神経膠腫(グリオーマ)の化学療法

グレードⅢやⅣの神経膠腫に対して化学療法を行いますが、神経膠腫で選択されることが多い抗がん剤は「アルキル化薬」です。アルキル化薬の特徴は細胞のDNAと結び付くことです。

DNAは4種類のアミノ酸が結合してつくられており、これを塩基といいます。DNAは2本の塩基が螺旋様に結びついています。人の細胞が細胞分裂をする時には、螺旋様に結びついたDNAがほどけるのです。

腫瘍細胞も同様で、腫瘍が増殖する時はDNAがほどけて細胞分裂をします。つまりDNAがほどけないと細胞分裂ができないのです。

アルキル化薬は腫瘍細胞の2本のDNAに結びつき、DNAがほどけないように働きかけるのです。よって腫瘍細胞は細胞分裂ができなくなるので、腫瘍細胞が増殖することを防ぐ効果を発揮します。

神経膠腫でよく用いられるアルキル化薬は「テモゾロミド」です。テモゾロミドはカプセルタイプの抗がん剤で骨髄抑制が少なく、内服して治療をします。投与量は体表面積に対して決められます。

膠芽腫に対してテモゾロミドを使う場合は、治療開始から放射線療法と併用して6週間内服を続けます。その後4週間休薬します。休薬後は5日間連続で内服して23日間休薬するというサイクルを6~24回続けます。膠芽腫に対する化学療法は半年から2年間必要になります。

化学療法の副作用

化学療法を行うと腫瘍細胞だけではなく、正常細胞も攻撃してしまいます。そのため、腫瘍に対する効果とともに副作用が出現します。

・骨髄抑制
化学療法によって骨髄の正常な造血細胞が攻撃され、白血球、赤血球、血小板が減少します。白血球が減少すると、体外から入ってきた細菌などに対して対処する力が少なくなるため身体が感染しやすい状態となります。

赤血球が減少すると貧血を引き起こし、組織に十分な酸素が供給されなくなります。血小板が減少すると、身体から出血した時に血が止まりにくくなります。

・脱毛
化学療法開始後2~3週間で頭髪、腋毛、陰毛、眉毛やまつ毛が脱毛します。特に頭髪は半分以上脱毛することがあり、外見が変化することから男女ともに悩みとなる副作用です。

頭髪が抗がん剤の影響を受けやすい理由は細胞分裂の速さにあります。体毛には毛周期といって、毛の成長と休止、脱毛を繰り返すサイクルがあります。毛の根元にある毛母細胞が細胞分裂をすることによって、5年かけて毛は成長します。

その後休止期といって毛の成長が止まる約3か月の期間を経て自然に脱毛します。抗がん剤によって成長期の毛母細胞の細胞分裂が抑制されるため、毛が成長する前に脱毛してしまうのです。脱毛は抗がん剤による一過性の副作用なので、治療が終了すればまた毛が生えるようになります。

・悪心・嘔吐
抗がん剤開始から24時間以内に発生する急性悪心・嘔吐、24時間以降に発生する遅発性悪心・嘔吐、抗がん剤開始前の不安などから発生する予期性悪心・嘔吐があります。いずれも延髄にある嘔吐中枢が刺激されておこります。

・全身倦怠感
全身倦怠感が発生するメカニズムは明らかになっていませんが、腫瘍そのものや腫瘍に付随して発生する症状、薬剤の副作用、精神面など様々な側面の要因が重なって生じると考えられています。

・アナフィラキシー
抗がん剤の投与から5~10分後に皮疹、発熱、呼吸困難などを引き起こします。これらの症状は身体が抗がん剤を異物として認識し身体が異物を排除しようとする反応です。

・腎機能の低下
腎臓は血液の老廃物を取り除き、尿を作る臓器です。抗がん剤によって腎臓が目詰まりを起こすなどして働きが低下し、尿量が減少したり、むくみが出現したりします。

・下痢や便秘
抗がん剤の影響によって腸管粘膜がダメージを受けたりすることなどで、腸の運動が活発になり過ぎて下痢を引き起こします。下痢がひどくなると身体の電解質のバランスがくずれたり、脱水を引き起こしたり栄養状態が悪くなることがあります。

便秘は抗がん剤の副作用である嘔吐を抑えるための制吐剤や電解質のバランスが崩れること、貧血治療の鉄剤や身体の活動低下によって引き起こされます。

・末梢神経障害
抗がん剤の影響で神経細胞を構成する軸索が障害されて発生すると考えられていますが、詳しい機序はまだ解明されていません。指先がしびれたり、温度感覚が障害されて熱いものがわからなくなったりします。一度症状が出ると症状が生涯にわたって持続する場合も多いため、注意が必要です。

・味覚障害
抗がん剤に影響によって口腔内粘膜へダメージや亜鉛の不足、味覚に関わる神経の障害で食事の味がわからなくなります。抗がん剤治療を受ける方の半数が経験する副作用です。


人気記事