T細胞とはリンパ球のひとつで、免疫に大きく関係している細胞です。T細胞は骨髄内にある造血幹細胞が分裂を繰り返しながら成熟したものです。造血幹細胞は白血球や赤血球などすべての血液細胞の源であり、骨髄内で常に自己複製を繰り返し、枯渇することはないといわれています。造血幹細胞から分裂したT細胞は、骨髄を出てからまず胸腺と呼ばれるリンパ組織で成熟を進めます。胸腺のことを英語で thymus(サイモス)といい、T細胞という名前は胸腺(thymus)に由来しています。

T細胞にはいくつか種類があり、代表的なものとしてヘルパーT細胞と細胞傷害性T細胞があります。ヘルパーT細胞は細胞表面にCD4と呼ばれる抗原発現しており、CD4(シーディーフォー)とも呼ばれています。細胞傷害性T細胞は細胞表面にCD8と呼ばれる抗原が発現しており、CD8(シーデイーエイト)とも呼ばれています。ヘルパーT細胞は他の免疫系細胞に働きかけ、免疫応答を活性化する働きをしています。細胞傷害性T細胞はヘルパーT細胞からの刺激を受け、ウイルスに感染した細胞や腫瘍細胞を認識して攻撃する働きをします。以前はキラーT細胞とも呼ばれていましたが、近年ではCTLと呼ばれることが多いです。

また、ヘルパーT細胞や細胞傷害性T細胞が免疫応答を活性化するのに対し、免疫応答を抑制する制御性T細胞(T-reg:ティーレグ)と呼ばれるものがあります。制御性T細胞は免疫応答が活性化し過ぎるのを抑制することにより、生体の維持に重要な役割を担っていますが、がんが増殖する過程において、がん細胞は制御性T細胞の働きを巧みに利用し、がん細胞への免疫攻撃から逃れることにより、がんが増殖・進行していきます。

作成:株式会社インテリム

×