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血液がんとは

[公開日] 2020.03.25[最終更新日] 2024.10.03

目次

そもそも血液がんとは

血液がん(造血器腫瘍)は、造血幹細胞が「がん化」したもので、その種類は多岐にわたります。大きく分類すると、「白血病」「悪性リンパ腫」「多発性骨髄腫」に分けられ、それぞれのがん種によってその原因や治療法は異なります。 近年、血液がんは、その病態が分子・遺伝子レベルで明らかになってきており、診断法や治療法が急速に進歩しています。また、従来の標準的な化学療法に加え、分子標的治療薬、造血幹細胞の移植、免疫療法、補助療法などで、毎年のように新たな報告が発表されており、治療の選択肢が広がってきています。 このページでは、「白血病」「悪性リンパ腫」「多発性骨髄腫」について、わかりやすくまとめます。

白血病とは

白血病の概要

血液がんのひとつである「白血病(leukemia)」は、かつて主立った治療法がない、痛ましい病でした。現在は、化学療法や骨髄移植の劇的は発展により、種類にもよりますが、治癒できるがん、または、長期間生存できるがんとなりました。 日本では、1年間に人口10万人あたり、男性で11.6人、女性で8.0人の割合で白血病と診断されています(2015年のデータ*)。 白血病は、「血液細胞」が骨髄でつくられる過程でがん化することによって起こります。「造血幹細胞」や「前駆細胞」に遺伝子変異が起きたことによって生じる「白血病細胞」が骨髄で異常増殖することで正常な血液細胞の増殖・機能を阻害。骨髄にとどまることなく末梢血中にもあふれ出てきます。 造血幹細胞は、血液を構成する細胞になら何にでもなれる多様性を有した幹細胞で、赤血球、白血球、リンパ球、血小板は、この造血幹細胞から分化して発生します。 その機能が白血病細胞によって阻害されるため、白血病患者さんでは、酸素を運ぶ役割を担っている赤血球の働きを阻害することで貧血になったり、白血球は感染症から体を守る役割を担っていますので感染症にかかりやすくなったりします。 また、増えすぎた白血病細胞が行き場をなくしてリンパ節や他臓器に侵入することがあり(臓器浸潤といいます)、これによって臓器に障害をきたすこともあります。 白血病を含むがんは、遺伝子や染色体に傷がつくこと(遺伝子変異)で発症すると考えられており、慢性骨髄性白血病(CML)では、患者さんの95%以上でフィラデルフィア(Ph)染色体という異常な染色体が見つかります。 遺伝子や染色体に傷がつく原因として、放射線、ベンゼンやトルエンなどの化学物質、ウイルスなどが挙げられていますが、そのメカニズムは、完全には解明されていません。 *最新がん統計:[国立がん研究センター がん登録・統計]

白血病の種類

白血病の分類は大きく分けて以下の4種類があります。 ・急性骨髄性白血病 ・急性リンパ性白血病 ・慢性骨髄性白血病 ・慢性リンパ性白血病 骨髄性白血病とリンパ性白血病 骨髄性とリンパ性の違いは、増えてくる細胞が骨髄性のものであるか、リンパ性のものであるかによって異なります。下の図をご覧ください。 血液細胞は、赤血球、血小板、白血球に分けられ、白血球には、リンパ球、顆粒球、単球が含まれます。これらの血液細胞は、骨の内側にある骨髄でつくられます。そこで、血液細胞のもとになる造血幹細胞から各種の血液細胞へと変化し、成熟した血液細胞が血液中に放出され体の中を循環します。 造血幹細胞は、造血前駆細胞に分化したのち、リンパ球性共通前駆細胞と骨髄球性共通前駆細胞の2つに分かれます。リンパ球系の細胞が異常に分化・増殖しているのが「リンパ球性」の白血病で、骨髄球性の細胞が異常に分化・増殖しているのが「骨髄性」の白血病です。 急性白血病と慢性白血病 白血病における「急性」と「慢性」の意味は、他に疾患においての意味とは少し異なっています。他の疾患においては急性のものが持続して慢性化するという順序になりますが、白血病においては急性白血病が持続しても慢性白血病になることはありません。 急性白血病は、成熟していない若い白血球が増加するもの、未熟なものから成熟した細胞まですべてが増加する白血病のことです。急性白血病では幼弱な細胞が増殖します。一方の慢性白血病では、すべての分化段階の細胞がまんべんなく増殖します。(下図) 病状や進行過程も異なります。急性白血病では急激に発症し顕著な貧血や白血球増加、血小板減少(出血傾向)を示すことから迅速な治療が必要となります。慢性白血病の白血球数は著明に増加するのですが、症状のないことも多く健康診断時で偶然に見つかることが多いようです。しかし、最終的には急激に悪化(急性転化)しますので、この急性転化を遅らせるような長期にわたる適切な治療が必要になってきます。 これらの違いだけでなく、急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病はより細かい分類(サブタイプ)に分かれています。 詳しくは、オンコロの白血病について(疾患情報)急性白血病と慢性白血病をご確認ください。

白血病の原因

先述の通り、白血病を含むがんは、遺伝子や染色体に傷がつくこと(遺伝子変異)で発症すると考えられています。遺伝子や染色体に傷がつく原因として、放射線、ベンゼンやトルエンなどの化学物質、ウイルスなどが考えられますが、そのメカニズムは完全には解明されないのが現状です。

白血病の症状

白血病の病状や進行過程は、その分類によって異なります。それぞれの主な症状は以下の通りです。 急性骨髄性白血病(AML)の症状 ■造血障害によって引き起こされる症状 ・易感染性(感染しやすい状態)による発熱や全身の倦怠感 ・貧血による全身の倦怠感や顔面蒼白、息切れ ・出血傾向による鼻血、歯肉出血、皮下出血 など ■臓器浸潤によって引き起こされる症状 ・中枢神経症状(嘔吐、頭痛、精神症状など) ・歯肉膨張 ・リンパ節膨張 ・肝脾腫 など 急性リンパ性白血病(ALL)の症状 ■造血障害によって引き起こされる症状 ・易感染性(感染しやすい状態)による発熱や全身の倦怠感 ・貧血による全身の倦怠感や顔面蒼白、息切れ ・出血傾向による鼻血、歯肉出血、皮下出血 など ■臓器浸潤によって引き起こされる症状 ・中枢神経症状(嘔吐、頭痛、精神症状など) ・歯肉膨張 ・リンパ節膨張 ・肝脾腫 など 慢性骨髄性白血病(CML)の症状 慢性骨髄性白血病(CML)の症状は進行性で、慢性期→移行期→急性転化期と段階的に悪性度が進行します。一般的には、症状がない慢性期でCMLと診断されることが多いです。慢性期に診断が付けられずに治療を受けられないでいると、3~5年程度で移行期や急性転化期へと移行していきます。 ■I.慢性期の症状 ・最初期は無症状 ・進行に伴い微熱や全身倦怠感、体重減少 ・白血病細胞の浸潤に伴う肝脾腫、腹部膨満感 など ■II.移行期の症状 ・肝脾腫の増悪 ・発熱、体重減少 ・骨痛 ・治療薬への抵抗性を増す など ■III.急性転化期の症状 ・貧血 ・出血傾向 ・易感染性 など 慢性リンパ性白血病(CLL)の症状 慢性リンパ性白血病(CLL)は、初期症状に乏しく、健康診断やほかの疾患の治療中に血液検査を行い、白血球数が多いことを指摘されて偶然診断されることが多いです。代表的な徴候や症状は以下のとおりです。 ・頸部や腋窩、胃、鼠径部リンパ節の無痛性の腫脹 ・ひどいの疲労感 ・肋骨下の疼痛または膨満感 ・発熱や感染 ・原因不明の体重減少 など

白血病の検査と診断

白血病の検査では、主に血液検査と骨髄検査を行います。貧血などの症状があり、血液検査の結果から、血液細胞の数や種類に異常がみられた場合、白血病が疑われます。そのため、一般の健康診断や血液検査の際に、白血病が発見されることもあります。 骨髄検査は、患者さんへの負担が大きいため、基本的にはまず血液検査を行い、幼弱な細胞が出てきていれば白血病の可能性が高いと判断します。最終的な診断には、骨髄液を吸引する「骨髄穿刺(マルク)」や、骨髄の組織を採取する「骨髄生検」などの骨髄検査が行われます。 ほかにも急性白血病が疑われた場合は、ミエロペルオキシダーゼ染色(MPO染色)やエステラーゼ二重染色、細胞表面マーカーや染色体検査、遺伝子検査などを行い、骨髄性か、リンパ性かの鑑別を行います。 慢性骨髄性白血病が疑われた場合は血液検査、染色体分析、遺伝子分析を行います。慢性リンパ性白血病が疑われた場合は免疫学的解析、遺伝子解析、直接Cooms試験などで確定診断を行います。

白血病の治療

白血病の治療は、急性/慢性、骨髄性/リンパ性等の性質によって異なります。また、患者さんのご年齢や健康状態によっても治療選択は変わります。 急性骨髄性白血病(AML)の治療 初発急性骨髄性白血病(AML)に対する基本的な治療は、「治癒」を目指した強力な化学療法で、複数の薬剤を用いた「多剤併用療法」が基本です。その適応は、化学療法による臓器毒性や合併症に耐えられるかを年齢、臓器機能、全身状態などによって慎重かつ厳密に判断する必要があります。 急性骨髄性白血病の治療の詳しい説明はこちら 急性リンパ性白血病(ALL)の治療 急性リンパ性白血病(ALL)の治療では、複数の抗がん剤を組み合わせておこなう化学療法(多剤併用療法)や、造血幹細胞移植によって全身の白血病細胞を段階的に減らしていきます。その治療効果は、骨髄穿刺により白血病細胞の量を調べることで判断します。なお、白血病細胞を減らす治療によって、治療に伴う副作用や合併症が現れる可能性があり、それらの治療も行います。 急性リンパ性白血病の治療の詳しい説明はこちら 慢性骨髄性白血病(CML)の治療 慢性骨髄性白血病(CML)の治療法は、「薬物療法」と「移植療法」があります。薬物療法には、「分子標的治療薬」、「化学療法」、「インターフェロン-α療法」があり、白血病細胞を減少させ、症状を抑える効果が期待されます。 慢性骨髄性白血病の治療の詳しい説明はこちら 慢性リンパ性白血病(CLL)の治療 慢性リンパ性白血病(CLL)は、慢性に進行していく疾患であり、病期によって生存期間に幅が生じます。それと同時に、完全に治癒することが難しい疾患でもあります。そのため、治療の方針は(一部の若年者例を除いて)なるべく低リスクの状態を維持することで、長期生存の可能性を上げるという方針になります。また、慢性リンパ性白血病の患者さんには、高齢の方が多いので、症状緩和やコントロールが治療の目的になります。 慢性リンパ性白血病の治療の詳しい説明はこちら

白血病の臨床試験

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悪性リンパ腫とは

悪性リンパ腫の概要

悪性リンパ腫は、血液細胞に由来するがんの1つで、白血球の1種であるリンパ球ががん化した病気です。全身のいずれの場所にも病変が発生する可能性があり、多くの場合は頸部、 腋窩、 鼠径などのリンパ節の腫れが起こりますが、消化管、眼窩、肺、脳などリンパ節以外の臓器にも発生することがあります。 リンパ腫の種類を大きく分けると、腫瘍内に「大型腫瘍細胞」が見られる「ホジキンリンパ腫」と、それが見られない「非ホジキンリンパ腫」の2種類があります。 B細胞と呼ばれるリンパ球に由来するホジキンリンパ腫は遺伝が関与しているといわれ、20~30代の若い患者さんが多い一方、悪性度の高い非ホジキンリンパ腫は高齢の患者さんが多く、ウイルス感染などが原因だといわれています。

悪性リンパ腫の種類

悪性リンパ腫は、リンパ腫組織の形態や細胞の性質によって、さまざまなタイプに分類されます。最新の世界保健機関(WHO)の分類では、50種以上に分けられますが、大きく分けると、「ホジキンリンパ腫」とそれ以外の「非ホジキンリンパ腫」という2つのタイプに分かれます。日本人に多いのは非ホジキンリンパ腫で、悪性リンパ腫全体の90%以上を占めます。 ホジキンリンパ腫の種類には「古典的ホジキンリンパ腫」と「結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫」が、非ホジキンリンパ腫の種類には「B細胞リンパ腫」、「T細胞リンパ腫」、「NK細胞リンパ腫」などがあり、さらにその中でも細かく分かれています。 悪性リンパ腫の種類 ホジキンリンパ腫 -古典的ホジキンリンパ腫 -結節性リンパ球優位性ホジキンリンパ腫 非ホジキンリンパ腫 -前駆リンパ系由来 --B細胞リンパ芽球性白血病/リンパ腫 --T細胞リンパ芽球性白血病/リンパ腫 -成熟B細胞由来 --慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫 --濾胞性リンパ腫 --MALTリンパ腫 --リンパ形質細胞性リンパ腫 --マントル細胞リンパ腫 --びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 --バーキットリンパ腫 など -成熟T/NK細胞由来 --末梢T細胞リンパ腫 --成人T細胞白血病/リンパ腫 --節外性NK/T細胞リンパ腫、鼻型 --皮膚のリンパ腫(菌状息肉症、セザリー症候群)など

悪性リンパ腫の原因

一部の種類を除いて、悪性リンパ腫の原因は明らかになっておらず、遺伝子変異やがん遺伝子活性化が関与すると考えられています。成人T細胞白血病/リンパ腫(ATL)では、ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)への感染が原因とされ、また、ホジキンリンパ腫の一部では、EBウイルス潜伏感染の関与もその原因として示唆されています。

悪性リンパ腫の症状

初期には、首や脇の下、足の付け根など「リンパ節」が多い部分で痛みのない「しこり」が現れます。まれに、痛みがあることもありますが、ほとんどの場合痛みを伴いません。 進行すると、発熱や全身の倦怠感、体重減少、皮膚の赤み、腫れ、かゆみ、嘔吐などさまざまな症状が現れます。また、体のかゆみや皮膚の発疹、腫瘤によって気道や血管、脊髄などが圧迫されると、気道閉塞や血流障害、まひなどを引き起こすこともあります。 さらに、悪性リンパ腫がほかの臓器や器官へ広がると、それぞれの転移先特有の症状が出現します。肺や気道など胸部では呼吸困難や気道閉塞、咳などの症状が、肝臓では黄疸や腹水、骨では骨痛などが起こり、緊急で治療が必要なこともあります。

悪性リンパ腫の検査と診断

悪性リンパ腫の診断・治療方針を決定するためには、さまざまな検査が必要です。検査は、診断や病気の広がり(病期)を調べることや、治療を安全に行うことができるかどうか、全身の状態を確認するために行われます。 まずは、症状や既往歴などを問診し、腫れているリンパ節を確かめるために触診を行います。その後、血液検査や尿検査、リンパ節を採取して顕微鏡で観察する病理検査、骨髄の中にリンパ腫の細胞があるかどうかを確かめる骨髄検査・髄液検査などを実施します。 診断が確定した後には、リンパ腫が体内に広がっているのかを確認したり、治療法を決定したりするため、コンピュータ断層撮影(CT)や磁気共鳴画像診断装置(MRI)などの画像診断検査や陽電子放射断層撮影(PET)検査などを行います。 悪性リンパ腫が広がっている場合は、転移先の臓器に合わせて内視鏡検査や脳脊髄液検査などを実施することもあります。また、ウイルスに感染すると合併症が起こりやすくなるため、感染の有無を調べる場合もあります。 悪性リンパ腫患者さんに対して行われる主な検査 病期(ステージ)や全身状態を調べる検査 ・血液検査、尿検査 ・画像検査…X線検査、超音波検査、CT検査、MRI検査 ・PET検査 治療の効果判定を行うための検査 ・骨髄検査 ・消化管内視鏡検査 ・脳脊髄液検査

悪性リンパ腫の治療

悪性リンパ腫の主な治療法は「化学療法」と「放射線治療」です。これらの治療効果が十分でない場合は、さらに強い化学療法や造血幹細胞移植などが行われます。 ただし、悪性リンパ腫の種類や進行度合いによって治療法は異なります。ホジキンリンパ腫では、抗がん剤などを用いる化学療法と放射線治療が、非ホジキンリンパ腫では化学療法による治療が中心になります。また、治療は適切な病理診断や全身状態も考慮して決定します。 <薬物療法> 悪性リンパ腫の中心的な治療は薬物療法です。細胞障害性抗がん剤(抗がん剤)や分子標的薬を注射/点滴、または内服することで、がん細胞を消滅させたり小さくしたりすることを目的として行われます。薬剤は全身に行き渡るため、腫瘤のある部分だけではなく、別の部分に発生した検査ではわからないような小さな病変にも効果があります。 化学療法 抗がん剤には、たくさんの種類があり、悪性リンパ腫の病型によって通常4~5種類の抗がん剤を組み合わせる多剤併用療法が行われます。入院や外来治療で、通常3~4週間を1コースとし数コース行います。 分子標的療法 分子標的薬はがん細胞に特徴的な分子を標的とした薬剤です。従来の抗がん剤と組み合わせて投与することもあります。代表的な分子標的薬としては、B細胞の表面にある「CD20」という分子を標的とするリツキシマブなどがあります。 <放射線治療> 放射線治療は、高エネルギーのX線を体の外から照射して、がん細胞を破壊し損傷させて、がんを消滅させたり小さくしたりする効果があります。病巣が1ヶ所で小さい場合(I期)や早期のリンパ腫(I期または隣接するII期)などに単独で行ったり、短期間の化学療法と併用したりすることがあります。 <造血幹細胞移植> 造血幹細胞移植は、化学療法や放射線治療などを行った後に、骨髄機能を回復させるため事前に採取した造血幹細胞を投与する治療です。標準的な化学療法や放射線治療を行っても再発する可能性が高い場合や再発した場合などに行われます。 <無治療経過観察> 悪性リンパ腫の中には、ゆっくりと進行する種類のものがあり、何年間も症状がない状態で経過することがあります。このような場合、治療を行う利点がないため、定期的な診察や画像検査を継続し、腫瘍が増大したり、何らかの症状が出たりした時点から治療を行うという方針を取る場合もあります。

悪性リンパ腫セミナー

講 師:伊豆津 宏二 先生(国立がん研究センター中央病院 血液腫瘍科) テーマ:悪性リンパ腫

悪性リンパ腫の臨床試験

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多発性骨髄腫とは

多発性骨髄腫の概要

多発性骨髄腫とは血液がんの一種です。血液細胞の1つである「形質細胞」ががん化します。形質細胞ががん化した骨髄腫細胞は、身体のいたるところで(多発性)の骨髄で異常増殖し、さまざまな症状(合併症)が発生します。 血液細胞のリンパ球の中には、免疫を司るT細胞とB細胞があり、B細胞はウイルスや細菌などの異物を見つけると「形質細胞」に変わり、抗体(免疫グロブリン)を作り、攻撃することで身体を守ります。この「形質細胞」ががん化すると、異物を攻撃できず、役に立たない抗体「Mタンパク(異常免疫グロブリン)」を産生します。 そして、がん化した形質細胞(骨髄腫細胞)があちこちで無秩序に増殖して、さまざまな臓器の働きを阻害します。

多発性骨髄腫の種類

多発性骨髄腫にはさまざまな種類があります。最も多いのは「症候性多発性骨髄腫」です。ほか、良性単クローン性高ガンマグロブリン血症(MGUS)や無症候性骨髄腫(くすぶり型)、非分泌型骨髄腫、骨の孤立性形質細胞腫などがあります。

多発性骨髄腫の原因

多発性骨髄腫の原因は、これまでのところよくわかっていません。50歳ごろから年齢が上がるに従って発症率は高まり、高齢者に多いことが知られています。遺伝を心配する人もいますが、一般的に遺伝することはないと言われています。

多発性骨髄腫の症状

多発性骨髄腫では、骨髄腫細胞の増殖によって、正常な血液細胞をつくる造血機能の低下、血液中や尿中のMタンパクの増加、骨の破壊などが起こります。これにより、多くの患者さんに、骨の痛みや圧迫骨折、免疫機能の低下、貧血、高カルシウム血症など、さまざまな症状が生じます。

多発性骨髄腫の検査と診断

多発性骨髄腫は基本的に、診察、血液検査、尿検査、骨レントゲン検査で総合的に診断します。確定診断には、腰の骨から骨髄液や骨髄組織を採取する「骨髄検査」が必要です。さらに、画像診断(骨レントゲン、必要に応じてCT、MRIなど)で病気が広がっている範囲を確認します。 血液検査 血液検査では、血液細胞(赤血球、白血球、血小板)の数、Mタンパクやそのほかのタンパクの有無と量、β2ミクログロブリンやアルブミンの量などを確認します。 尿検査 尿検査では、24時間尿をためて尿中へのMタンパクの排出量を調べます。 骨髄検査(骨髄穿刺、骨髄生検) 骨髄検査(骨髄穿刺、骨髄生検)とは、局所麻酔をして腸骨(腰の骨)に細い針を刺し、骨の中にある骨髄液や組織を採取する検査です。採取した骨髄液や組織を顕微鏡で確認し、骨髄腫細胞の有無や形、割合を調べます。骨髄以外の場所が腫れている場合は、その部分の組織を採取して骨髄腫細胞の有無を確認します。さらに、骨髄液を解析して染色体異常の有無をみる染色体検査で、悪性度が高く進行が早いタイプなのかを診断する場合もあります。 画像検査 骨レントゲン検査、CT(コンピュータ断層撮影)検査、MRI(磁気共鳴画像)検査、PET(陽電子放射断層撮影)検査などの画像検査は、病気の広がりや圧迫骨折、病的骨折、脊髄圧迫といった骨病変の有無を調べるために必要です。

多発性骨髄腫の治療

多発性骨髄腫の治療は、骨髄腫細胞に関連した腎機能障害、骨折など臓器障害や疼痛などの症状が出現した場合に検討されます。その治療は、薬物療法が中心となります。従来から用いられているメルファランなどの「細胞障害性抗がん剤」(以下、抗がん剤)とステロイド剤に加え、現在ではボルテゾミブ、レナリドミド、サリドマイド、ポマリドミドなどさまざまな薬剤が承認されており、これらを組み合わせた薬物療法が行われます。 また、病態によっては、治療開始前から重大な合併症を併発していることもあり、骨髄腫そのものに対する治療よりも合併症への治療を先行させる場合もあります。 多発性骨髄腫の初期治療 多発性骨髄腫とはじめて診断された場合、骨髄腫細胞を減少させるためにまずは薬物療法を行い、条件が合う患者さんでは大量抗がん剤投与を併用する造血幹細胞移植(自家移植)を行います。 ■移植ができる患者さん(65歳以下)の場合 一般に、重要な臓器の機能が保たれている65歳以下の患者さんに対しては、自家移植を考慮します。自家移植を行う前に骨髄腫細胞を減らす目的で、まずは薬物治療が行われます。これは導入療法と呼ばれ、その施行後に各種の検査によって治療効果を判定。自家移植が行えるかどうかを検討します。 治療効果の判定は、「Mタンパク」を指標とします。治療開始以前と比較して、血液中または尿中のMタンパクが一定程度以上減少した場合には、「奏効した」と判定されます。 導入療法が奏効した場合、造血幹細胞採取という処置を行い、造血幹細胞を十分量採取した上で、自家移植を実施します。自家移植では、抗がん剤「メルファラン」を大量に使用(=大量メルファラン療法)することで、高い抗腫瘍効果が期待されます。初期治療によっても奏効状態に至らなかった場合には、他の導入療法に切り替えます。 ■移植を行わない患者さん(66歳以上)の場合 一般に、66歳以上の患者さんや65歳以下でも重要な臓器の障害などのために自家移植を行えない患者さんでは、ボルテゾミブやレナリドミドなどの薬剤を中心とした多剤併用療法が行われます。また、年齢や末梢神経障害、血栓症などのリスクや肺の合併症などにより、これらの薬剤が使用できない患者さんでは、従来のMP療法(メルファラン+プレドニゾロン)などの治療法が選択されることもあります。 再発・難治性多発性骨髄腫の治療 多発性骨髄腫が再発した場合や進行・治療抵抗性の場合は、ボルテゾミブやレナリドミド、サリドマイドに加え、カルフィルゾミブやポマリドミドなどの薬剤が承認されており、一定程度の治療効果が報告されています。これらの薬は、一般的にデキサメタゾンと併用します。

多発性骨髄腫の臨床試験

多発性骨髄腫の治験について、ご相談はこちら 関連リンク オンコロ「白血病」 オンコロ「悪性リンパ腫」 オンコロ「多発性骨髄腫」
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