっぱり効いてるということ。同じようなお薬なんです。

順番から、イマチニブ、スニチニブ、レゴラフェニブとやるんですけど、イマチニブが効いてる期間、これはPFS が効いてる期間の平均だと思ってください。一番長いです。スニチニブが8カ月ぐらい、レゴラフェニブもこれ。これはスニチニブが弱い薬だからそうなってるわけじゃなくて、最初にイマチニブを使って、こいつをたたいてるので、同じようにスニチニブ使って、これをたたいても、それぐらいしか効かないと理解してください。

ですから、イマチニブを飲んでる時にできるだけ、休薬をやめたりして副作用がなんとかいけるようだったら、休薬や中断をやめて、しっかりずっと飲み続けるということが非常に重要です。書いてあるように、保険適用のあるイマチニブ、スニチニブを最後まで使い切るという、大阪弁で言ったら「使い倒す」です。これをしっかりやっていただきたいなというふうに思います。

では、どうやって効いてるという話しですが、先ほど言いましたように、GISTというのは、kitというのが変異して、二つが自動的にくっつくような、自動的にくっつくと細胞増殖、「増えなさい」という命令が自動的に入るようになるんです。スイッチが入ってます。このイマチニブというお薬は、kitというたんぱく質の細胞増殖を促すところにくっついて、下流に行くシグナルを消してしまうんです。

こういうふうに消しちゃうんです。だから止まるんです。止まるんですけども、これが外れると、またスイッチが入ってしまうのです。だからスイッチを切っているだけと思ってください。殺してるわけじゃない。たまたま死ぬやつもいるけど、スイッチを切ってるだけだと。

例えばこれは昔、阪大にいた時に、非常によく効いた人があって、一つだけ効かなかったやつがあって、それを取りに行ったついでに、回りがゼリーのようになっていて、もう完全に死んでるなと思ったやつを取ったんです。

それを見てもらったら「残ってますよ」と。ちょっと拡大したら、こういう細胞が、これkitです。がん細胞があるから、どこかに細胞が残ってるんです。非常によく効いても必ず残っている。CTで消えましたっていっても、どこかに絶対残っています。ですから消えたといっても安心せずにやめてはいけない。

だから可能な限り休薬を入れない。これは可能な限りというのは、副作用が許す限りです。できるだけ大きな量、飲んだ方が血中濃度が上がります。1日で、例えば、朝1回で飲まなくても、最近はいつでもいいから1日で3錠なら、4錠飲んでください、と。血中濃度保つのは大事なんです。

では、効いてるかどうかわからないじゃないですか?という話になりますが、飲み始めたとき不安ですよね。効いてるかどうかは、もしGISTで症状が、例えばおなか張るとか痛い症状があったら、だいたい1週間以内に効いてれば消えます。あるいは軽くなります。

ですから、症状が消えるというのは一番最初です。2番目がこういうPETでFDGが取り込まれるのが取り込まれなくなる。これは3日から1週間掛かります。だから小さくなるのは1カ月かかる。3カ月かかる。だから、CTの結果がだいぶ遅い。症状が1番早くて、その次がPETだと思っていただければいいと思います。

イマチニブはだいたい5割から6割の人に小さくします。大きくならないというのが、ここに書いてありますように大事なんです。だいたい8割から9割は大きくならないので、基本的には結構たくさんのGISTに効きます。

さきほど言いましたように、この遺伝子変異が非常に効くか効かないのが重要です。アジュバントのときには腫瘍が見えないので、効いてるか効いてないかすごい不安じゃないですか。だから遺伝子を調べて「あ、大丈夫。効いてる。効くはずだ。」と信じて、飲むということは非常に重要だと思います。

途中でやめるとか、無理やり減量するとかはあまりよろしくないので、できるだけ中断を避けて副作用が許す限りは、ずっと飲み続けることが大事かなと思います。

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