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25歳で白血病に罹患した俳優と友人であるプロデューサーが映画「みんな生きている ~二つ目の誕生日~」に込めた想い

[公開日] 2023.07.21[最終更新日] 2023.07.21

目次

白血病の青年と骨髄提供を依頼された女性、出会うことのない患者とドナー二人を支える人たちの葛藤を描く医療エンターテイメント映画「みんな生きている ~二つ目の誕生日~」が2023年2月4日(土)より新宿K’s cinemaほか全国順次公開中です。また、7月5日(水)からはデジタル・レンタル配信スタートしています。 今回は、同作の企画・原案・主演を務め、自身も25歳のときに白血病に罹患した経験を持つ俳優の樋口 大悟さんと、友人でありプロデューサーの榎本 桜さんに、映画についてや世の中に伝えたいメッセージなどをお伺いしました。 インタビュイー 企画・原案・主演:樋口 大悟さん プロデューサー:榎本 桜さん インタビュアー 柳澤 昭浩 ライター 西塚 真帆 がんや骨髄移植をテーマにした映画は多く、映画の脚本や演出は同じようなものも多く、実はそれほど大きな期待をもって試写したわけではありませんでした。しかし、企画・原案・主演ががん体験者本人で、実際に骨髄移植を受けた本人であるということで、これだけ伝わるものが違うのかと感じた映画でした。 今回、企画・原案・主演:樋口 大悟さん本人と、映画完成の実現に協力した友人でもあるプロデューサー:榎本 桜さんに取材の機会を得ました。

25歳で白血病に罹患し骨髄移植で命を救われる

柳澤:まずは樋口さんにお伺いします。今回、企画・原案・主演を務めていますが、この映画を作るきっかけを教えていただけますか? 俳優:樋口 大悟さん 樋口さん:僕は、25歳の時に白血病になりました。その後、27歳で再発をして、30歳で骨髄移植をしました。27歳で再発してから骨髄移植をするまでの3年間は、普通に日常生活は送れましたが、骨髄移植を待っている期間は精神的にとても辛かったです。すごく悩んで、たくさん泣きました。 AYA世代で白血病になり、若くして病気を患う苦しさを経験したので、若い世代で、病気で苦しい思いをしている人に向けて、希望を与えたいという思いがありました。あとは、僕は骨髄移植をすることによって命が助かったので、名前はわかりませんが、骨髄を提供してくださったドナーさんへの感謝の思いがずっと自分の中にあります。 この映画を通してドナーさんへ感謝を伝えたい、そして、骨髄移植を多くの方に知ってもらいたいと思い、映画を作ろうと思いました。 柳澤:骨髄移植について知ってもらいたかった、そしてもう一つがドナーさんには会えないのでこの映画を通じて感謝を伝えたかったということですね。樋口さんが企画・原案をして、榎本さんがプロデューサーといった形で関わられていますが、その経緯を教えてください。 (左)俳優:樋口 大悟さん (右)プロデューサー:榎本 桜さん 榎本さん:僕と樋口は、友人であり役者仲間です。樋口に頼まれて、今回プロデューサーとして関わることになりました。企画・原案・主演をやると聞いたとき、20代、30代の一番活発に社会に出て、やりたいことを叶えたい時代を闘病に費やした彼の強い意志を感じました。彼を応援したい気持ちが大きかったのがひとつですね。

同じ思いを抱えている人たちからの支援

柳澤:映画製作は大変だと思いますが、まず1番大変なのは製作費ですよね。製作費の問題は、どうやって解決したのですか? 樋口さん:監督が脚本を書いてくださったので、まずその脚本を持って、監督と僕で企業さんを回って、協賛を募れないかとお願いをしました。しかし、コロナ禍になり、話がうまく進んでいたことも白紙になってしまいました。 僕の中では、今しかできないと思っていたので、どうするか悩んだ末、クラウドファンディングに挑戦してみることになりました。僕と同じような状況の人たちや、同じ思いを抱えている人が世の中にはたくさんいると思っていました。クラウドファンディングに実際挑戦してみたら、思った以上に賛同してくださる方が多くて、製作費の一部は集まることができたので、無事クランクインすることができました。 柳澤:クランクイン後、プロデューサーとして、映画の完遂を目指すために様々な工夫や努力があったと思いますが、不安はありませんでしたか? 榎本さん:不安は全くなかったです。監督は、テレビドラマ「ナースのお仕事」で監督・脚本を務めていた両沢和幸さんですし、信頼できるメンバーが集まっていたので、不安になるようなことはひとつもありませんでした。 樋口さん:経験豊かな方たちばかりだったので、心配はありませんでした。みなさんと組ませてもらったことが、とても光栄でした。

人生に影響を与えた作品

柳澤:コロナ禍で、映画だけではなく、様々な領域で、苦しい状況が続いたと思います。そのような中でクランクインできたのは、樋口さんのご経験と思い、そして榎本さんや監督、周りの方々の協力があったからですね。樋口さんは、主演にあたって、どういう気持ちで取り組まれたのですか? 樋口さん:作る側と俳優と分けて考えていました。作る側としては、あまり自分の思いが出すぎると、エンターテイメントさに欠けてしまうと思っていたので。脚本の段階で、監督に「エンターテイメントにしてほしい」とお願いをしていました。とにかくたくさんの人に知ってほしいと思っていたので、最低限の情報はありつつ、分かりやすく、見やすいように作ることを心掛けました。 柳澤:自分の体験とは切り分けて、演じて表現したと。 樋口さん:最初は、自分が主演をやるか迷いました。僕の若い頃の話ですので、年齢的なものを考えたりして、迷いましたね。あとは体験者である僕が演じることによって、ドキュメンタリーと思われてしまうのではないかという不安がありましたが、監督が「お前がやらないと書かないよ」って言ってくださったので、主演をやることにしました。 柳澤:樋口さんは体験者であり役者でもあるから、どういう風に表現したいかイメージしやすかったとは思いますが、榎本さんはプロデューサーの立場として、白血病と骨髄移植という初めてのテーマだったと思いますが、何か新たに感じられたことはありますか。 榎本さん:自分の生活にこんなにも影響を与える映画はなかなかないなと思いました。それは、演じている最中も演じた後も。第一に、白血病について調べるようになり、知識も広がりました。上映が始まる前に、ドナー登録もしました。それは役作りではなく、この映画と出会い、自分がそうしたいという気持ちになったからです。 柳澤:映画を作っている中で、淡々と映画製作を進めていくのではなく、新たに与えられるものがあったということですよね。 榎本さん:友人関係だったときには、本人があまり病気については言っていなかったので、ここまで病気のことは知りませんでした。この映画は一生に一回しか作れない映画だし、一生に一回しかできない役だと思います。一生に一回しかない友人役として、映画に出演することができてすごくありがたいですし、自分の生き方に影響を与える作品になったと思います。 柳澤:エンターテイメントは、人の人生に影響を与えるものもあるけれど、多くは人々の中で消費されていくものであったりもしますが、この映画は人生にも影響を与えるし、新たな気づきもあったということですね。

周りの人たちのおかげで乗り越えられた闘病生活

柳澤:「弱いところを見せたくない」というフレーズが、この映画のキーワードだと思いますが、「弱いところを見せたくない」に込められている感情について教えてください。 樋口さん:映画上での役は、そのままの僕ではありませんが、僕も最初は弱いところは見せたくありませんでした。でも、一人で抱えきれないところまで来てしまったので、最後は友人に素直に話しました。ただ、とにかく同情されるのが嫌でした。同情される=社会から切り離されることだと思っていて、かわいそうだと思われたくなかったし、社会と切り離されることも嫌でした。でも、周りのみんなが気を遣ってくれて、病室でも普段と変わらない会話をしていました。 柳澤:とくに男性は「弱いところを見せたくない」に共感すると思います。僕もすごく共感しました。 樋口さん:あとは「認めたくない」っていうのもあるかもしれないですね。 柳澤:「なんて声かけていいかわからない」という言葉は、どのように捉えましたか? 榎本さん:僕が20代後半の時に、祖母ががんに罹患しましたが、その時は逃げたんですよ。逃げてしまったので、「どのように声をかけたらいいかわからない」という経験をしていないからこそ、この役ができたのかなとも思います。 映画の中で、歌をプレゼントするシーンがありますが、この役を演じている鈴木周哉は樋口の実際の友人です。彼は、樋口が闘病しているとき、どのように声をかけたらいいか悩んだ結果、樋口がYahoo!ブログにあげていた歌詞を歌にしてプレゼントしました。 それをそのまま映画に反映しました。自分に何ができるかを考えること自体はいいことだと思います。ただ、実際に答えは出ませんが。自分だったらこう声かけるかなというのを考えて、演じさせてもらいました。 樋口さん:僕は、薬や骨髄提供者に命を助けてもらいましたが、親や友人にも助けてもらったなって感じます。その人たちがいなかったら、終わりの見えない闘病生活に心が潰れてしまっていたのではないかと思います。みんなに助けてもらって、本当に感謝しています。

骨髄移植シーンの重要性

柳澤:映画の中で、ボランティアや骨髄バンクの社会活動の重要性など、すごく取り上げておられましたね。人の大切さの一歩先にあるものにすごく感謝されていると。 樋口さん:そうですね。この映画は骨髄移植という善意に助けてもらった命というテーマがありますけど、骨髄移植がなければ僕はこうして立っていられなかったと思います。小さなことでも、みんなで支え合いながら生きているということがこの映画の大きなテーマとなっています。 柳澤:時系列で描かれていてすごくわかりやすかったです。実際に骨髄移植をするシーンを描いている点も映画としてはよかったと思います。 樋口さん:骨髄移植のシーンは、撮影も大変ですし、省く場合が多いですよね。監督は、ナースのお仕事で医療現場を毎週撮影していたので、医療現場での撮影の大変さなども分かってくださっていました。骨髄移植のシーンを描いてほしいということは最初からお伝えしていました。 骨髄バンクに登録している方で、骨髄移植がどのようなものか分からない人もいると思います。そのような方にも、骨髄バンクに登録していない方にも、骨髄移植がどのようなものかを知ってもらい、骨髄移植で一つでも多くの命が助かるんだということを知ってもらいたいと思い、挑戦ではありましたが、描かせていただきました。 榎本さん:骨髄移植のシーンを撮らなかったら、この映画の意味はないのではないかと思います。また、説明員の方、コーディネーターの方など、本来では映画の中に描かれないような立場の方たちも描くことにより、そのような方たちがいてこそ、一つの命が助かるんだっていうことが伝わってほしいという気持ちがありました。 一つの命が助かるときに、どれだけの人がいて、どれだけのことをしたのかっていうことを、情報提示ではなく、エンターテイメントとして表現していきたいと思っていました。 樋口さん:医療従事者の方たちへの感謝も、もちろんあります。そういう方たちが、一つの命を繋いでいったという部分もお客さんに伝わってほしいと思っています。 柳澤:白血病や骨髄移植をテーマにした映画はありますけど、この映画のように時系列で描いていて、骨髄移植のシーンや抗がん剤のシーンなどが描かれているのは、あまりなかったと思います。大変素晴らしい映画だと感じました。

オンコロ読者へメッセージ

柳澤:榎本さんはプロデューサーとして、この映画にどういう風になってほしいですか?また、見てくださる方にメッセージをお願いします。 榎本さん:映画を上映していく中で、今ドナー候補の手紙が届いているというお客さんに出会いました。その方も、最初はドナー提供するか悩んでいたみたいですが、この映画を見て、提供しようという気持ちになったと仰ってくださいました。 この映画を若い世代の子たちに見ていただいて、骨髄移植や骨髄バンクについて知ってもらって、ドナー登録をしようと思う人が増えて、一つでも多くの命が助かる可能性が増えたらいいなと思っています。7月から配信も始まるので、より多くの方に見ていただき、骨髄移植や骨髄バンクについて知ってもらいたいのが一つの大きな目標です。 もう一つは、今映画館に足を運べない状況にいる、ご家族の方や友人、看病をしている方など、そういった方にも気軽に見てもらえるような環境を整えていきたいと考えています。今の樋口を見てもらって、前向きな気持ちになってもらえたら嬉しいです。 柳澤:この映画を見て救われる人がいて、また命が助かる、といった循環になるといいですね。樋口さん、見てくださる方へメッセージをお願いします。 樋口さん:まず一つは、現在、舞台挨拶で全国を回っているのですが、これから骨髄移植を受ける方や、息子さんを白血病で亡くされたご家族とかが見に来てくださっています。息子さんを亡くされた直後は、なかなか前を向けなかったけど、この映画を見て、やっと前に進めましたと言ってくださいました。 また、「ドナー登録に明日行ってきます」と言ってくださる方が多くいて、この映画を作って本当によかったと思いました。新たにドナー登録をする人が増えることで、白血球の型が合う人が一人いるかもしれない、そうしたらその誰かを救うことができる、そういった風に輪が広がっていってほしいなと思っています。僕みたいに、一つでも多くの命に繋がってほしい。引き続きたくさんの方に見てもらって、勇気や希望につながればいいなと思います。 (左)プロデューサー:榎本 桜さん (右)樋口:大悟さん 映画「みんな生きている ~二つ目の誕生日~」 25歳のときに白血病に罹患した俳優の樋口大悟が、一つでも多くの命を助けることに繋がってほしいという思いで企画・原案・主演を務めた白血病患者骨髄提供を依頼されたドナー、そして二人を支える人たちの葛藤を描く医療エンターテイメント映画。骨髄移植とドナー登録について理解を深めて欲しいと、この映画を企画・原案。 空手の講師をしながら競技者としても活躍しているが、ある日、白血病と診断される桧山大介役を樋口大悟、造血細胞を提供してくれるドナー役に松本若菜が出演。脚本・監督は、両沢和幸(ナースのお仕事)、プロデューサーに川田亮、榎本桜。 2023年2月4日(土)より新宿K’s cinemaほか全国順次公開中 公式サイト:https://www.min-iki.com/ 公式Twitter:https://twitter.com/eiga_miniki 2023年7月5日(水)デジタル・レンタル配信スタートしています。 Amazonビデオ・iTunes・Google Play・YouTube・huluストア・FOD・クランクイン!ビデオ・LEMINO・RakutenTV・U-NEXT・J:COMオンデマンド・TELASA・ビデオマーケット・music.jp・カンテレドーガなど 樋口本人による講演会付きの上映会などもおこなっています。 こちらも公式HPよりお問い合わせください。 ※配信日時は予告なく変更になる場合がございます。予めご了承ください。 <インタビュー後記> 白血病を体験した青年と、それを支える友人、二人ともさわやかな男でした。こういう二人だからこんな映画が作られたと思いました。 テーマは、白血病、骨髄移植ですが、ある青年の体験で、世の中は利他の精神でなりたっていることがたくさんあることも気づかせて貰える映画でした。
特集 白血病

コンテンツマネージャー 柳澤 昭浩

18年間の外資系製薬会社勤務後、2007年1月より10期10年間に渡りNPO法人キャンサーネットジャパン理事(事務局長は8期)を務める。先入観にとらわれない科学的根拠に基づくがん医療、がん疾患啓発に取り組む。2015年4月からは、がん医療に関わる様々なステークホルダーと連携するため、がん情報サイト「オンコロ」のコンテンツ・マネージャー、日本肺癌学会チーフ・マーケティング・アドバイザー、3Hクリニカルトライアル株式会社、3Hメディソリューション株式会社のマーケティングアドバイザー、メディカル・モバイル・コミュニケーションズ合同会社の代表社員などを務める。

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