オンコロLINEの友だちを対象に、がん患者さんやご家族の方などのご意見・お考えを共有したり、がんについて学べる1問クエスチョンのオンコロ・ワンクエスチョン!
その結果と解説をがん情報サイト「オンコロ」にて公開しています!
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質問
「がんの遺伝子検査について調べたことはありますか?」
結果・解説
今回のオンコロ・ワンクエスチョンでは、がんの遺伝子検査についてオンコロLINEのお友だちの方にお伺いしました。
ご回答者の中で半数近い方が、遺伝子検査を実施したことがあるとご回答されましたが、この結果は多いと思いますか?
思ったより多いと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、がん種によって遺伝子検査を受ける割合はかなり異なります。
なぜなら、がんの薬物療法の一つ「分子標的薬」を使用する場合、EGFRやALKといった特定の遺伝子に変異があるかを調べる検査も遺伝子検査と言われており、これらをコンパニオン診断検査といいます。
このような理由から、肺がんなどの遺伝子変異によって分子標的薬が使用できる可能性が高いがんは、遺伝子検査(コンパニオン診断)を行う割合が、他のがん種と比べて多くなります。
そのため、がん種によって検査の実施率はがん種によって異なることをご留意いただければ幸いです。
以上の内容を踏まえて、今回のオンコロ・ワンクエスチョンでは、遺伝子変異の種類に触れながら、コンパニオン診断とがん遺伝子パネル検査の2つの検査について解説させていただきます。
がん遺伝子検査とは?
コンパニオン診断
がんの遺伝子変異の一つ「ドライバー遺伝子変異」は、がん細胞内の伝達を活性化させることで、がん細胞が増殖を続けてしまいます。
分子標的薬には、その活性化したシグナルを阻害する働きがあります。
そのため、このような遺伝子変異があるかどうかを検査し、その遺伝子変異に効果のある分子標的薬が使用できるのか調べるのがコンパニオン診断になります。
※ドライバー遺伝子変異だけでなく生まれ持った遺伝子の個人差が「薬が効く」判断に使われることもありますので、BRCA1遺伝子やBRCA2遺伝子においてもコンパニオン診断で調べます。
がん遺伝子パネル検査
がん遺伝子パネル検査は一度に複数の遺伝子変異を調べる検査のことを指し、保険診療上は「標準治療がない、または局所進行や転移が認められ標準治療が終了となった固形がん患者さん(終了が見込まれる方を含む)」が対象となっています。
一度で複数の遺伝子が調べられるため、もし、遺伝子変異が認められた場合、治験に参加できる可能性、あるいは保険診療下で免疫チェックポイント阻害薬等の薬剤を使える可能性などがあります。
※コンパニオン診断とがん遺伝子パネル検査の詳細はこちらをご覧ください。
▼オンコロ・ワンクエスチョン:がん遺伝子パネル検査やコンパニオン診断薬をご存じですか?
がん遺伝子検査の課題
コンパニオン診断
コンパニオン診断では、患者さんのがんの変異が、一つの分子標的薬に効果のある一種類の遺伝子変異に該当するかを調べます。
しかし、患者さんのがんがどのタイプの遺伝子変異か検査をしてみないことには分からないため、多くの種類のコンパニオン診断を行うケースもあり得ます。
結果的に、もし既知のドライバー変異に該当せず、有効な分子標的薬が見つからなかった場合、検査を行った患者さんの経済的・精神的な負担は大きなものとなります。
がん遺伝子パネル検査
がん遺伝子パネル検査を行ってみても、遺伝子変異が見つからない、検査したがん組織の状態がよくなかった、結果の解釈が難しいなど、有用な情報が得られないこともあります。
もし検査の結果が得られたとしても、実際の治療に繋がるのは10%未満といわれています。
費用についても、がん遺伝子パネル検査は「標準治療がないまたは標準治療が終了となった」場合に保険診療で受けられますが、その他の場合には自費診療となります。
また、遺伝性のがんと関連のある遺伝子異常が見つかった際には、患者さんご自身だけではなくご家族などにも関わる問題となるため、必要に応じて、遺伝カウンセリングを受けたり、ご家族が遺伝子学的検査を行ったりなど追加の費用が発生することもあります。
今回のオンコロ・ワンクエスチョンのご回答の中で「医師に反対された」という回答も数件ありました。
がん遺伝子パネル検査の目的が治療法を探すためなので、標準治療をすべて終えた後の治療や、標準治療がない場合に使われます。
そのため、まだ標準治療がのこっているのであれば、自費診療となってしまい経済的な負担に、また、他のがん遺伝子が見つかることで精神的な負担になりかねないことから、医師に反対されることもあります。
最後に
遺伝子検査は、ご自身の治療に関係する大事なことです。
そして、患者さんご自身の状態をよく診ているのは医師ですので、小さな「なぜ?」でも、ぜひ医師の考えを聞き、ご自身の検査に対する希望や考えを共有してください。
また、医師と相談する以外の選択肢として、他の医療従事者に相談する、セカンドオピニオンを利用するなどもあります。
遺伝子検査を行うことのメリット・デメリットをしっかりご理解いただいたうえで、納得のいく治療選択をしていただければと思います。
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