【急性リンパ性白血病 体験談】ドナーさんへの恩返し


  • [公開日]2020.05.29
  • [最終更新日]2021.01.04

急性リンパ性白血病のため造血幹細胞移植を受けた くもり あいこさん(仮名)のお話を、オンコロスタッフ大内が伺いました。
現在、くもりさんは神奈川骨髄移植を考える会に所属し、ドナー登録説明員として活動されていますが、今後は骨髄バンクのドナーコーディネーターとしても活動されるそうです。

微熱から始まった白血病

大内:診断名と診断された時期を教えてください。

くもり:2017年8月に急性リンパ性白血病と診断されました。

当時46歳でした。

急性骨髄性白血病と急性リンパ性白血病の混合型でしたが、リンパ性白血病の特徴が強くあらわれていたため、急性リンパ性白血病の診断名がつき、急性リンパ性白血病の治療を行いました。

大内:診断されるまでの経緯を教えてください。

くもり:2017年1月、夜間に時々微熱が出るようになりました。

はじめは、風邪だと思い解熱剤を飲んで様子を見ていましたが、次第に発熱の頻度が増え、4月には週5日程度熱が出ていました。

ちょうどその頃、私は内科のクリニックにパートで勤めていましたので、勤め先の医師に相談し、血液検査を受けることにしました。

膠原病、リウマチ、甲状腺機能異常の疑いで血液検査を行いましたが、それらの項目に異常はありません。

軽度貧血と、CRPという炎症反応を示す値が基準値より少し高いことがわかりました。

その後も発熱は続き、倦怠感を感じるようになったため、医師に相談し、大学病院の膠原病内科を受診しました。

結局、膠原病内科でCTやガリウムシンチ検査をしても原因は不明。

家族性地中海熱の疑いがあるとのことで、治療薬をもらいましたが、一向に改善されません。

さらに貧血が進み、白血球も減っていきました。

2017年7月下旬、好中球が異常に低く感染しやすい状態にあったため、入院することになりました。

特に治療はなく安静にしているだけ。

8日後には、好中球の値が戻り退院することが出来ました。

その後も貧血が続いていたため出血が疑われ、胃カメラや大腸カメラを行い出血を調べましたが、貧血と好中球減少の原因はわかりませんでした。

8月下旬の膠原病内科の診察時に、先生から血液内科を受診するように言われ、骨髄検査と輸血を受けることになりました。

骨髄検査の翌日、病院から電話がありました。

「検査結果が良くないのですぐ入院してください」。

その電話で、先生は病気のことを「悪いもの」と表現していましたが、途中で「白血病」という言葉をポロリとこぼしました。

それが私にとっての告知でした。

1500人のドナー候補

大内:治療について、教えて頂けますか。

くもり:「まずは寛解導入療法を行い、寛解状態に入ったら、地固め療法を繰り返しながら、造血幹細胞移植をする」。

これが私の急性リンパ性白血病に対する治療方針です。

大内:造血幹細胞移植はHLAという白血球の型が一致していないと出来まんせよね。

ドナーはすぐに見つかりましたか。

くもり:骨髄バンクに患者登録後、すぐに適合者が見つかりました。

私のHLA型は、非常に頻度の高いHLA型だったようで、1500人も適合者が見つかり、先生も驚かれていました。

普通は適合者がみつかっても数十人程度だそうです。

4名のドナーさんのコーディネートが進み、そのうちの1名から移植を受けることになりました。

移植を受けたのは、ちょうどドナー登録をして5か月後、入院期間は移植の前処置を含めて2か月ぐらいでした。

ドナーさんへの恩返し

大内:くもりさんは、ドナー登録説明員として活動されているのですね。

くもり:はい。

ドナー登録会場において、ドナー登録に関する説明をするボランティアを行っています。

大内:ドナー登録説明員として活動されたきっかけを教えて頂けますか。

くもり:移植後は、順調に回復しましたが、元気になればなるほど、ドナーさんへの感謝の気持ちが強くなりました。

ドナーさんに何か恩返しが出来ないかと思い、色々調べているうちに、神奈川骨髄移植を考える会のことを知りました。

神奈川骨髄移植を考える会に連絡し、ドナー登録会を見学しに行ったことが、私がドナー登録説明員として活動するきっかけでしたね。

大内:ドナー登録説明員として活動する前に、研修等はありましたか。

くもり:はい。

私は、2019年3月に骨髄ドナー登録説明員養成研修を受けました。

研修後は、日本骨髄バンクによる委嘱を受けて、2019年4月からドナー登録説明員として活動しています。

横浜駅前にある献血ルームや献血バスなどの登録会場で活動しています。

採用面接で病歴は話すべき!?

大内:治療後、お仕事はされていましたか。

くもり:ドナー登録説明員として活動を始めてからしばらくして、パートを始めました。

白血病になり、病気になる前と比べて体力が落ちていましたが、ドナー登録会場での業務は問題なく行えました。

朝から夕方まで、立ったまま業務をしても平気です。

体力に自信がついたので、パートをはじめようと思い、採用面接を受けることにしました。

病歴について、面接で話すべきかとても悩みましたが、インターネットで調べたところ、話す義務は無さそうです。

採用面接で病歴については伏せておきました。

無事に採用が決まり、週2日のペースで働いていたある日、パート先で私のボランティアの話になりました。

「どうしてボランティアしてるの?」。

そう質問され、病気のことを言わざるを得ない状況となったのです。

その後、異変が起きました。

週2日でシフトが入っていましたが、出勤予定日の前日になると「明日はお仕事ありません」とパート先の経営スタッフから言われるようになったのです。

気になったので、お店の前を通って中を覗いてみると、私以外のパートさんは普通に働いています。

その状況が一カ月続いたので、私から辞めることをパート先の経営スタッフに切り出しました。

すると、「面接のときに病気のこと話してくれませんでしたよね。困るんですよ。迷惑です。」と告げられました。

私は、一度もシフトに穴をあけていません。

まわりに迷惑もかけていません。

その言葉がとてもショックでした。

いつもお世話になっている看護師さんに相談したところ、「病気のことは言うべきだったね」と言われました。

確かに、病気について事前に話すべきだったかもしれませんが、私はシフトに穴をあけることなく、他のパートさんと同じように働いていたんですよ。

「病気に対する偏見」があることを、身をもって知ることとなりました。

大内:そんな辛い経験をされたのですね。

オンコロでも、がんサバイバーさんが働いていますが、健康な人と同じように働いていますよ。

うーん、悔しいですね。

くもり:悔しかったです。

好きな仕事だったので、続けられなかったことが残念です。

ドナーコーディネーターを目指して

大内:くもりさんは、日本骨髄バンクのドナーコーディネーターの研修を受けていらっしゃいますね。

コーディネーターのことを教えて頂けますか。

くもり:ドナーさんに恩返しをしたいと思い、色々調べていた時に、骨髄バンクがコーディネーターを募集していることを知りました。

2019年の夏の募集時に、関東地方でコーディネーターを募集していたため、思い切って応募することにしました。

大内:コーディネーターになるには、看護師や薬剤師といった医療系の資格が必要ですか。

くもり:とくに資格は必要ありません。

私の同期は8名いますが、40代の女性が多かったです。

元々ドナー登録をしていたり、頻繁に献血されているかたなど、みなさんボランティア精神が強かったです。

大内:コーディネーターは、移植を希望される患者さんと接するお仕事ですか?

くもり:患者さんではなく、ドナーさんの調整を行います。

適合通知が来て、提供を希望されるドナーさん一人につき、コーディネーターが一人ついて、日程調整、提供の説明、入院や退院に同行する業務を行います。

治療中の患者さんへのメッセージ

大内:治療中の患者さんに伝えたいことはありますか。

くもり:自分は絶対元気になれる、罹患前のような日常生活を取り戻せると、強く信じること大切だと思います。

抗がん剤治療を繰り返すと、今まで出来きたことが、体力的に出来なくなりますが、出来ないことを嘆くのではなく、出来ることに喜びを感じることが大事ですね。

小さな喜びが積み重なることで、大きな希望につながります。

「今できなくても一週間後には出来るかな」。

そういった小さな目標を少しずつクリアすることが、大きな目標につながり、さらにはモチベーションの維持につながります。

また、移植を受ける際は、病室から出られない日が一カ月以上続きますので、何か工夫をすると良いですね。

入院中は、外の音が聞こえず、風のない無機質な部屋にずっといたため、五感を失われるような感覚があります。

そこで、私は五感を刺激するようなことを行いました。

例えば、雨の降っているときは雨を感じられるような音楽を聴き、朝起きたときは朝を感じられる音楽を聴く。

また、肌触りのよいふわふわなタオルを使用したり、良い匂いのシャンプーを使うだけでも、リラックスすることが出来ました。

そして、これは看護師さんからアドバイスいただいたことですが、「やりたいことリスト」を作ってみると良いと思います。

元気になったらやりたいことを、いくつかリストアップして、それを目標に治療に臨みました。

抗がん剤治療は生きるための治療ですが、移植治療は生まれ変わるための治療だと私は思います。

移植を受ける方は、GVHDや合併症に対する恐怖があると思いますが、ドナーさんの細胞で元気に生まれ変われると信じて、移植を受けていただきたいと思います。

※造血幹細胞移植については、こちらで説明しています。

神奈川骨髄移植を考える会

神奈川骨髄移植を考える会は、骨髄バンクを支えるボランティア団体です。
造血細胞移植について国などが推進する骨髄バンクなどの普及促進を目的に、市民や患者やその家族らが集まっています。

神奈川骨髄移植を考える会
https://www.bmtkanagawa.com/about

日本骨髄バンク

日本骨髄バンクについては下記をご覧ください。
https://www.jmdp.or.jp/

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