胃とは
胃とは、食道と十二指腸の間にある袋状の臓器で、おおまかに胃底部・胃体部・幽門部の3つの部位からできています。
また胃壁は内側から順に、粘膜、粘膜下層、固有筋層、漿膜下層、漿膜の5層に分けられています。
胃の中に入った食べ物は、胃壁の運動と消化酵素や胃液の働きによって消化され、幽門を通って十二指腸へと送られます。
胃がんとは、胃の内側を覆っている粘膜の細胞が異常に増殖することで発生します。
胃がんの罹患率と生存率
日本において胃がんと診断された患者数は、2019年の報告では124,319例(男性85,325例、女性38,994例)であり、男性の割合が女性の約2倍となっています。
胃がんの病期毎の5年ネットサバイバルは、I期:92.8%、II期:66.6%、III期:41.4%、IV期:6.7%と報告されています。[
院内がん登録生存率集計(2015年5年生存率)]
胃がんの原因
胃がんの原因となり得るリスク因子のひとつは、ピロリ菌への感染です。ピロリ菌感染による胃炎から慢性萎縮性胃炎、腸上皮化生を経て分化型腺がんに至ると考えられています。
胃がんの8割近くはピロリ菌感染が原因との報告もありますが、日本での感染率は高齢であるほど高く、衛生環境の改善などにより若年者の感染率は低くなってきています。
また、塩分の過剰摂取による胃粘膜のダメージや、喫煙などの生活習慣によっても、胃がんのリスクが上がることが分かっています。
胃がんの症状
胃がんは、自覚症状がないまま進行することが多く、早期発見が難しいがんのひとつです。
腹部の不快感から始まり、進行すると食欲不振や悪心・嘔吐などが起きてきます。またがんからの出血によって黒色の便が出たり、貧血が起きたりすることもあります。
これらは胃炎や胃潰瘍でも起こり得る症状であり、内視鏡検査の際にたまたまがんが見つかるケースもあります。
さらに進行すると、体重減少や腹水がたまることによる腹部膨満感、嚥下障害などがみられるようになります。
胃がんの種類と予後
胃がんの9割を占める腺がんは、分化度によって分化型と未分化型に分類されます。
分化型はピロリ菌との関連が強く、比較的高齢者に多いタイプです。がん細胞は塊を作ってゆっくりと進行していきます。
一方の未分化型は若年者に多く、がん細胞がぱらぱらと胃の全体に広がりながら増殖し、同時に胃壁が分厚く硬くなっていきます。
未分化型のがんは発見が難しく、小さくてもリンパ節に転移しやすいため、分化型と比べて予後不良と言われています。代表的なものにスキルス胃がんがあり、粘膜表面に目立った病変を示さないまま高速に進行・浸潤していくため、早期発見が特に難しいがんです。
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上部消化管造影検査(いわゆるバリウム検査)や内視鏡検査による検診の普及に伴って、早期に発見されるケースも増えてきています。