3月26日、厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課は「治験の実施状況の登録について」という課長通知を都道府県宛てに発出しました。これにより、国内で治験を行う場合は、国内の臨床試験情報登録センターに登録されることが義務付けられることになり、治験を探すがん患者や家族にとっては非常に有益な通知となります。

がんの治験情報は国内サイトで開示することが義務付けられた

治験を行うためには、治験の計画を医薬品医療機器総合機構(PMDA)に届け出る必要があります(業界では治験届と言います)。

この治験届に関わる通知において、

今まで、

「治験の実施状況等を第三者に明らかにし、治験の活性化に資するため、治験計画届を届け出た場合には、国内の治験情報登録センター(Japic-CTI、日本医師会臨床試験登録システム等)に当該治験に係る情報(疾患名・実施医療機関・実施状況等)について登録することが望ましい。(全文抜粋)」

とされていたものが、

「治験の実施状況等を第三者に明らかにし、治験の透明性を確保し、もって被験者の保護、医療関係者及び国民の治験情報へのアクセスの確保、治験の活性化に資するため、治験計画届を届け出た場合には、国内の臨床試験情報登録センター(jRCT (Japan Registry of Clinical Trials)、JapicCTI及び日本医師会臨床試験登録システム) に当該治験に係る情報を登録すること。(以下省略)」

に、変更したのです。

要するに、今までは国内の治験(臨床試験)情報登録センターに登録が望ましいとされていたものが登録することを義務付けられました

更に、登録が義務付けられる治験の範囲は「治験薬等を用いた臨床試験。ただし、健常人を対象とした第I相試験及び生物学 的同等性試験についてはその限りではない。」、

治験情報の登録する時期及び更新は「原則として、最初の対象者が参加する前に治験情報を登録するとともに、患者の 募集状況が変化した場合については更新を行うこと。」

となっていることがとても重要です。これについての詳細は後述します。

日本における臨床試験登録の問題点がどのように変わったか

海外の登録機関に登録すれば問題なかったが、国内登録が必須に

実は、ほとんどの臨床試験の情報は公的機関に登録されています。

何故かというと、2004年9月、国際雑誌編集者国際委員会(ICMJE)にて「ICMJEに参画している雑誌には、事前登録なしに論文の採択をしない」と声明を出しており、有名な医学文献に論文が採択されるためには臨床試験の事前登録が必須となっているからです。

よって、臨床試験情報は事前登録されており、これらの情報は公開されており、日本では、世界保健機関(WHO)にて『大学病院医療情報ネットワーク研究センター(UMIN-CTR)』、『日本医薬情報センター(JAPIC)』、『日本医師会治験促進センター(JMACCT)』を登録機関とし、治験・臨床研究登録機関(JPRN)に認定されています。

ただし、これだけでは一般人は臨床試験情報にアクセスしづらい状況になっていました。

日本において、世界保健機関(WHO)に認定されている登録機関は上記3つの機関となりますが、海外を考えると、米国のNational Institutes of HealthNIHアメリカ国立衛生研究所)が運営する『Clinical Trial.gov』などが存在します。

故に、英語表記のClinical Trials.govに登録すれば、日本の登録機関に登録必要はなく、2017年5月に各登録機関で検索したときの募集中のがん関連の臨床試験は以下のように異なっていました。

よって、日本の登録センターに必ず登録されることが如何に有益であるかは、容易に想像できます。


がん医療共催セミナーin大阪<今こそ、患者・医療者が共にルビコン川を渡る時>白衣を脱いだ医療者・パジャマを脱いだ患者が、がん医療を一緒に考えるセミナー2017より

なお、先程、多くの製薬企業主導の治験が登録されるJAPIC-CTIを調べたところ、「がん×募集中」での検索結果が43件、「癌×募集中」での検索結果が116件と増えていました。26日に通知が出たばかりですが、同日適用とされたため、今後、この数字が増えていくと思われます。
※ただし、今後、治験届を提出する治験というニュアンスにも取れるため、まだまだ時間がかかるかもしれません。

臨床研究・臨床試験・治験の情報がミックスされていた

今回の通知には、国内の臨床試験情報登録センターを『jRCT (Japan Registry of Clinical Trials)』、『JapicCTI』及び『日本医師会臨床試験登録システム』としており、大学病院医療情報ネットワーク研究センター(UMIN-CTR)が明記されていません。

ここからは裏をとっていないため誤っている可能性がありますが、この文言通りであれば、治験の場合、UMINは認められなくなったということです。

既出のスライドでは、UMINの臨床試験登録数も250程度あり、多いと思われた方もいるかもしれませんが、殆どが治験ではなく臨床研究や臨床試験なのです。

本記事では臨床研究や臨床試験と治験の違いの説明は省きますが、多くの患者が求めている情報は治験情報となりますので、UMINは多くの不必要な情報の中に少しだけ必要な情報があるという不便を強いられていました。

代わりとなるjRCT (Japan Registry of Clinical Trials)は4月以降に整備されるということですが、上記が整理されることを期待しています。

【すごく重要】がん関連の早期第I相試験がすべて開示されることに

先ほど、有名な医学文献に論文が採択されるためには臨床試験の事前登録が必須となっていると述べました。

裏を返すと、医学文献への採択を目指さないような臨床試験は登録していないことになります。そして、早期第I相試験の中には文献発表を目指さない試験も存在するのです。

治験情報を探される多くの患者さんは標準療法がなくなった方となりますが、そういった方のほとんどは第2相、第3相試験に参加できないことが多いです。
※注)標準療法が乏しいがん種など、そうでもないケースも存在します。

今まで、このような場合、第1相試験の情報にたどり着きづらいのではなく、たどり着くことは困難だったということです。

今回、登録が義務付けられる範囲は「治験薬等を用いた臨床試験」となっており、全ての第1相試験のアクセス権を得たといっても過言ではないと考えています。

【重要】頻繁な情報が義務付けられた

登録情報には「患者の募集状況」を記載する項目があります。

しかしながら、多くの臨床試験において、この情報が誤っていることが多いです。募集状況更新が非常に遅い製薬企業も存在しました。

やっとのことで治験情報にアクセスし、被験者募集状況が「参加者募集中」。勇気を出して主治医に相談し、問い合わせてもらう。その結果が募集していませんでした。

このような患者さんを数多く知っています。

今回、「原則として、最初の対象者が参加する前に治験情報を登録するとともに、患者の 募集状況が変化した場合については更新を行うこと。」となっており、『原則として』という文言が気になりますが、ある程度の効力を発することを願います。

なお、治験結果においても「原則として、治験の終了後1年以内に結果を登録すること」とされており、今までの治験結果のアクセスについてもある程度解決する可能性もあります。

医療機関情報について。最後の問題点は解決する?

最後に、医療機関情報の開示について言及します。

今回の通知の登録する情報という項目には「特に、国民による治験情報へのアクセスの確保のため、治験薬、対象疾患、主要 な適格基準・除外基準、治験の現状(治験実施中、終了等)、治験に関する問い合わせ先等については、適時登録・更新を行うこと。」と記載されていますが、医療機関の開示は求められておりません。

故に、医療機関情報は示されないことが多いと予想しています。

ただし、従来通り、明記されている問い合わせ先に連絡することにより、治験にアクセスすることは可能だと考えています。

いずれにせよ、今回の通知は治験を探すがん患者や家族に朗報であることは間違いありません。

(文 可知 健太)
今回、ニュース記事ではなくブログ記事として掲載させていただきました。私の講演動画ですが、以下を見て頂ければ、今までの問題点についての理解が深まるかもしれません。宜しければご参照ください。


がん医療共催セミナーin東京<今こそ、患者・医療者が共にルビコン川を渡る時>白衣を脱いだ医療者・パジャマを脱いだ患者が、がん医療を一緒に考えるセミナー2017より

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