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【オンコロメルマガ】QOLの向上:緩和ケアについて[Vol.115]

[公開日] 2019.06.19[最終更新日] 2019.06.19

オンコロの中島です。 現代社会において、2人に1人ががんに罹患するといわれている時代、その治療はもとより QOL(Quality Of Life:生活の質)の重要性も、さまざまなニュース記事に取り上げられ、 ここ数年で注目が高まってきたようです。 治療中のQOLをできるだけ下げず、できるだけ通常の生活を送ることが良いと解釈されていますが、 治療が一段落した後も、このQOLの大切さを身に染みて感じています。 私は術後、術側の腕がなかなか挙がらなかったことに悩まされました。 放射線治療はバンザイの姿勢で受けるため、術後1カ月後に予定していた放射線治療の開始を延期せざるを得ませんでした。 放射線科の医師にも「なるべく早めに腕が挙がるように」とアドバイスを受け、気持ちは焦るばかりでしたが、その姿勢をとろうとすると痛みが伴うので、主治医に「痛みの専門科の予約を取って欲しい」旨、自分からお願いをしました。 紹介された科は「ペイン科」です。 麻酔科と併科しており、ペイン科の担当医は緩和認定の資格もお持ちの麻酔科医でもあります。 毎月1回、緩和ケア診察のために、今も継続的に通院しています。 日本において、「緩和」という言葉は、ネガティブに解釈される傾向にありますね。 ここで緩和ケアの誤解を、オンコロ・メディカル・サポーターを務めてくださっている、 日本医科大学武蔵小杉病院 腫瘍内科 教授 勝俣範之先生がSNSで発信されていらっしゃる 項目を引用させていただきます。 <緩和ケアの誤解> その1.モルヒネは、がん患者さんしか使えない・体力がないとモルヒネが効かない。 その2.緩和ケアとは、何もしないで、ただ、死をまつばかりのことである。 その3. 抗がん剤やその他の治療を止めて、緩和ケアのみとすると、すぐに死んでしまうので、 少量抗がん剤でも、代替療法でも何かやっているのがよい。 その4. がん性腹水は、抜くと途端に体力がなくなるので、なるべく抜かないほうがよいし、 抜くとしてもいっぺんに抜かないほうがよい。腹水を抜くなら、CART(腹水濾過再静注) のほうが抜くだけより、効果が ある。 その5. 緩和ケアより、安楽死のほうが苦痛が少ない。 上記はすべて解釈の間違いです。 『緩和ケアとは、がん患者のQOLを高めることを目標とし、がんに伴う、身体的、 精神的、社会的 な症状・問題を軽減し和らげる医療、ケアのこと。 がん末期の体の症状の軽減のみを指すとの誤解もあるが、早期がんの人も含め、 がんと診断された時点から体や心、社会的な諸問題を改善するために、 いつでも必要なときに提供されるものである。』(*1) *1 もっと知ってほしい患者さんのためのがん医療用語とお薬 (製作:認定NPO法人キャンサーネットジャパンより) http://www.cancernet.jp/ganyougo 「緩和ケア=もう手の施しようがなく、最後に頼る治療法」のイメージがつきまといがちですが、術後ずっとこの緩和治療のお世話になっている私は、普通の生活を送ることができています。 治療も、私の状態を都度確認のうえ服薬の調整をしてくださり、世間話をしてお互い笑いもおこりながらの診察内容であり、診察室に悲壮感はまったくありません。楽しい会話による言葉の治療とでも解釈していただくとご理解いただきやすいかもしれません。 病気から起こる「痛み」は患者本人にしか状態がわからないので、患者本人から声を発していかない限り、QOLが高くなることは容易ではないと思います。 病から発生する「我慢は美徳」ではないのです。 現在痛みや不快感を抱いておられる患者さんが、自分の身体の状態を十分に把握され少しでもQOLの向上に繋がるような道が見つかりますよう、1人のサバイバーとして願っています。 中島 香織
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