中皮腫は、臓器ではなく体腔の中で発生し、膜表面上をびまん性に進展するという特殊性のため、診断が難しい病気です。そのため、身体所見をはじめ、画像検査、胸水検査や胸膜生検の結果から複合的に診断します。

身体所見と既往歴

問診、全身の検査、アスベスト曝露歴などを調べます。疾患徴候などを始めとする一般的健康状態をチェックし、これまでの生活習慣や職業歴(アスベスト曝露歴)、過去の疾患や治療歴についても調べます。
アスベスト曝露歴の聞き取り調査は非常に重要で、建築業、造船業、断熱工事、ボイラーを扱う仕事、自動車修理工場での職業歴を確認します。また、そうした施設、工場、廃棄物処理場周辺での居住歴も重要となります。

画像検査(超音波、CT、MRI検査)

胸膜中皮腫では、胸部内の臓器と骨のX線検査を行います。胸部単純X線写真や胸部CTで肺全体をつつみこむように拡がる一側性または両側性の胸膜の肥厚や多数のしこりが認められたりします。
胸水は症例の95%にみられ、典型的には一側性で大量です。FDG-PETでは集積像がみられます。

腹膜中皮腫では、似たような腹膜病変を起こすことが多い消化器系癌(胃癌や大腸癌など)や腹膜癌ではないことを確認するために、内視鏡検査や婦人科の診察を行うことも重要です。
腹部超音波で腹水や腹膜肥厚を確認することも参考になります。CT検査で腹水、腹膜の結節、肥厚などが分かることがあります。

細胞診

画像検査では肺癌との区別が難しい場合も多いため、胸に針を刺して胸水中の腫瘍細胞を調べます(細胞診)。
細胞診には、少なくとも100mLの胸水を採取することが望ましいとされています。採取した細胞は何か異常がないかを病理医が顕微鏡下で調べます。中皮腫では、肺周囲または腹腔から体液を採取し、病理医が体液中の細胞を調べます。
ただし、細胞診が陽性になる可能性は低く、確定診断が困難なことが多いです。

腹水検査や腹水細胞診も診断の助けにはなりますが、中皮腫であることをはっきりと示す腹水検査所見がみられるのは5割程度といわれ、診断に確定的な検査とはいえません。

生検

胸水の細胞診で腫瘍細胞が見つかることもありますが、それでも診断がつかなければ、局所麻酔下や全身麻酔下でビデオ補助胸腔鏡手術(VATS)による生検(組織採取)や開胸生検を行い胸膜面腫瘍を十分に採取して調べます(胸膜生検)。
腹膜中皮腫では、診断のための組織生検は腹腔鏡や開腹して生検を行うのが通常です。

上皮型では腺癌との鑑別、肉腫型では線維肉腫などの実際の肉腫との区別が必要で、HE染色のみでは肺癌との区別が難しいことがあるので、正確な診断には各種抗体を組み合わせた免疫組織化学染色による確認が必須となります。
カルレチニンなどの陽性マーカーとCEAなどの陰性マーカーとを組み合わせて診断します。胸膜の中皮細胞を起源とすることから、腫瘍細胞はヒアルロン酸産生やその他の中皮細胞マーカーが陽性になるので、ヒアルロニダーゼ消化試験によるヒアルロン酸産生の証明や、胸水中のヒアルロン酸を測定して高値であるかどうかを調べます。
腫瘍マーカーとしてヒアルロン酸やCYFRAがあり、CEAは陰性で肺癌との区別に有用です。また血算では血小板が高値となります。

中皮腫は、種々の悪性腫瘍と形態学的に類似することが多いため、両者を病理学的に区別することは困難なことが多いと言われています。

具体的には、中皮腫の上皮型は腺癌に類似し、線維型は肉腫と類似しています。また、体腔液中に出現する反応性中皮細胞は、核形不整や核の大小不同、明瞭な核小体を有することがあるため、腺癌細胞や中皮腫細胞と区別することが困難になります。

そのため、中皮腫の診断には、中皮細胞や中皮腫の特徴について、細胞学的、組織学的、組織化学的、電子顕微鏡的、免疫組織化学的などのさまぎまな手法を用いた集学的検討が必要です。なかでも、近年飛躍的に普及した免疫組織化学染色はもっとも有用な手法の一つとなっています。

早期発見・早期診断には従来の診断法に加えて、特殊光内視鏡システムを導入した胸腔鏡検査、中皮腫特異的に発現する分子に着目した病理組織診、新規血清バイオマーカーの臨床応用などが重要な役割を果たします。

参考資料:
呼吸器疾患 (コメディカルのための最新医学講座 第2巻)(2005)
Medical Technology 2009年2月号
Dr.レイの病理学講義(2012)
レジデントのための呼吸器内科ポケットブック(2012)
呼吸器疾患 ―state of arts―Ver.6(別冊・医学のあゆみ)(2013)
胸膜全書(2013)
メルクマニュアル第18版
ワシントンがん診療マニュアル第2版
トートラ人体解剖生理学原書第9版


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