患者団体に聞く! 社会保険労務士事務所「Cancer Work-Life Balance」 清水 公一 さんがん罹患経験を社労士の立場から患者さんへ還元する -「知らなかった」がない支えあいを選択-


  • [公開日]2024.02.02
  • [最終更新日]2024.02.01

はじめに

今回の「患者団体に聞く!」では、ご自身が肺がんに罹患した経験を生かし、社会保険労務士としてがん患者さんをサポートする活動を行っている、清水 公一さんにお話をお伺いします。

オプジーボが変えてくれた僕と家族の未来

濱崎:清水さんには、オンコロが主催・共催するセミナーへのご登壇や、オンコロのチャリティーライブの実行委員としてなど、様々なところでご協力いただいておりますが、今回は社会保険労務士事務所「Cancer Work-Life Balance」の代表としての清水さんにお話をお伺いしたいと思います。

清水:わかりました。よろしくお願いします。

濱崎:まず初めにがんの診断から現在までの事を教えていただけますか?

清水:今から11年前の2012年35歳のときに、肺がんのステージとIbと診断されました。ちょうど、長男が生まれて二か月半後くらいのときでしたね。
その翌年9月に、副腎に転移していることが見つかり、手術でとりました。ですが、1,2か月後に左半身が麻痺し、そこで更に脳に3~4cmの腫瘍があることが分かったのです。それは2013年11月くらいにガンマナイフで治療し、その後12月から抗がん剤治療を始めました。

濱崎:では、最初の抗がん剤治療はオプジーボではなかったのですね。

清水:そうですね。

濱崎:清水さんがオプジーボによって救われたというお話は有名ですが、この2013年終わりの頃から、治療状況はどのような変遷を辿ったのでしょうか?

清水:抗がん剤治療は一次治療シスプラチンアリムタアバスチンをやって、その後、維持療法としてアリムタ、アバスチンを運よく3年ほど継続することができたんです。しかし、その間にも脳転移が5、6回あり、都度ガンマナイフで治療していました。そして2016年には脊髄への転移が見つかってしまい、がん性髄膜炎になってしまったのです。
そのとき医師からも、時間を大切にするよう言われました。ネットで調べてもいいことは書かれておらず、「流石にやばいな」と当時は思いましたね。

濱崎:長い間の闘病の末、そのような状況になってしまったのは、さぞお辛かったかと思います。

清水: ええ。そのため「これが効かなかったら終わるだろうな」という思いで、2016年12月にオプジーボを使い始めました。僕自身、使い始めたときは、どのような人に効くのかわかっていませんでした。

濱崎:最後の頼みの綱だったわけですね。

清水:はい。でも、使ってみたら1ヶ月後に腫瘍マーカーがかなり下がったんです。浮かれちゃあダメだと思ったのですが、2ヶ月後の画像検査で腫瘍のサイズもかなり小さくなっていました。これで家族と一緒に過ごせる時間が持てる、と思いましたね。

濱崎:効果が現れて本当に良かったです。オプジーボはどのくらいの期間使われたのですか?

清水:約8か月ですね。がん性髄膜炎についても、いつ歩けなくなってもおかしくはない状態だったのですが、放射線治療再発する気配がなくなり、オプジーボが効いているんだな、と思いましたね。
しかし、副作用として皮膚炎などの症状は出てしまい、特に口内炎がひどかったです。ワンステップの長谷川さんたちとインドカレーに行った際には、全く食べられませんでしたね(笑)。
また、当時は医療による財政難が話題で、医療が国を滅ぼすとも言われていたんです。副作用も多いし、自分の治療費が財政難に繋がることも気にしていたので、止めようかと主治医に相談しました。すると、そんなことをいう患者さんは初めてだと驚かれましたね。

濱崎:そのお話は初耳なのですが、治療を止められたのは治療費が理由だったのですか?

清水:えぇ、医療財政も大きな理由の一つですよ。

濱崎:そうだったのですね。では、オプジーボを止められてからはどうされたのですか?

清水:縦隔リンパ節にまだ残っていたので、2017年の12月に放射線治療を行いました。その後2018年の2月くらいから今まで幸いにも無治療でいます。

濱崎:進行期の肺がん患者でもオプチーボによる治療により子供を授かることができるまで回復したという事実は本当に多くのがん患者さんの希望になったと思います。ノーベル賞を受賞した本庶先生の感謝の会にも参加いただきましたね。

オンコロ記事【開催リポート】本庶 佑先生ノーベル賞受賞記念「がん患者・家族・遺族、臨床研究者から偉業を称え、感謝を伝える会」

がん患者さんをサポートできる社労士になりたい! 

濱崎:社会保険労務士(社労士)を目指したきっかけはどのようなものでしたか?

清水:治療真っ只中の2015年、同じような境遇の患者さんの中に、障害年金や保障制度を使って生活している人がいるのを見て、自分も使えるのでは?と思い、障害年金を受給しました。
肺がんが脳転移しステージⅣとなったとき、仕事と治療の両方を頑張るより、自分がやりたいことを残された時間でしたいという思いがありました。いかに経済的に困らないで、治療もしながら好きなこと——家族と過ごしたり、乃木坂46を推すことができるのかが大事だったんです。
そのためにどんな保障制度を受けられるのか、どうすれば休職できるのか。そういったことを調べたのが社労士を目指すきっかけになっていたと思います。

濱崎:清水さんが退職され、社労士を目指されたお話は私もお伺いしておりましたが、どのような思いで目指されたのですか?

清水:退職したのは、放射線治療をするというときに休職できる期間が残っていなかったからなんです。加えてそのときは、もし生きる時間がまだ残っているなら、自分の経験を通して患者さんのためにできることがあればいいなとも思っていました。
僕自身、保障制度を受ける際に社労士の方にお世話になった経験もあったことから、社会保障や労働の専門家である社労士を目指そうと勉強を始めましたね。

濱崎:社労士になってからはどのようにご活動されましたか?

清水:がん患者さんが自分らしく生きることサポートしたい、ということでがん患者支援に特化した社労士として、事務所を立ち上げスタートしました。患者さんの相談に乗るというのも、がんに罹患した経験はプラスになりましたね。

濱崎:まさに、がんを経験された社労士だからこそできることですね。

がん患者さんへできること——社労士としての人生がスタート。

濱崎:社労士試験に合格し、社労士事務所「Cancer Work-Life Balance」の開業となったかと思いますが、このあたりについて教えてください。

清水:まず、がん患者さんの支援に特化した社労士をやっているかたがいなかったので、自分がやれば患者さんのためになるのでは、という考えで始めました。

濱崎:立ち上げは大変でしたか?

清水:個人事務所なのでそんなに大変ではありませんでした。
どのような形で相談に来ていただくのか、などを考えていましたね。というのも、患者さんからお金を取るということに抵抗があったんです。
そのため、僕が障害年金の請求をサポートし、無事受給できたらその一部を成果報酬の形でいただいています。

濱崎:それはがん患者さんにとってありがたいですね。また、がん患者さんへの無料相談も実施されていますよね?

清水:はい。僕自身運よく生きながらえているので、その分がん患者さんに貢献できる時間を持ちたいな、という思いで無料のがん相談をやっています。

清水さんの活動:ボランティアと啓発、そして未来への期待

濱崎:実際に活動を開始してからのお話をお伺いしたいのですが、清水さんはボランティアとして対応されている面も多いと思いますが、収入面などはどうなのでしょう?

清水:おかげさまで特に問題なくやれています。とくに今は、企業などから仕事もいただいているので、がん患者さんへは無料で返す、というのができています。製薬会社さんのHPや医療本の監修というのも、社労士という専門性があってできていることなので、うまくやりたいこととがん患者さんへの還元のバランスが取れているのではないかと思います。
やはり患者さんからお金をいただくというのはかなり抵抗があるので、今後もそういった形で活動を広げていきたいですね。

濱崎:活動をするうえで心がけていることはありますか?

清水:相談に来てくれた方が、少しでも前向きに明るくなっていただけるようにしたい、という気持ちがあります。そのため、相談事だけでなく楽しい話がちょっとだけでもできたらと思い、「乃木坂が好きなんだよね」といった話などもしていますね。
また、日本の社会保障制度って自分から手を上げないと使えないのがほとんどなので、そういうのをなるべく多くの方に知っていただけるように啓発活動をしていきたいと思ってもいます。「知らなかったから、その保障制度を受けられなかった」ということがないようにしたいですからね。

濱崎:社労士としての活動以外にされていることを教えてください。

清水:セミナーへの登壇がメインですかね。あまり人前で話すのが得意ではないのですが、啓発をしたいということと、やっていればいつか乃木坂46に辿り着くのではという思いもあります。どちらもまだまだ遠そうなので、地道にやっていくしかないです。

やりがいしかない活動の中、さらにできることを考える

濱崎:活動をしていくうえで何か苦労していることはありますか?

清水:いえ、恵まれていて、特にないかと思います。僕の性格的に、狭いところで人のために役に立っていることにやりがいを感じるので、この活動はやりがいしかないですね。
ですが、もしできるところまで自分でやって、一人では厳しいなとなったら、がん患者さんを雇用するのも一つの手かなと思っています。というのも、がん患者さんが一回仕事を止めてしまうと、再就職をするのはハードルが高い背景があります。障害手帳をもっていれば、また専門的な経験があれば少しやりやすくはあるのですが、実際にはなかなか厳しいんです。

みんなが保障制度を知り、互いに支えあえるようにするために

濱崎:社会に対して何か伝えたいことはありますか?

清水:そうですね。障害年金って、どういう状況で使えるのかなど割と知られていないので、知らなかったから受給できませんでしたということがないよう、お手伝いをしたり動いていきたいと思っています。

濱崎:清水さんのとても誠実でよき人柄があふれた回答が続いていますが、是非、刺激的なコメントもいただきたいと思っています。何か社会に対して物申す!みたいなことはありませんか?

清水:いえ、とくにないです(笑)。でも、こういう世の中になればと思っていることはあります。

濱崎:ぜひお聞かせください。

清水:これは僕自身の考えで、少数派の意見ではあると思いますが、全額自腹だったらその治療を受けるのか、という観点を持った方がいいのかなと思っています。使っている医療費のおおよそが自分の財布から支払われないことが多い中、自分が支払っていないその額分をもし自分が払うことになったら、その治療を受けるのかどうかを気にしたほうがいいのかな、ということです。
お金がなくて新薬が承認されませんでしたという時代になってくる可能性があるわけじゃないですか。医療費による財政難のせいで治療が高額になる薬が承認されなくなる。そんな状況にならないように、国民全員で意識し考えられたらいいな、と思っています。
僕自身、今でもオプジーボを継続してもいいのですが、治療費という観点も一つの理由に今は無治療を選択しています。

濱崎:高額だからという理由のみで治療を行わないというのは、できればあってほしくないことだと私は思いますが、たしかに日本の医療が破綻してしまうのであれば、もっと目を向けるべき問題ですね。なかなか声をあげにくいご意見だと思いますが、とても大切な話だと思います。

無料相談のご紹介

濱崎:最後に一言、記事をご覧になっている方々へメッセージをお願いします。

清水:初回無料相談を行っていますので、もし何か分からないことがありましたらお答えしますので、気軽に聞きに来てください。
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