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休職中の給与はどうなる?傷病手当金の基本 社会保険労務士が教える - お金にまつわる制度の使いこなし方 -Vol.3

[公開日] 2025.06.02[最終更新日] 2025.05.28

仕事を続けることが難しくなり、休職を余儀なくされる状況は誰にでも起こり得ます。そのような時、生活を支える公的な制度を知っているかどうかは非常に重要です。今回は、休職時に活用できる主な社会保障制度として「傷病手当金」について解説します。
【監修・解説】 社会保険労務士事務所Cancer Work-Life Balance代表 千葉大学医学部附属病院がん相談支援センター特任研究員 清水 公一氏

まず確認すべきこと:休職中の給与はどうなる?

休職する際にまず確認したいのは、ご自身の会社の就業規則です。休職期間中の給与が支給されるのか、支給される場合はどのくらいの期間なのかを把握しましょう。 もし、休職中に給与が支給されない、または減額されるのであれば、「傷病手当金」の利用が第一の選択肢となります。一方で、給与が満額または一定額支給される場合は、傷病手当金は支給されません(支給される給与が傷病手当金の額より少ない場合は、差額が支給されます)。給与が支給される場合には、本シリーズ別稿でも紹介している「障害年金」の受給を検討することになります。

傷病手当金の基本

傷病手当金は、健康保険(社会保険)に加入している被保険者本人が対象となる制度です(残念ながら、国民健康保険の加入者や、被保険者の扶養に入っている方は対象となりません)。業務外の病気やけがの療養のために働くことができず、給与の支払いがない場合に、収入のおおよそ2/3に相当する額が支給されます。

傷病手当金の受給額と期間

かつて傷病手当金の支給期間は、「支給開始日から」1年6ヶ月と定められていました。しかし、令和4年1月の法改正により、「支給開始日から通算して」1年6ヶ月へと変更されました。これは、治療のために一時的に復職し、その後再び休職するといったケースに対応するための改正だとされています。 例えば、がん治療で手術のために1ヶ月休職し傷病手当金を受給した後、復職して働いていた期間があったとします。その後、再発などで再度休職が必要になった場合でも、以前の制度では最初の支給開始日から1年6ヶ月が経過していれば、それ以上受給できませんでした。しかし改正後は、復職していた期間を除き、トータルで1年6ヶ月分の支給を受けられるようになったのです。この改正は、がん患者さんをはじめとする長期療養が必要な方々の声が反映された結果であり、治療と仕事の両立を支える大きな前進と言えます。

受給のための4つの条件

傷病手当金を受給するには、以下の4つの条件をすべて満たす必要があります。
  1. 業務外の事由による病気やけがの療養のための休業であること
  2. 仕事中のけがや職業病(労災保険の対象)は含まれません。がんの場合、アスベスト吸引による肺がんや中皮腫、特定の化学物質曝露による胆管がんなど、一部労災認定されるケースもありますが、多くは私傷病として傷病手当金の対象となります。
  3. 仕事に就くことができないこと
  4. 医師の診断に基づき、療養のために労務不能(働くことができない状態)であると判断される必要があります。
  5. 連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと
  6. 最初に連続して3日間(待機期間)休み、4日目以降も休んだ場合に、その4日目から支給対象となります。この待機期間には、有給休暇や土日祝日などの公休も含まれます。例えば、体調が悪く有給休暇を2日取得し、翌日が土曜日で休み、月曜日からも続けて休む場合、有給休暇2日+土曜日の合計3日間で待機期間が完成し、月曜日から傷病手当金の支給対象となり得ます。
  7. 休業した期間について給与の支払いがないこと
  8. 前述の通り、給与が支払われている場合は対象外です。ただし、支払われた給与の日額が傷病手当金の日額より少ない場合は、その差額が支給されます。
なお、傷病手当金は日額で計算され、土日祝日などの公休日も支給対象期間に含まれます。支給される日額は、受給開始時の計算に基づいて原則固定され、通算1年6ヶ月間、その額を受け取ることができます。

退職後も傷病手当金を受け取るために:継続給付の注意点

在職中に傷病手当金を受給していた方が、退職後も引き続き給付を受けること(継続給付)ができる場合があります。ただし、これには重要な注意点があります。

【継続給付の条件】

  1. 退職日までに継続して1年以上の被保険者期間があること
  2. 退職する会社で、1年以上健康保険に加入している必要があります。
  3. 退職日に傷病手当金を受給しているか、受給できる状態であること
  4. 退職日時点で、上記の傷病手当金の受給条件を満たしている必要があります。
  5. 退職後も引き続き同じ病気やけがの療養のため、労務不能の状態であること
  6. 医師の診断が必要です。
  7. 【最重要】退職日に出勤しないこと
  8. これが最も注意すべき点です。たとえ挨拶のためだけであっても、退職日に出勤してしまうと、「退職日に働ける状態であった」とみなされ、継続給付を受ける権利を失ってしまいます。お世話になった方への挨拶は、可能であれば別の日に済ませるか、別の方法を検討しましょう。退職後の生活保障に関わる非常に重要なポイントですので、絶対に覚えておいてください。
継続給付を受ける場合、支給期間は在職中からの期間と合わせて通算1年6ヶ月までですが、一度でも働ける状態になったり、別の仕事に就いたりして給付が途切れると、その時点で支給は終了となります。 なお、傷病手当金の継続給付を受ける際、資格喪失後の健康保険は問われないので、必ずしも任意継続被保険者となる必要はなく、家族の扶養や国民健康保険に加入しても問題ありません。

再発時にも希望を繋ぐ「社会的治癒」

一度傷病手当金を受給し終えた後、再び同じ病気が悪化して働けなくなった場合でも、「社会的治癒」が認められれば、同一傷病であっても、もう一度傷病手当金を1日目から受給できます。「社会的治癒」とは、最初の病気の治療後、相当期間にわたって社会復帰(就労など)を果たしていた場合、医学的には治癒していなくても、社会保険上は「治癒したもの」とみなし、再発を新たな病気として扱うという考え方です。 「相当期間」に明確な法的定義はありませんが、私自身の実務上の経験則では、抗がん剤治療などを続けながらであっても、1年以上フルタイムで復職していた場合、社会的治癒が認められ、再度傷病手当金を最初から(通算1年6ヶ月)受給できる可能性があり、2年以上フルタイムで復帰していた場合は、認められる可能性が高まる印象を受けます。最終的な判断は各健康保険組合や協会けんぽが行いますが、事前に保険者に問い合わせても、「申請後に支給の可否について判断します」との回答となり、「社会的治癒」の判断は申請してみないとわからないことがほとんどなので、可能性があるならば2回目の傷病手当金を申請してみましょう。
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