アイドルだからこそ伝えられることがある!小児がん、AYA世代のがん、臨床試験と真摯に向き合う「オンコロ」ライブが大盛況で実行委員長も感涙


  • [公開日]2023.07.25
  • [最終更新日]2023.07.25

【寄稿】文・写真:乃木 章

日本人の生涯で、2人に1人がかかる身近な病気であるがんは、年齢に関わらず誰もがなりえます。国が検診を勧める肺がん、胃がん、乳がん、子宮頸(けい)がん、大腸がんの5つのがんの内、大腸がん、子宮がん、乳がんは早期発見できれば9割以上の人が治る可能性が高いのですが、小児がん、AYA世代(15歳から39歳)のがんに有効な予防、検診方法はなく、これらのがんについては、有効な治療法・治療薬の開発、臨床試験が重要とされています。

がんの啓発のためには、一人でも多くの方がネガティブなイメージと向き合う必要があります。がん情報サイト「オンコロ」が2016年から開催しているのが、女性シンガー、アニソン歌手、アイドルを通したがん啓発イベントです。

6月16日、がん情報サイト「オンコロ」×豊島区×TIGET共催 Remember Girl’s Power !! (オンコロライブ)Spin Out Program『アイドルと学ぶ「小児がん・AYA世代のがん、臨床試験、がん検診」のこと トーク&ライブ Vol.2』が開催され、前回の来場者を上回る盛り上がりを見せました。

同イベントの参加費は無料。司会はフリーアナウンサー・悪性リンパ腫体験者の笠井信輔さんが務め、アイドルグループ「東京CuteCute」、「虹のコンキスタドール予科生」、「Appare!」によるステージパフォーマンス、そして、ゲストに乳がん体験者・桜林 芙美さん、肺がん体験者・清水 公一さん、東北大学・山口 拓洋教授、豊島区役所・池袋保健所から佐藤 信博さんを招いての「小児がん・AYA世代のがん、臨床試験、がん検診」啓発を目的としたトークライブが公開されました。

■東京CuteCute×桜林芙美「小児がん・AYA世代のがんを知ろう」

東京でイチバン“かわいい”アイドルを目指す「東京CuteCute」は、西 萌葉さん、上水口 姫香さん、諸橋 姫向さん、奈良 怜那さん、天羽 リリさん、越智 あいりさん、小見山 沙空さんの7名で活動中。2015年、「東京オリンピックの開催までに東京で一番可愛いアイドルを目指す」 というコンセプトでグループ結成。その後、2019年にChu-Zと合体するも 2022年7月 新たなメンバーで再始動しました。
キュートに特化したパフォーマンスで、「七色フレーズ」、「Sunshine」、「幸せを運ぶうさぎ」、「明日咲く花」、「彩りチェリッシュ」の5曲を歌って魅せました。

同グループが対談したのは、35歳の時に乳がんを経験しているAYA世代の桜林 芙美さん。当時3人の小さな子供がいる中で、子育てはもちろん、再就職しようとしていた時期というのもあって、「今後どうしよう!?」と思い詰めたそうです。しかし、手術、抗がん剤治療、放射線治療を受けて、現在は症状が落ち着いて経過観察中です。

西 萌葉さんからの「お子さんがいらっしゃる中で癌の宣告を受けた時の気持ちは?」と聞かれ、「意外にホッとした」と回答。これには司会の笠井さんも、「私もそうでした。体調不良の原因が、(色んな検査を受けた結果)がんだったのか!?と分かったことで、じゃあ、がんに向かって行くしかないんだとホッとした。もちろん、がんだったのかという絶望もあったので、なんとも言えない不思議で複雑な気持ちでした」と共感を示しました。

越智 あいりさんに「日にちを重ねるごとに不安な気持ち、苦しい気持ちが増してくる中で、どうやってメンタルを保っていたのでしょうか?」と聞かれ、桜林さんは「メンタルを保てなかった」と答えました。それでも、自分が好きなことをやることで気持ちを立て直したそうで、とくにディズニーランドが大好きだったため、「(そこに行くと)良い治療を受けたかのように感じられたので、ディズニーに行けるように頑張ろう」と思えたそうです。

抗がん剤の副作用では、痺れや起き上がれないほどの倦怠感、髪の毛が抜けるなどで苦しんだそうですが、手術以外では入院をせずに治療が受けられた桜林さん。一見すると、通院で良かったように見えますが、ベッドで寝ていられる入院よりも、家族のサポートがあっても、子育てや家事などをする必要がある通院が大変な側面がありました。

奈良 怜那さんは、「以前、私の友達ががんになった時、辛い治療を受けているのを見ていて、でも心配するのもあれかな(心配する言葉ばかりをかけても)と思って、痩せたね!よかったじゃん!と、おちゃらけることしかできなかった。がん患者の周りの人はどう接していけば良かったのか、今でも疑問に思っています」と過去を振り返りました。

しかし、これに対して桜林さんは「そうやって、いつもの友達のまま、家族のままで接してくれるのが一番嬉しい」と回答。司会の笠井さんも、「がん治療を受けながら働く人が直面するアンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)という、がんで大変だからこの仕事はやらなくていいよと言われる優しさからくる排除の問題がある」ことを挙げました。だからこそ、普通に接してほしいと望むがん患者の気持ちを鑑みれば、奈良怜那さんの当時の対応は良かったのではないかと話しました。

そして、治療を頑張っているがん患者に対して、「頑張ってね!」ではなく、「頑張っていますね!」と現在進行形で頑張っている姿勢を認める意味での声かけが必要だと呼びかけました。

■虹のコンキスタドール予科生×清水 公一「臨床試験について学ぼう」

自分たちが思う「かわいい!」や「好き!」を追い求めるインドア系・正統派アイドルグループ「虹のコンキスタドール予科生(通称“虹コン”の予科生)」は、的場 華鈴さん、石浜 芽衣さん、原田 珠々華さん、尾林 結花さん、川端 優さん、栗原 舞優さん、澤村 光彩さんの7人で活動中。ステージでは「やるっきゃない!2018」、「キミは無邪気な夏の女王」、「キミは夏のレインボー!」、「ずっとサマーで恋してる」、「響け!ファンファーレ」の5曲を披露しました。

2022年6月より復活し、 正統派アイドルになるため、日々奮闘中の同グループが対談したのは、肺がん体験者の清水 公一さん。現在46歳の清水さんが肺がんに罹患したのは35歳の時で、脳にも転移してしまい、効果的な治療法がないために余命3ヶ月と宣告されました。しかし、ノーベル医学生理学賞を受賞(2018)した本庶 佑・京都大特別教授が発見したがん免疫治療薬「オプジーボ」が認可され、それによって九死に一生を得ました。

臨床試験とは、新しい薬や治療法などの効果や安全性について確認するために行われるもので、基本的には10〜20年かけて厚生労働省に認可され、保健治療が適用されるものです。新薬だったオプジーボも多くの患者の協力があって臨床試験を繰り返したものです。

栗原 舞優さんから、「新しい薬を使うのに不安はなかったですか?」というストレートな問いかけには、清水さんがオプジーボを使ったのは、肺がん治療に保険適用されてから1年が経った頃で、「臨床試験で安全性が確認されていた」認識があったと回答。治験に協力してくれた患者さんたちやその他の人たちへの感謝も示しました。

続く尾林 結花さんの、「(医者に余命を宣告された)厳しい状況でも、新薬の治療を受けようと前向きになれたのはなぜですか?」という質問には、「それを使わなければ、おそらく長く生きられないだろうと藁にもすがる思いだった」と包み隠しませんでした。当時は結婚して小さな子供がおり、病気のことを知らないで向けてくれる無垢な笑顔にすごく救われたと語る一方、的場 華鈴さんに「私たちのようなアイドルががん患者の方にできること、期待していることは?」と聞かれると、「今日みたいな元気なステージを見せてもらえたら励まされると思うんで・・・」と答えたところで、笠井さんに「清水さん、正直に言おうよ」と肩を叩かれました。

実は清水さんは「乃木坂46」の大ファン。「乃木坂46に救われた」と力強く語る清水さんは、抗がん剤治療は開始してから1〜2週目が副作用で一番辛く、3週目は比較的楽になり、4週目に新たに抗がん剤治療をやるというサイクルを3年くらい続けたそうです。「乃木坂46のライブに行くとものすごく励まされるんで、握手会(ライブの後に行われる特典会)に合わせて抗がん剤治療を行なった」ことで乗り越えていったと明かすと、会場からはわれんばかりの盛大な拍手が送られました。

これには、「オンコロ」コンテンツマネージャーの柳澤 昭浩さんも「清水さんはこの話を色んな場所でしていますが、これだけ大きな拍手をもらったのは今日が初めてです。これぞオンコロライブの意義ですし、続けてきて良かった」と感動を露わにしました。

■Appare!×山口 拓洋教授(東北大学)&佐藤 信博(豊島区役所・池袋保健所)

トリを務めた「Appare!」は、朝比奈 れいさん、橋本 あみさん、永堀 ゆめさん、藤宮 めいさん、七瀬れあさん、藍井 すずさん、工藤 のかさんの7人で活動。とにかく楽しいライブパフォーマンスに定評があり、新曲「ぱ ぴ ぷ ぺ POP!」がTikTokでバズり、YouTubeは190万回再生を突破し、「スッキリ」「スクール革命」などでも特集され、今最も勢いのあるライブアイドルとして注目されています。ステージでは、「パーティーモンスター」、「ぱ ぴ ぷ ぺ POP!」、「イロハニホヘトチリマセン」、「私たちは輝いているんだ」、「フレ!フレ!ヒーロー」の5曲を披露しました。

豊島区ではがん検診を無料で受けられるチケットを対象者に送っています。がん検診は体の調子が悪いから受けるではなく、がんの早期発見のためのものであり、ステージ1、2の人は自覚症状がないからこそ、早期発見で治る可能性が高い内に発見することが必要になります。また、一度受ければ安心ではなく、毎年受診し、要精密検査となった場合は必ず精密検査を受けることが大切です。佐藤さんは「要精密検査となっても、がんと診断されるのは全体で約4%くらいなので恐れることなく受けて頂きたいです」と呼びかけました。

アイドルファンとしても知られる、東北大学大学院 医学系研究科・医学部 医学統計学分野の山口 拓洋教授がパフォーマンスを「アッパレ!」と絶賛した同グループの永堀 ゆめさんから、「がん検診はどれくらいの頻度で受けるものなんですか?」と質問が上がりました。山口教授は「肺がんや大腸がんは1年おき、子宮頸がんや乳がんは2年おきに受けてくださいと推奨されています」と回答しました。

藍井 すずさんからは、「がん検診を受けたことがないのですが、どこに行けば受けられますか?」という若い世代ならではの質問が上がりました。基本的には、豊島区に限らず、がん検診を受けることが推奨される年齢になったら受診券が送られてきますし、体調面で心配であれば住んでいる区や市のHPを見て検査を受けられる施設を確認するのが良いとされています。

一方で、今回のアイドルたちのように若い女性の方のがん検診に関しては、佐藤さんも「肺がんとかにもなりにくい年齢なので、むやみやたらに受けることを国は推奨していません」とのこと。ただし、「子宮頸がんは20歳以上から受けてほしい」そうです。

前回に続いての「オンコロ」ライブは、ステージパフォーマンスの満足度、10代〜20代の若いアイドルたちによる発信力、実際にがんを体験したリアルな声が聞けるという総合的に見ても、エンタメと啓発を融合させることに成功していました。南大塚でのライブを得て、次回は9月に池袋サンシャインシティでのライブを予定しています。

「Remember Girl’s Power !! 2023」(通称:オンコロライブ)開催概要

2023年も9月2日(土)・3日(日)・9日(土)・10日(日)4日間にわたり、「Remember Girl’s Power !! 2023」(通称:オンコロライブ)を開催します。開催情報、優先エリアチケット情報等は、ホームページをご覧ください。

■ホームページ:https://oncolo.jp/rgp2023/
■公演名:オンコロ×豊島区presents「Remember Girl’s Power !! 2023」(通称:オンコロライブ)
■開催日時:
・Day1:2023年9月2日(土)池袋西口公園野外劇場グローバルリング シアター
・Day2:2023年9月3日(日)池袋西口公園野外劇場グローバルリング シアター
・Day3:2023年9月9日(土)サンシャインシティの噴水広場
・Day4:2023年9月10日(日)サンシャインシティの噴水広場
■場所・会場:
・Day1 & 2:池袋西口公園野外劇場グローバルリング シアター(171-0021東京都豊島区西池袋1-8-26)
https://toshima-theatre.jp/
・Day3 & 4:サンシャインシティ噴水広場(〒170-8630 東京都豊島区東池袋三丁目1番)
https://sunshinecity.jp/facility/fountain.html
■主催:がん情報サイト「オンコロ」
■共催:豊島区
■アカデミア共催:東北大学大学院医学系研究科医学統計学分野・認定特定非営利活動法人 西日本がん研究機構・学校法人 山口学園
■開催協力:3HグループRemember Girl’s Power!!2021実行委員会・生活向上WEB・株式会社ワロップ放送局・株式会社ネオ・コミュニケーションズ・株式会社grabss(TIGET)・株式会社サンシャインシティ
■企画・制作:オンコロ×豊島区presents「Remember Girl’s Power !! 2023」実行委員会

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