中皮腫の治療 -手術(外科治療)-


  • [公開日]2017.08.08
  • [最終更新日]2018.01.11

手術(外科治療)の概要

胸膜中皮腫では、片側の肺のすべて、外側の胸膜(壁側胸膜)、横隔膜などをまとめて取り除く大きな手術をします(胸膜肺全摘術)。また、外側の胸膜を切除し、がんで厚くなった内側の胸膜をはぎ取る手術もあり、この場合は肺は残ります。

手術の前に抗がん剤治療を行うこともあり、手術後の再発を予防するために放射線治療を行うこともあります。根治的外科切除成績は5年生存率が約15%とされています。

ただし、肺・胸膜全摘除術のために手術による侵襲性が大きく、最近の適切な症例選択・手術手技・周術期管理の向上などによってその危険性は改善されてはきたものの、手術関連死亡は5%程度と依然として高いと報告されています。胸膜切除/肺剥皮術のほうはそれほど手術の侵襲性が大きくないので手術関連死亡も5%以下ですが、腫瘍残存の可能性が高いとされています。第3相比較試験が存在しないため、両術式の優劣を判定することは困難といわれています。

悪性中皮腫に対して行われる手術療法には以下のようなものがあります。

広範囲局所切除術:がんとその周囲の正常組織の一部を切除する手術。
胸膜切除術+肺剥皮術:肺と胸膜を覆う一部および肺の外側表面の一部を切除する手術。
胸膜外肺全摘術:片側の肺全体と胸膜、横隔膜、心嚢膜の一部を切除する手術。
胸膜癒着術:化学物質または薬剤を用いて2層の胸膜の間の腔隙(胸膜腔)に瘢痕を生じさせる外科処置。

病変が胸膜に限局していてリンパ節や遠隔臓器に転移がなく、病巣をすべて完全にとりきることが可能と判断される場合は外科療法の対象となります。この場合、片側の肺を含めて病変をすべて、胸膜、場合によっては横隔膜や心膜ごと切除する「胸膜肺全摘除術」と呼ばれる大きな手術を行います。

これに対して、外側の胸膜(壁側胸膜)を切除し、さらに内側の胸膜(臓側胸膜)をはぎ取る手術もあり、胸膜切除/肺剥皮術(はいはくひじゅつ)と呼ばれます。この手術の場合、肺は温存されますが、これも大きな手術の1つです。これらの外科療法で病巣を完全に切除できたとしても、外科療法単独での治癒はとても難しく、そのため悪性胸膜中皮腫の予後は非常に厳しいのが現状です。

予後を改善させるためにさまざまな治療方法が試みられており、主要臓器の機能に問題のない患者さんに対しては、外科療法(胸膜肺全摘除術)に化学療法や放射線治療を組み合わせて治療を行う集学的治療が行われることもあります。

手術の後遺症

手術後は、軽症から生命に関わる重大なものまで、さまざまな合併症を起こす可能性がありますが、ほとんど場合は順調に経過し、おおむね問題なく日常生活が送れるようになるとされています。

外科手術の場合、胸の中央に25cmほどの手術創ができます。手術直後から、この手術創を中心とした痛みが生じやすくなります。痛み止めの薬を増やすなど、痛みの性質や状態に応じた処置を受けることができます。軽い痛みの場合には、痛みを気にし過ぎないように気分転換を図ることも痛みを和らげることにつながります。

痛みは時間の経過とともに少しずつ治まっていきますが、退院してからも続くこともあります。雨の前日など気圧の変化によって痛みや違和感が増すことがあるようです。

参考資料:
レジデントのための呼吸器内科ポケットブック(2012)
呼吸器疾患 (コメディカルのための最新医学講座 第2巻)(2005)
メルクマニュアル第18版
ワシントンがん診療マニュアル第2版

ウェブサイト:
国立がん研究センター希少がんセンター
http://www.ncc.go.jp/jp/rcc/01_about/mesothelioma/index.html
http://www.ncc.go.jp/jp/rcc/01_about/peritoneal_mesothelioma/index.html
がん情報サービス
http://ganjoho.jp/public/cancer/mesothelioma/treatment.html

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