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第15回日本臨床腫瘍学術学会(JSMO)レポート part.2 ~ペイシェント・アドボケイト・プログラムに参加して~

[公開日] 2017.08.08[最終更新日] 2017.08.08

2017年7月26日から27日にかけて開催されたJSMO。今年の特徴は、神戸会場と岡山大学鹿田キャンパス内Junko Fukutake Hallを同時中継し、各地の患者会などの団体から活動を発表する相互交流プログラムが実施されました。Part.1レポートに引き続き、乳がんサバイバーであるオンコロスタッフの中島がお伝えします。

ペイシェント・アドボゲイト・プログラム(以下:PAP)とは?

英語で表すとPatient Advocate Program。日本語に訳するとPatient=患者、Advocate=代弁者。患者さんの代表として、各々の活動を発表するプログラムです。 より良いがん医療環境実現のためには、学会のようなアカデミアや医療者だけではなく、患者さんやご家族も含めあらゆる医療に関わる、または関係を持つ人々が、がん医療の進歩や課題を共有し、新たな時代を切り拓いていかねばならないと考えられ、今回の学術集会のテーマにあるように、『いつでも、どこでも、誰でも』が、最適ながん医療を受けられる社会の実現に向け、学び合う機会を目的に設けられました。

わかりやすいプログラム

PAPは、学会3日間を通じて、同じ会場で朝9:30より連日開催されました。 司会進行は、認定NPO法人キャンサーネットジャパン 理事 川上祥子さんが会期中を通して務められ、そのスムーズな進行は岡山会場との交流を盛り立ててくださいました。 ご参加者のそのほとんどが患者さんやそのご家族のため、がんについて学ぶ機会として、医療従事者からは非常にわかりやすい内容のご講義が発表されました。 11月のOMCEセミナーでご講義される大野 智先生(大阪大学大学院医学系研究科 統合医療学寄附講座 准教授)からは「エビデンスってなんだろう」をテーマにご登壇いただきました。よく耳にする『エビデンス』とは、「医学において、臨床結果などの科学的根拠。その治療法がよいとされる証拠。」という意味です。治療方針を決定する際、主治医から「エビデンスに基づいて~・・・」という説明を耳にする場面が多いと思います。 よく聞く言葉だからこそ、いま一度立ち返って学ぶことができました。日本の医療においては、「エビデンスに基づいた治療」=「標準治療」が、最良の医療と考えられています。 このように、先生方からはがん治療に関わる、副作用対策からリハビリテーションの重要性、緩和ケアとはどのようなものか、など、基本的かつ重要なテーマが取り上げられました。

相互交流プログラム

昨年のJSMOでもPAPのプログラムは存在していましたが、2017年度の最大の特徴として、岡山会場と同時中継し、公開講座形式で積極的な意見交換が行われたことが挙げられます。 神戸会場からの発表は岡山会場のスクリーンに、また岡山会場からの発表は神戸会場のスクリーンに中継され、会場は離れていても双方の参加者同士が一体感を持てる時間となりました。 『オンコロな人』でご登場いただいた、一般社団法人キャンサーペアレンツ代表の西口 洋平さんNPO法人 肺がん患者の会「ワンステップ!」代表の長谷川一男さんや、希少がんである肉腫の患者会「肉腫(サルコーマ)の会 たんぽぽ」代表の押田 輝美さんなどが、「患者会の活動」や「がん医療向上のために患者ができること」をテーマにご登壇されました。 岡山で活動をされている団体からも多くの日々の活動が発表され、全国各地で患者会が地元に根付き、ご自身の体験を生かされてご活躍されていることを非常に心強く感じました。

サバイバー同志が支え合う時代

神戸、岡山、各会場からは積極的な質疑応答が同時中継されました。各患者会団体からの発表は、それぞれに特徴を持つ活動をされており、非常に興味深く聴講させていただきました。 事実、自身も治療の真っ最中に患者会に助けられた一人です。きつい治療に気持ちがついていけなくなりそうだった時、主治医の答えは「この病院の心療内科は予約でいっぱいだから、自宅近辺のクリニックを探してみては?」のアドバイスに、当時の自分は主治医から見放された気持ちになりました。その時に支えとなり救ってくれたのは、患者会の存在でした。 間違った解釈をすればエビデンスのない医療に導かれてしまうインターネット社会である一方、患者会の存在を教えてくれたインターネットに感謝しています。 健康な人からみれば表現は悪いかもしれませんが、“同病相哀れむ”と映るかもしれません。逆を言えば“同病だからこそ、分かり合える、支え合える“ことが患者会の大きな存在意義とも言えます。 患者の精神的ケアは、患者会の皆さんが大きな役割を担っているのが現状です。相互交流プログラムは、より多くの医療者の方々に聴講いただきたかったプログラムでもありました。

がんと対峙する新薬を

神戸会場のご参加者のおひとりから、ご意見が挙がりました。 「私はがんを患ってから長い闘病生活を続けている。この世の中からがんを治す薬を一刻も早く開発して欲しい。そのためには、自分がモルモットになっても全く構わない。どうか、一刻も早くがんの薬の開発を!」。 がんの治験・臨床の情報を発信しているサイト『オンコロ』のスタッフとして、このご意見は胸が締め付けられる想いで聞いておりました。 “モルモット”という表現にまず驚きました。子どもの頃、理科の実験で聞いた程度の言葉が、患者さんご自身から発せられた瞬間は、会場が真摯で緊張した空間となりました。 私たちオンコロのミッションは、がん患者さん・ご家族、がん医療に関わる全ての方々に対し、がんの臨床試験(治験)・臨床研究を含む有益ながん医療情報を一般の方々にもわかるような形で発信することです。 私たちが発信する臨床・治験情報の提供は、患者さんやそのご家族の悩みに寄り添いながらご紹介する事を常に念頭においています。 このご意見が、医療に尽力されているどれほどの方々に伝わったでしょうか。一日も早いがんを治す素晴らしい新薬の開発を、今後も願わずにはいられません。 オンコロのビジョンである、がん患者さん・ご家族、がん医療に関わる全て人々がつながり、がんの臨床試験(治験)の活性化及びより良いがん医療環境の実現に資することが、夢だけで終わらぬよう、このご意見を忘れずに、オンコロはこれからも有益な情報を発信していきます。
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中島 香織

広告業界、放送局業界、コンサート・舞台企画業界を経て1年間渡米留学。帰国後は、外資系企業に就業。イベントマネージャーとしてPR,マーケティング業務に携わる。がん情報サイト「オンコロ」では、主にイベント運営、Webサイトの更新、コラム投稿に従事。宣伝会議コピーライター養成講座修了、乳がん体験者コーディネーター(BEC)11期生。

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