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新たなCAR遺伝子治療薬TBI-2001、カナダで医師主導臨床試験を開始へ

4月3日、タカラバイオ株式会社は、次世代キメラ抗原受容体(CAR)遺伝子治療技術を用いたがん治療薬(開発コード:TBI-2001)の医師主導臨床試験をカナダで開始すると発表した。同剤はプリンセス・マーガレット・がんセンターのがん免疫研究部門長である平野直人氏らと共同で開発を行っている。

CAR遺伝子治療は、治療が困難な血液がん一部に対して高い治療効果を認め、2017年にアメリカで薬事承認されて以降、日本においてもCAR-T細胞などの製品が臨床で使用されている。しかしながら、CAR-T細胞が体内に長期生存しないことなどにより、疾患が再発するという課題が明らかになりつつある。

TBI-2001は、CD19を治療標的としており、免疫細胞であるT細胞の長期生存に重要なJAK/STATシグナル伝達系を活性化させる機能を新たに導入したCAR-T細胞。このCAR-T細胞は前臨床試験にて、T細胞の増殖と分化を促進、持続することにより、高い抗腫瘍効果を示すことが報告されている。

今回、CD19陽性B細胞リンパ腫、慢性リンパ性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)患者を対象にTBI-2001の有効性安全性を評価し、第2相試験推奨用量を決定するための臨床試験が開始される。目標症例数は19人。

(画像はリリースより)

今回のCAR遺伝子治療薬の今後の展望として、従来のCAR-T細胞療法と同様のCD19を標的としているため、比較検証することで、新たに着目したJAK/STATシグナル伝達系を活性化させる機能の有用性を評価することができると考えられ。JAK/STATの優位性が示ればCAR遺伝子治療の多様な事業展開が可能になると期待される。

タカラバイオ社はリリースにて「当社は、遺伝子治療技術の社会実装化を通じて人々の健康に貢献してまいります」と述べている。

キメラ抗原受容体(CAR)とは
がん抗原を特異的に認識する抗体ドメインとT細胞受容体や共刺激分子などの細胞内シグナル伝達ドメインを遺伝子工学的に結合させて作られた受容体。がん抗原を特異的に認識することができる。CAR遺伝子治療は急性リンパ芽球性白血病や一部の悪性リンパ腫など、治療が難しいといわれている疾患に高い治療効果をもたらす。多くのCAR遺伝子治療は、患者の血液からT細胞を取り出し、対外でCAR遺伝子を導入したCAR-T細胞を作製し再び患者に投与する。

参照元:
タカラバイオ株式会社 ニュースリリース

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