AYA(Adolescent and Young Adult)世代の学術活動、教育活動、社会啓発及び人材育成を行う、一般社団法人 AYAがんの医療と支援のあり方研究会(以下:AYA研)はAYA世代のがん患者さんが必要な時に必要な情報を取得することを目的として、LINE公式アカウントの運用を11月1日に開始した。
■がんと共に生きる若者を支える LINE公式アカウント運用開始
https://aya-ken.jp/archives/8171
LINE公式アカウントでは患者さんに知って欲しい情報が進学、就労、医療費、妊孕性、アピアランスなどのカテゴリに分けられ、まとめられている。
この企画の発起人は、東京都立小児総合医療センターの医師で、自身も悪性リンパ腫の体験者でもある、松井基浩先生。LINE公式アカウント開設の経緯や、今後の展開について伺った。
情報提供しても毎回断られると、徐々に勧めにくくなる
鳥井:松井先生は、AYA研では、どんな役割を担っているのですか?
松井先生:2018年の研究会発足当初から関わっており、現在は社会連携委員として、AYA研やAYA世代のことを幅広く知ってもらえるように、患者さんや患者会、各病院や学会とのパイプ役を担っています。
鳥井:LINE公式アカウントの企画が発足したきっかけを教えてください。
松井先生:普段小児血液腫瘍医として診療に携わる中で、以前から患者さんに対して最適な情報提供ツールを探していました。
というのもAYA世代の特徴で患者さんが知りたい情報は多岐にわたり、知りたいと思う時期も人それぞれ異なるから。例えば治療が落ち着いてきた患者さんに患者会の情報を勧めると、「不要です」と言われたり、告知後の間もない時期だと「治療のことだけで十分です」と言われたり、一方で罹患直後に患者会に参加して、治療に臨むアドバイスをもらったりする方もいます。
医療者側からすると、情報を提供しても毎回断られてしまうと、だんだん勧めにくくなります。
またちょうどその頃第3期がん対策推進基本計画の重点施策として「AYA世代」が加わり、テレビや新聞をはじめ、多くのメディアで「AYA世代」が取り上げられ、インターネット上でAYA世代向けの情報が増えていきました。しかしながら素晴らしい情報があるにも関わらず、バラバラに点在している状態だった。
そこで情報提供する医療者側も受け取る患者さん側も、双方の問題はLINE公式アカウントなら解決できるのではとなり、今回の企画に至りました。
ネット上にあるAYA世代向けの情報を調べ尽くした
鳥井:どのように使用するのですか?
松井先生:下記のQRコードを読み取り(またはID「@ayaken」を検索する)友達追加をする。するとAYA研のLINE公式アカウントより初回メッセージが配信されますので、その内容に沿って欲しい情報について入力するとおすすめのリンク先が配信されます。
※LINE公式アカウントQRコード
※「患者会」と入力すると、患者会情報が配信されます。
鳥井:LINE公式アカウントを活用する決め手はなんですか?
松井先生:欲しい情報をユーザー主導で入手できる点です。よって自分が知りたくない情報は見ずに済みますし、配信される情報は我々医療者のチェックが入っているため、正しいものを見ることが出来ます。
鳥井:開設までに苦労した点があれば教えてください。
松井先生:インターネットにあるAYA世代向けの情報を調べるのが大変でしたね。本当に正しい情報が掲載されているのか、ホームページを1つずつ確認して、その後掲載可能か運営元への確認も行いました。
鳥井:掲載する情報にはどんな基準を設けて精査したのですか?
松井先生:「進学」や「就労」や「妊孕性」など、患者さんが知りたい情報の項目を挙げました。それに関して「患者さん向けにやさしく書いてあるか」や「スマホで見やすいか」などの基準を満たしている情報を掲載しました。
※情報精査の際に挙げられた、AYA世代の課題一覧
今回のLINE公式アカウント開設にあたり、AYA世代向けの情報を洗い出したおかげで、足りていない情報が明確になりました。恋愛、結婚や在宅医療や緩和ケアなどが不足していました。
鳥井:直近で増やしていく予定はありますか?
松井先生:「恋愛」、「結婚」は難しいテーマで情報もほとんどありません。これについては正解があるわけではないので、体験者個別の実話を漫画化しようと考えています。それはハッピーエンドでないことも含めてです。「がん患者のリアル」を追求できたらと思っています。
医療従事者や病院と連携して広報していく
鳥井:これからどのように展開していくのでしょうか?
松井先生:大きくは2つあります。1つ目は現時点のAYA世代の情報を載せているだけなので、今後はもっと情報が増えていくと思います。その情報も掲載していくことでより充実させていきます。
2つ目はLINE公式アカウント内に「要望」の欄があります。そこにユーザーの方の声を集め、改善を繰り返していきます。
開設しましたが、まだまだ発展途上だと思ってください。
鳥井:広報はどのようにするのですか?
松井先生:A4のチラシを作成したので、それを全国のがん拠点病院に発送します。また名刺サイズのカードも作成したので、告知後に主治医から患者さんに渡してもらえるようお願いをしているところです。治療中の患者さんは病院にいるので、地道ですけど協力してもらえる医療従事者や病院と連携していきます。
鳥井:最後に今後の展望を教えてください。
松井先生:患者さんの要望を反映し、また掲載する情報も増やしていき、より充実した情報提供ツールになることを目指しています。また使ってもらうことが大切なので、患者さんへの認知もそうですが、医療従事者の方々にも知ってもらえるよう広報していきます。