マントル細胞リンパ腫とは?治療法・薬剤・治験ほか関連情報悪性リンパ腫のひとつ


  • [公開日]2020.02.12
  • [最終更新日]2022.02.02

マントル細胞リンパ腫とは

マントル細胞リンパ腫は、悪性リンパ腫という血液がんの1つです。悪性リンパ腫は、血液中のリンパ球ががん化して異常に増殖し続ける病気です。全身のリンパ管の途中にある「リンパ節」や胸腺・脾臓・扁桃などのリンパ組織に腫瘤と呼ばれるかたまりをつくり、いろいろな症状を引き起こすことがわかっています。

悪性リンパ腫には、「ホジキンリンパ腫」と「非ホジキンリンパ腫」があります。マントル細胞リンパ腫は、リンパ球の中のB細胞から発生する非ホジキンリンパ腫で、月単位で病気が進行する「中悪性度」に分類されます。

マントル細胞リンパ腫の明確な原因は、現在のところ不明です。染色体異常によって細胞分裂周期に関わる特定の遺伝子が過剰に発現することが原因のひとつと考えられています。診断時の年齢の中央値は68歳。性別は3:1の比率で男性に多い病気です。

マントル細胞リンパ腫で最もよくみられる初発の症状は、「痛みのないリンパ節の腫れやしこり」で、多くの場合は「頸部(けいぶ)や鎖骨上窩のリンパ節腫脹」によって発見されます。全身の症状としては、発熱、体重減少、大量の寝汗がみられることがあり、「B症状」と呼ばれています。発熱は微熱程度のこともありますが、発熱と解熱を繰り返す「ペル・エプスタイン型発熱」という症状もあります。

マントル細胞リンパ腫治療の考え方

現時点ではマントル細胞リンパ腫の標準治療は確立していません。多くの症例が「進行期」で診断されるため、生存率や治癒率の向上を目的とした臨床試験が進められています。

病期ステージ)は、限局期(I期、II期)と進行期(IIx期、III期、IV期)に分類され、治療方針はそれぞれ異なります。

限局期の治療

限局期では、病変のあるリンパ節に放射線治療を行います。また、放射線治療と化学療法が併用されることもあります。

進行期の治療

進行期の基本的な治療は、化学療法と分子標的薬リツキシマブの併用療法です。まれに、高齢者で病気が非常にゆっくりと進行する場合、無治療経過観察とすることがありますが、はっきりとした指標はありません。病勢が進行した場合、適切な化学療法を行う必要があります。

65歳以下で造血幹細胞移植可能な場合
65歳以下で造血幹細胞移植が可能な患者さんでは、大量の抗がん剤を投与した後、骨髄機能を回復させるために保存しておいた患者さん自身の造血幹細胞を移植する「自家造血幹細胞移植」を行い、治癒を目指します。

66歳以上または造血幹細胞移植ができない場合
66歳以上または65歳以下で造血幹細胞移植ができない患者さんでは、化学療法としてR-CHOP療法(またはその類似療法)を行います。また、ボルテゾミブがマントル細胞リンパ腫に使用できるようになったため、R-CHOP療法で使用する薬剤をボルテゾミブに置き換えることで、より高い治療効果が期待されています。

難治性の場合/再発時の治療

はじめに行った治療で奏効に至らない難治性の場合や、再発した場合は、救援化学療法として、初回とは異なる化学療法を選択します。例としては、フルダラビン、クラドリビン、ベンダムスチンといった薬剤を単剤で投与する、あるいはリツキシマブと併用します。放射免疫療法薬である90Yイブリツモマブチウキセタンというお薬を単剤で投与することもあります。

マントル細胞リンパ腫の治療法とお薬

造血幹細胞移植

薬物療法や放射線療法で十分な有効性が得られない、標準治療後に再発した、または標準治療が確立していない難治性リンパ腫に対し、大量の化学療法や全身放射線照射で低下した骨髄機能回復を目的として、あるいは救援化学療法で奏効した後の再発予防の目的として、造血幹細胞移植が行われます。

※造血幹細胞移植の詳しい説明はこちら⇒悪性リンパ腫の造血幹細胞移植について

放射線療法

involved-field radiotherapy(IFRT)
リンパ腫病変が確認されたリンパ節の所属リンパ節領域と、リンパ腫病変が確認された節外病変に、一定のマージンを設定した部位に対して行われる放射線療法のことです。

主な薬物療法

マントル細胞リンパ腫の治療では、以下のような治療法が行われることがあります。

・COP療法(シクロホスファミド、ビンクリスチン、プレドニゾロン)
・CHOP療法(シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾロン)
・R-CHOP療法(リツキシマブ+CHOP療法)
・VR-CAP療法(ボルテゾミブ+リツキシマブ+CAP療法)
・BR療法(ベンダムスチン、リツキシマブ)

主なお薬

マントル細胞リンパ腫の治療では、主に以下のお薬が使用されます。これ以外のお薬が用いられることもありますので、その使用可否については必ず主治医にご確認ください。

・シクロホスファミド(製品名:エンドキサン)
ドキソルビシン(製品名:アドリアシン、ドキシル)
ビンクリスチン(製品名:オンコビン)
・プレドニゾロン(製品名:プレドニン)
リツキシマブ(製品名:リツキサン)
シタラビン(製品名:キロサイド
ベンダムスチン(製品名:トレアキシン)
ボルテゾミブ(製品名:ベルケイド)
フルダラビン(製品名:フルダラ)
・イブルチニブ(製品名:イムブルビカ)
・クラドリビン(製品名:ロイスタチン)
・90Yイブリツモマブ チウキセタン(製品名:ゼヴァリン)

マントル細胞リンパ腫の治験

日本国内の臨床試験登録サイト「JAPIC」と「jRCT」に「マントル細胞リンパ腫」として登録のある試験情報です。参加者の「募集前」から「募集中」までの情報を掲載しています。

【JAPIC】未治療のマントル細胞リンパ腫患者を対象としたベンダムスチン+リツキシマブ(BR)療法単独とBR療法とacalabrutinib(ACP-196)との併用を比較検討する無作為化、二重盲検、プラセボ対照、多施設共同、第III相試験/参加者募集中

【JAPIC】SyB L-0501RI(ベンダムスチン塩酸塩注射液剤)の10分間点滴静脈内投与時の安全性、忍容性を検討する第I/II相臨床試験(多施設共同オープンラベル試験)/参加者募集中

【JAPIC】難治性のCD20陽性B細胞性非ホジキンリンパ腫を対象としたFCAR-CD20療法の安全性、忍容性及び薬物動態を検討する第1相臨床試験/参加募集中

【JAPIC】日本人の成熟B細胞性悪性腫瘍患者を対象にzanubrutinibを検討する第1/2相試験/参加募集中

【JRCT】前治療歴のあるBTK阻害剤未投与のマントル細胞リンパ腫患者を対象にLOXO-305と治験医師が選択するBTK阻害剤を比較する非盲検無作為化第III相試験/募集中

【JRCT】PCI-32765(イブルチニブ)の第3b 相,多施設共同,非盲検,長期継続投与試験/募集中

※2022年2月2日確認

マントル細胞リンパ腫に関するリンク

オンコロ内外問わず、マントル細胞リンパ腫に関連する情報がまとまっているページのリンク集です。

オンコロ内のリンク

・オンコロ 記事一覧 マントル細胞リンパ腫
・オンコロ がん種一覧 悪性リンパ腫

外部参考リンク

造血器腫瘍診療ガイドライン2018年版 第II章 リンパ腫 4 マントル細胞リンパ腫
・国立がん研究センター がん情報サービス マントル細胞リンパ腫

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